総評
- 全体的に平易だが、求められる得点率もそこそこ高い
- やや物理有利傾向である
- 地域枠などの推薦入試も充実しており、かつ浪数縛りが非常に緩やかである
- 学費は日本一なので覚悟しておくこと
一般入試でも求められる得点率はそこそこ高いためか、抜け道的な入試制度がいくつかあり、その定員もかなり多い人数が設定されています。他の大学に比べて、いわゆる「親の力」の介入の余地が大きいところになりますので、どうしても医学部入試に苦戦してしまう際の最終手段の1つとして、検討の余地があるでしょう。
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入試の基本情報と面接
- 《配点》数学(100)、 英語(100)、理科2科目(150)
※小論文試験の成績は一次では使用せず - 一次試験合格で二次試験へ(面接)
面接:約10分/個人面接/一般的な質問 - 学納金 約4,550万円(6年間)+α
- その他の入試制度
学校推薦型入試(30名):付属校出身者のみ
総合型選抜(20名):~4浪/中・四国出身/付属or関連病院勤務/中・四国で働く保護者以外の医療従事者の推薦
岡山県地域枠(10名):岡山県病院で6年間勤務/岡山or川崎医大に何らかのつながりがあればOK
静岡県地域枠(10名):静岡県の病院で9年間勤務/奨学金あり
長崎県地域枠(6名):長崎県の病院で9年間勤務/奨学金あり
国語 | 数学 | 理科 | 英語 | 面接 | 合計 |
– | 100 | 150 | 100 | – | 350 |
<一般選抜の配点>
最も定員が多い一般選抜について説明します。配点は理科1.5倍配点で、数学100点、英語100点、理科2科目で150点の配点となっています。一次試験で小論文試験も実施しますが、小論文の成績は一次合格の判定には利用せず、最終合格の判定のみに使用されます。一次試験に合格すると二次試験で、面接が実施されます。面接については10分の個人面接になっています。概ねふつうの質問がされるようですが、1年次は寮生活になるので、寮生活に関しての意見を求められることも多いようです。
<学納金は日本一>
ちなみに、学納金は6年間の合計で約4550万+諸経費となっております。純粋な学納金で比較すると実は東京女子医大のほうが高いのですが、川崎医大では1年次の寮費がかかるので、それを加味すると川崎医大の学費の方が高くなります。私立医大の中では、日本一の学費とされています。
<その他の入試制度>
川崎医科大学のその他の入試制度について説明します。
・川崎医大付属高出身者のみが出願できる学校推薦型入試で30名の定員
・4浪までOK、中国・四国地方の出身地縛りあり、川崎医大付属病院及びその関連病院で6年間縛りあり、中国・四国地方の病院で働く保護者以外の医療従事者の推薦が必要な総合型選抜で20名の定員
・岡山県の病院で6年間の縛りはあるが、奨学金なし、年齢縛りなし、出身地縛りもなく、岡山県や川崎医大に何かしらのつながりがあればOKとされる岡山県地域枠で10名の定員
・静岡県の病院で9年間の縛り、奨学金あり、年齢縛りなし、出身地縛りなしの静岡県地域枠で10名の定員
・長崎県の病院で9年間の縛り、奨学金あり、年齢縛りなし、出身地縛りなしの長崎県地域枠で6名の定員
があります。 地域枠はいずれも一般選抜の試験で学力の評価がなされます。いずれも専願制ではありますが、地域枠の定員が目立ちます。かなり浪数を重ねていても出願できる枠も多いので、該当する方は検討してみてください。
数学の分析
<目標得点ライン>
満点100/H95/M85/L80/L-75/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン)
- 時間:80分間、全問マーク式
- 難易度評価
①複素数平面・A**
②数列と極限・B***
③数Ⅲ微積・A** - 問題平易なため時間は余るか。余裕持って取り組める。
- 数Ⅲ微積と数列と極限が頻出分野。
- 対策:網羅系問題集でのインプット学習必須。アウトプットは『チョイス』『核心(標準編)』など易しめでOK。
問題番号 | 分野 | 難易度 |
1 | 複素数平面 | A** |
2 | 数列と極限 | B*** |
3 | 数Ⅲ微積 | A** |
<試験問題の概要>
全体的な難易度はやや易~標準レベルです。基本中の基本を問う問題も目立ち、誘導も丁寧です。オーソドックスな問題が大半を占めており、センター試験や共通テストの数3含むバージョン、といった感じの印象です。
<時間配分>
問題難易度は平易なうえ、制限時間は80分ありますので、時間は余るでしょう。大問の前半は条件反射的に解ける軽い問題ばかりで、大問の後半も難易度の高い問題はなく、余裕をもって取り組める問題セットです。
<頻出分野>
出題分野に関しては、数3微積と、数列と極限がよく出題されています。
<川崎医大数学の対策>
川崎医科大学の数学の対策としては、殆どが基礎的な典型問題ばかりですので、網羅系問題集でのインプット学習は必須でしょう。アウトプット演習を行うのであれば、チョイス新標準問題集や理系数学入試の核心(標準編)などの易しめの演習書で構いません。
英語の分析
<目標得点ライン>
満点100/H100/M90/L80/L-75/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン)
- 時間:80分間
- 難易度評価
①文法・A
②並び替え・B
③長文・A
④長文・B - 時間が不足することはないか。マークミスに注意。
- 対策:長文対策として特別な対応は必要なし。文法問題の失点に注意。文法問題集は丁寧に取り組む。
問題番号 | 分野 | 難易度 |
1 | 文法 | A |
2 | 並び替え | B |
3 | 長文 | A |
4 | 長文 | B |
<試験問題の概要>
大問1と2が文法事項を問う問題で、大問3と大問4は長文問題です。いずれも平易なものですが、文法問題の数も多く、配点率もそこそこあるでしょうから、文法問題対策も必要になることには気をつけましょう。
<時間にも余裕あり。ケアレスミスのチェックもお忘れなく。>
制限時間は80分ありますが、時間が不足することもないでしょう。マークミスなどないか、丁寧に確認するようにしてください。
<川崎医大英語の対策>
川崎医大の英語の対策としては、長文問題の対策として特別なものは必要ありませんが、文法問題で抜けがあるとどんどん失点していくので、ネクステージなどの文法問題集は丁寧に進めていくことをお勧めします。
化学の分析
<目標得点ライン>
満点75/H75/M65/L60/L-57/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン )
- 時間:120分間(2科目)
- 難易度評価
①理論・A
②理論・A
③有機・B - 全体的にかなり平易。センター試験・共通テストよりも若干優しいくらいの問題が多い。
- 平易な問題ばかりのため、時間はかなり余るか。高得点勝負のため、マークミスに注意。
- 対策:『重要問題集』A問題相当の演習まででOK。ミスなく解けるように丁寧にトレーニング。
問題番号 | 分野 | 難易度 |
1 | 理論 | A |
2 | 理論 | A |
3 | 有機 | B |
<出題範囲の偏り>
令和2年度では理論2問、有機1問、のセットでした。無機の問題は理論の問題の一部として、高分子の問題は有機の問題の一部として出題されることが多いようです。
<試験問題の概要>
全体的にかなり平易な問題ばかりで、センター試験や共通テストよりも若干易しいくらいのレベルの問題が多いです。大半が独立した設問となっており、これもまたセンター試験や共通テストチックな特徴と言えるでしょう。一部に変に凝った問題もありますが、結局独立した単問であるため、得点に与える影響は微々たるものでしょう。
<制限時間もゆったり>
制限時間は60分ありますが、問題もかなり平易な問題ばかりですので、時間はかなり余る受験生が多いかと思われます。高得点勝負ですので、マークミスなどがあると目も当てられません。致命的なミスがないか良く見直しましょう。
<川崎医大化学の対策>
川崎医大の化学の対策としては、重要問題集A問題相当の演習まででOKです。ただし高得点勝負にはなるので、ミスなく解けるようになるまで丁寧にトレーニングしてください。
物理の対策
<目標得点ライン>
満点75/H70/M65/L60/L-55/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン )
- 時間:120分間(2科目)
- 難易度評価
①力学・A~B
②電磁気・B~C
③電磁気・A
④原子・B - 全体的にセンター試験くらいの平易な問題。大問後半にやや難の問題含まれるが、解けなくてもOK。
- 時間はやや難の問題に費やしすぎなければ余裕あり。
- 対策:『重要問題集』A問題、『良問の風』レベルまででOK。原子の出題頻度が高いことには注意。
問題番号 | 分野 | 難易度 |
1 | 力学 | A~B |
2 | 電磁気 | B~C |
3 | 電磁気 | A |
4 | 原子 | B |
<出題範囲の偏り>
大問4問構成で、令和2年度では、力学1問、電磁気2問、原子1問というセットでした。原子物理もよく出題されているので、丁寧に対策する必要があります。
<概ね平易だが、満点ストッパー的な問題もちらほら>
全体的にかつてのセンター試験くらいの平易な問題ばかりですが、大問の後半にはやや難しい問題も含まれます。解けなくても大丈夫ですので、難しいと思ったら適当にマークして次の問題に行きましょう。
<制限時間>
制限時間は60分ありますが、やや難の問題に変に時間をかけなければ、余裕が出るでしょう。化学も時間の余裕がありますから、一通り解ける問題を解き、マークミスなどのチェックが終わったら、やや難の問題に取り組む余裕も出るでしょう。とはいえ難しい問題は落としても十分に合格ラインに到達します。
<川崎医大物理の対策>
川崎医大の物理の対策としては、重要問題集A問題、良問の風レベルまで演習すれば十分です。ただし原子の出題頻度が高いことには注意しておきましょう。
生物の対策
<目標得点ライン>
満点75/H65/M60/L55/L-52/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン )
- 時間:120分間(2科目)
- 難易度評価
①生態、代謝・B
②体内環境・A
③分子生物・A~B - 全体的な難易度は標準レベル。ぱっと見は典型問題だが少し深掘りした問題が目立つ。そこそこ差がつく問題か。
- 大問少なく、化学時間余る。時間不足になることはないか。
- 対策:『基礎問題精講』等の標準的な問題集まででOK。解説部分、関連事項も丁寧に学習。遺伝計算は余裕があれば対策すると良い。
問題番号 | 分野 | 難易度 |
1 | 生態、代謝 | B |
2 | 体内環境 | A |
3 | 分子生物 | A~B |
<出題分野の偏り>
川崎医大生物の分野の偏りはほぼありません。生態や進化、植物生理などの分野からもしっかり出題されています。
<試験問題の概要>
全体的な難易度は標準レベルで、ぱっと見典型問題ですが、その典型問題を少し深掘りした問題が目立ちます。平易なテーマでも、その原理などを丁寧に学習していたかどうかで、そこそこ差のつく問題だったんじゃないかと思われます。
<制限時間について>
制限時間は60分ありますが、大問数も少なく、化学も時間が余り気味ですので、時間が足りなくて困ることはないでしょう。
<川崎医大生物の対策>
川崎医大の生物の対策としては、基礎問題精講など標準的な問題集までの演習で構いませんが、各テーマの解説部分も丁寧に読み込み、関連事項に関しても丁寧に学習するようにしてください。遺伝計算に関してはちょいちょい出題されているようなので、余裕があれば対策しても良いかもしれません。
全体の得点戦略
- 問題難易度は易しいが高得点勝負。難しい問題集に手を出さず、基礎~標準の問題集を丁寧に何周もこなすのが最短ルート。
H | M | L | L- | 満点 | |
数学 | 95 | 85 | 80 | 75 | 100 |
英語 | 100 | 90 | 80 | 75 | 100 |
物理 | 70 | 65 | 60 | 55 | 75 |
化学 | 75 | 65 | 60 | 57 | 75 |
生物 | 65 | 60 | 55 | 52 | 75 |
合計 | 340 | 305 | 280 | 262 | 350 |
<全体の得点戦略/普通に勉強していれば高得点が取れるはず。ただやや物理有利。>
令和2年度における川崎医大の一次合格最低点は253点と公表されています。一次合格でも二次不合格になることもあるようですから、今回の分析では物理選択におけるLマイナスライン(繰り上げ合格ライン)を262点と設定しています。全体的に問題難易度は易しいですが、求められる得点率もそこそこ高くなっています。極端に基礎学力が不足していなければLライン突破は容易ですから、医学部だからと言って難しい問題集に手を出さずに、基礎固め~標準レベルの問題集を退屈でも丁寧に何周もこなすことが、川崎医大合格への最短ルートでしょう。同様のスタンスの勉強で合格出来る大学としては、福岡大、久留米大、日大医学部などが代表的で、次点で杏林大や埼玉医大などがあります。「基礎固めを何周も」というスタンスは何も川崎医大に限った話ではありませんので、とっとと退屈な受験勉強は終わらせて、医学部の勉強に早くシフトしましょう。
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