総評
- 私立では珍しく理数系が得意な受験生が大いに有利になる内容
- 理科の得点調整がガッツリ入るので警戒すべき
理数系が得意な受験生が大いに有利になる
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入試の基本情報と面接
- 《科目(配点)》数学(100)、英語(100)、理科2科目(200)
- 一次試験合格で二次試験(小論文+面接)。面接:個人/10分程度/一般的な内容
- 学納金 3,582万円(6年間)+α
- その他の入試制度
一般入試後期(5名):前期と日程が異なるのみ
一般公募推薦(25名):一浪まで
共通テスト利用入試(前期5名、中期3名、後期2名)
国語 | 社会 | 数学 | 理科 | 英語 | 面接 | 合計 | |
共通 | – | – | – | – | – | – | – |
二次 | – | – | 100 | 200 | 100 | – | 400 |
<面接>
二次試験では、小論文と面接が実施されます。面接は個人面接で、10分程度で概ね普通のことが聞かれます。
<学納金>
学納金は6年間の合計で約3582万+諸経費となっており、学費は私立医の中でもけっこう高めです。
<その他の入試制度/一般公募推薦が受けやすい>
近畿大医学部のその他の入試制度は、入試日程が異なるだけの一般入試後期で5名の定員、一浪までの縛りでその他の縛りはない一般公募推薦で25名の定員、共通テスト利用形式に前期5名・中期3名・後期2名の定員があります。一般公募推薦は縛りが少ないため、受験資格のある受験生が多いです。11月下旬というかなり早い時期に実施される試験でもあるので、入試の前哨戦のつもりで受けてみるのも良いでしょう。
数学の分析<60分・3問>
<目標得点ライン>
満点100/H90/M65/Lx60/L-–55
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン)
- 試験時間:60分
- 全体的な難易度は標準レベル。数学力で差が付きやすい。
- 手際よく解き進めれば完答も可能。
- 頻出:1A2Bからまんべんなく出題。
- 対策:網羅系問題集でのインプット学習必須。アウトプットは「チョイス」「核心標準編」など。High狙うなら「やさしい理系数学」も効果的。
問題番号 | 分野 | 難易度 |
大問1 | 数列 | B** |
大問2(1) | 二次曲線 | C** |
大問2(2) | 整数 | A |
大問3 | 指数・対数 | B** |
<試験問題の概要>
制限時間は60分で、大問3問構成です。令和2年度の難易度評価は、大問1はB、大問2(1)はC、(2)はA、大問3はBとしました。大問1は答えのみ記入ですが、大問2と3は記述式問題です。
全体的な難易度は標準です。網羅系問題集に掲載されているような典型問題の類題が多いですが、一部、思考力を要する問題も混じっており、ほどほどに差がつく難易度構成となっています。私立医の割には、繁雑な計算も少なく、地方国公立にも似た素直な問題傾向になっています。計算量は特別多くないので、手際よく進めていけば完答も可能でしょう。
<頻出分野>
出題範囲は数1A2Bのみで、数3の出題はありません。数1A2Bから満遍なく出題されています。
<近畿大数学の対策・インプット編>
標準問題の類題が中心なので、網羅系問題集を用いたインプット学習は必須でしょう。
<近畿大数学の対策・アウトプット編>
「チョイス新標準問題集」や「理系数学入試の核心(標準編)」などそう難しくないものを選べばOKですが、Highに相当する高得点を取っていきたい場合は「やさしい理系数学」など難しめの問題集に手を出しても構いません。数3が出題されていないので、文系数学用の問題演習を意識してください。
英語の分析<60分・5問>
<目標得点ライン>
満点100/H80/M60/L55/L-–50
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン)
- 試験時間:60分間
- 大問ごとの難易度評価
1.語彙・C 2.選択式英作文・C 3.並び替え・C 4.長文・C 5.長文・B - 長文少なく、時間は余るか。
- 対策:出題ユニーク。対策してもコスパ悪く、併願校の対策に集中すべきか。対策するなら、網羅性の高い単語集、難しめの英文法問題集などが有効か。
問題番号 | 分野 | 難易度 |
大問1 | 語彙 | C |
大問2 | 選択式英作文 | C |
大問3 | 並び替え | C |
大問4 | 長文 | C |
大問5 | 長文 | B |
<試験問題の概要>
制限時間は60分の試験です。大問1は文法問題のように見せかけて語彙の意味を問う問題ですが、全体的に難しい語彙を問うているため難易度評価Cとしました。大問2は選択式の和文英訳で、日本語の課題文が与えられ、その日本文に対応する英文を選ぶ形式の問題です。「ネイティブでも解けない」などと噂されているのはこの大問2ですが、令和2年度入試ではまだマシなほうで、難易度評価Cとしました。大問3は並び替えになり、これもかなり難易度が高いです。私立医学部でも最高峰クラスの難しさであり、難易度評価Cとしています。大問4は長文ですが、医学テーマを題材としており専門性は高いです。語彙レベルも高く、難易度評価Cとしています。大問5の長文だけが普通の難易度で、難易度評価Bとしています。
<時間配分に関して>
時間は60分しかありませんが、文法問題メインで、長文が控えめなので、意外と時間は余ります。
<近畿大英語の対策>
非常にユニークな問題が並び、対策してもコスパは最悪に近いので併願校の対策に集中してください。正面から取り組むなら「鉄壁」などの網羅性の高い単語集や、「英語頻出問題総演習」などのやや難しめの英文法問題集などが有効ですが、このレベルまでやってもいいのはせいぜい私立では国際医療福祉か東邦くらいで、近大はこれらの大学のように英語重視配点ではありませんので、コスパは全く良くありません。また最新年度の令和3年度では難易度が大幅に下がったため、今後その難易度が変わらなければこれらの対策は全くの無駄になります。
化学の分析<60分・3問>
<目標得点ライン>
満点100/H95/M75/L70/L-65
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン)
- 試験時間:120分間(選択2科目)
- 全体的に基礎〜標準レベル。難問も誘導あり。
- 有機はほとんど時間かからず時間は少し余裕。
- 対策:基本的に「重要問題集」A問題レベル。マニアック知識が問われる高分子などは、B問題レベルまで取り組んでおくと良い
問題番号 | 分野 | 難易度 |
大問1 | 無機+理論 | A |
大問2 | 理論 | B |
大問3 | 有機 | A |
<出題分野の傾向>
令和2年度では理論と無機の融合問題1問、理論1問、有機1問のセットでした。無機も高分子もいずれかの分野がランダムに出題されますが、無機の難易度が控えめな一方、高分子ではちょっとマイナー知識が問われやすい傾向にあります。
<試験問題の概要>
選択科目2科目併せて120分なので、化学には60分割けることになります。全体的に基礎~標準レベルの問題で、一部高度なテーマを扱う問題もありますが、十分に誘導がついているので落ち着いて取り組めば大丈夫です。
<時間配分に関して>
有機などは時間が殆どかからないので、少し余った受験生が多いかと思われます。
<近畿大化学の対策>
「重要問題集」A問題レベルまでで基本的には構いませんが、マニアック知識が問われる高分子などはB問題まで取り組んでおくとよりよいでしょう。高分子も計算がややこしいというよりは知識が難しいので、難しい計算問題などはカットしても構いません。
物理の対策<60分・3問>
<目標得点ライン>
満点100/H90/M70/L60/L-–55
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン)
- 試験時間:120分間(選択2科目)
- ほとんど標準的な問題。実力差が大きく出る。
- 試験時間はちょうどよいか、やや余る程度。
- 対策:「重要問題集」A問題問題や、「名問の森」★レベルでOK
問題番号 | 分野 | 難易度 |
大問1 | 力学 | B |
大問2 | 電磁気 | B |
大問3 | 原子 | A〜C |
<出題分野の傾向>
大問3問構成で、令和2年度では力学1問、電磁気1問、原子1問というセットでした。例年、力学と電磁気が固定で、最後の1問は波動か原子か熱か、といったパターンのようです。原子は頻出と言ってもよいくらい出ているので、対策を忘れないようにしてください。
<試験問題の概要>
選択科目2科目併せて120分なので、物理には60分割けることになります。難易度に関してはほぼ標準的な問題ばかりで構成されており、実力差が大きく出る問題となっています。
<時間配分に関して>
制限時間は60分程度で、ちょうどよいくらいかやや余るくらいの受験生も多かったでしょう。
<近畿大物理の対策>
重要問題集A問題や、名問の森★レベルで構いません。
生物の対策<60分・4問>
<目標得点ライン>
満点100/H85/M75/L70/L-–65
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン)
- 試験時間:120分間(選択2科目)
- 大問ごとの難易度評価
1.体内環境・A 2.神経・B 3.体内環境・B 4.植物生理・A - 知識の穴埋め問題が大半、次点で論述問題。考察問題は出たとしても数は控えめ。
- 対策:標準的な問題集に加え、穴埋め問題の対策として「生物用語の完全制覇」なども。論述問題集も有効。遺伝は特別な対策不要
問題番号 | 分野 | 難易度 |
大問1 | 体内環境 | A |
大問2 | 神経 | B |
大問3 | 体内環境 | B |
大問4 | 植物生理 | A |
<出題分野の傾向>
近畿大生物は分野の偏りがかなりあります。体内環境が頻出で、次点で神経、発生、代謝と続きます。生態や進化の出題は殆どありませんが、植物生理はたまに、牽制として出題されることがあります。
<試験問題の概要>
選択科目2科目併せて120分なので、生物には60分割けることになります。全体的に知識の穴埋め問題が大半を占め、次点で知識の論述問題も多いです。殆どが非常に簡単ですが、時々満点ストッパー的な難しい知識を問う問題もあります。令和2年度では考察らしい問題はなく、例年、出たとしてもかなり数は控えめです。
<近畿大生物の対策>
基礎問題精講などの標準的な問題集に加え、大量にある穴埋め問題をなるべく落とさないようにするため、生物用語の完全制覇などの知識対策の問題集にも取り組みたいところです。それに加えて、典型的ではあるものの論述問題も多いことから、「生物記述論述問題の完全対策」など論述用問題集も非常に有効でしょう。考察問題や遺伝の出題はあまりありませんので、特別な対策は不要です。
全体の得点戦略
- 理科の得点調整に注意。
物理選択者→化学重視の勉強
生物選択者→生物重視の勉強
Hgh | Middle | Low | Low- | 満点 | |
数学 | 90 | 65 | 60 | 55 | 100 |
英語 | 80 | 60 | 55 | 50 | 100 |
物理 | 90 | 70 | 60 | 55 | 100 |
化学 | 95 | 75 | 70 | 65 | 100 |
生物 | 85 | 75 | 70 | 65 | 100 |
合計 | 360 | 280 | 240 | 225 | 400 |
近畿大学医学部の令和2年度での合格最低点は227点と発表されているため、これを繰り上げ合格の最低点と仮定して考察します。理科の得点補正を物理で数点程度の得点上昇、生物は10点程度の大幅減少、化学はほぼ据え置きかやや減少と予想し、物理選択の繰り上げ合格者最低点であるLマイナスラインの合計を225点と設定しました。近大医学部は明らかに数学・理科で稼ぐ受験生が強いと考えられ、素直に標準問題の完成度で大いに差が付きます。一方で、英語はどうしようもない難易度の文法問題の対策をしないと得点が伸びません。令和3年度ではかなり易しくなったようですが、来年度以降どうなるかはわからないので、英語で稼ぐというのはあまり期待しないでおきましょう。
また理科の得点調整にも注意が必要です。恐らく例年、生物のマイナス補正は大きく、物理のプラス補正が若干あるので、生物は超高得点を目指しマイナス補正を小さくし、物理は程ほどの得点でプラス補正を狙いたいところです。故に、物理選択であれば化学重視の勉強、生物選択であれば生物重視の勉強を行うことで、得点調整の恩恵を最大限に受けることが出来ると予想します。
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