総評
- 全体的に問題難易度が高く、特に数学・物理・化学は得点伸ばしにくい
- 英語は比較的稼ぎやすく、長文読解力や文法力次第で高得点も狙いやすい
- やや生物選択有利だが、時間足りない。時間配分最適化を入念に行う必要あり
かなり癖が強いので、無対策で突っ込むと、基礎学力のある受験生でも思わぬ大失敗が予想される一方で、対策次第で最後の追い込みが期待できる大学ともいえるでしょう。
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入試の基本情報と面接
- 《配点》数学(100)、 英語(100)、理科2科目(200)
※2日程あり/どちらを受けても両方受けてもOK - 一次試験合格で二次試験へ (小論文+面接)
面接:10~15分程度/個人/一般的な質問 - 学納金 約3,660万円(6年間)+α
- その他の入試制度
総合型選抜(3名):大学2年課程まで修了
公募推薦(地域特別枠)(10名):栃木・群馬・茨城・埼玉・福島・東京出身or卒業/東京以外の5県で従事/評定4.0/現役のみ
指定校推薦(20名)+栃木県地域枠(5名)
共通テスト選抜(10名):国・社なし
国語 | 数学 | 理科 | 英語 | 面接 | 合計 |
– | 100 | 200 | 100 | – | 400 |
<一般選抜の配点>
最も定員が多い一般選抜について説明します。配点は理科2倍配点で、数学100点、英語100点、理科2科目で200点の配点となっています。一次試験は第1日程と第2日程と2つあり、どちらの日程で受けてもいいですし、両方受けても構いません。両方受けた場合は、良い方の成績が採用されます。一次試験に合格すると二次試験で、小論文と面接が実施されます。面接については10~15分の個人面接になっています。概ねふつうの質問がされるようです。
<学納金はそこそこくらい>
ちなみに、学納金は6年間の合計で約3660万+諸経費となっており、私立医の中でも、そこそこくらいの学費になってきます。
<その他の入試制度>
獨協医科大学のその他の入試制度について説明します。
・既に大学2年生の課程までを修了していることを求め、事実上の学士編入試験である総合型選抜で3名の定員
・栃木、群馬、茨城、埼玉、福島、東京出身または高校を卒業し、東京以外の5県の病院で医師として従事することを求め、かつ評定4.0以上の現役だけが出願できる公募推薦(地域特別枠)で10名の定員
・指定校推薦で20名+更に栃木県地域枠の推薦で5名の定員
・国語社会なしの共通テスト選抜で10名の定員
があります。また、奨学金ありの栃木県地域枠5名分が、一般入試と共通テスト入試に割り当てられています。
栃木の医大は獨協医大と自治医大がありますが、自治医大では多くの医師を栃木県外の地方に派遣しているため、獨協医大は栃木県の地域医療の確保に重要な役割を果たしています。そのためか、推薦入試や地域枠の定員がやや多めであり、条件に該当する受験生はねらい目と言えます。
数学の分析
<目標得点ライン>
満点100/H80/M60/L55/L-50/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン)
- 時間:70分間/全問マーク式
- 難易度評価
①⑴三角関数・A* ⑵二次曲線・B*
②指数関数、図形と方程式・B**
③確率、場合の数・C*
④三角比、平面ベクトル・C*
⑤数Ⅲ微積、極限・B** - 全体難易度は標準~やや難レベル。
- 全問まじめに取り組むと時間不足。処理速度が求められる。
- ほぼ満遍なく出題。数Ⅲ微積、ベクトルよく出る。
- 対策:網羅系問題集でのインプット学習必須。アウトプットはL~Мラインなら『チョイス』『核心(標準編)』。
問題番号 | 分野 | 難易度 |
1⑴ | 三角関数 | A* |
1⑵ | 二次曲線 | B* |
2 | 指数関数、図形と方程式 | B** |
3 | 確率、場合の数 | C* |
4 | 三角比、平面ベクトル | C* |
5 | 数Ⅲ微積、極限 | B** |
<試験問題の概要>
全体的な難易度は標準~やや難レベルです。標準問題か、標準問題を少しひねった手数の多い問題が目立ちます。
<時間配分>
制限時間は70分ありますが、全てまじめにやり過ぎると、時間は正直足りません。方針こそ立つのですが、場合分けなどが非常に多くなり、見た目以上に時間のかかる問題が多くなっています。スピーディーな数式処理が求められる問題セットと言えるでしょう。
<頻出分野>
出題分野に関しては、概ねほぼ満遍なく出題されているようですが、数3微積とベクトルがよく出題されています。
<獨協医大数学の対策>
獨協医科大学の数学の対策としては、結局標準問題がベースになっているので、網羅系問題集でのインプット学習は必須でしょう。少しひねった形式の問題も多いので、十分に習熟したいところです。アウトプット演習にはL~Mラインで良ければチョイス新標準問題集や理系数学入試の核心(標準編)などで構いません。それ以上を目指すなら、標準問題精講ややさしい理系数学なども一応有効っちゃ有効ですが、他の科目とのバランスには注意をしてください。
英語の分析
<目標得点ライン>
満点100/H95/M80/L75/L-70/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン)
- 時間:70分間(現在では60分に短縮)/大問4問
- 難易度評価
①長文・B
②(A)会話文・A (B)空所補充・A (C)長文・A
③並び替え・A
④文法・A - 文法問題で躓かなければ時間は十分か。
- 対策:特筆すべき長文対策は無し。文法は丁寧に学習を。
問題番号 | 分野 | 難易度 |
1 | 長文 | B |
2(A) | 会話文 | A |
2(B) | 空所補充 | A |
2(C) | 長文 | A |
3 | 並び替え | A |
4 | 文法 | A |
<試験問題の概要>
なんだかんだで長文問題が最も多く、難易度はやや易~標準レベルなのですが、この大学は文法問題もかなりの量が出題されています。文法問題は平易ですが、問題数が多いので抜けがあるとポロポロ点を落とし、いつの間にか低い点になってしまうかもしれません。
<制限時間/文法問題でつまづかなければ時間はそこまで不足しない>
制限時間は70分ありますが、文法問題でつまづかなければ、さほど時間で苦労することはないでしょう。(現在では60分に短縮されています。ある程度スムーズに解答する必要があります。)
<獨協医大英語の対策>
獨協医大の英語の対策としては、長文問題の対策として特別なものは必要ありませんが、文法問題で抜けがあるとどんどん失点していくので、ネクステージなどの文法問題集は丁寧に進めていくことをお勧めします。
化学の分析
<目標得点ライン>
満点100/H90/M65/L50/L-45/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン )
- 時間:100分間(2科目)
- 難易度評価
①小問集合・A
②理論・C
③無機・B
④有機・B
⑤高分子・B - 骨のある問題多く、一筋縄ではいかない。
- 大問5問&重厚な問題ありで時間の余裕はない。
- 対策:『重要問題集』B問題相当の演習まで行っておきたい。それ以上の問題集での対策はお勧めしない。
問題番号 | 分野 | 難易度 |
1 | 小問集合 | A |
2 | 理論 | C |
3 | 無機 | B |
4 | 有機 | B |
5 | 高分子 | B |
<出題範囲の偏り>
令和2年度では小問集合1問、理論1問、無機1問、有機1問、高分子1問のセットでした。無機や高分子は小問集合も含めば何かしら出題されていますが、毎年大問1問まるまる出るかと言えばそうではないようです。どちらかというと、高分子のほうがよく出題されているようです。
<試験問題の概要>
全体的に骨のある問題が多く、選択肢問題であっても、最後の2択で迷わせる、一筋縄ではいかない問題が並んでいます。文章題でも、文章量がそれなりにあり、高度な題材も織り交ぜられていることが多いです。令和2年度では特に大問2の問題がハイレベルで、重要問題集B問題相当の知識や理解が総合的に試される問題となっています。
<制限時間もかなりきつめ。>
制限時間は50分しかないですが大問5問もあり重厚な問題もあるので、あまり余裕はありません。文章題は初見の題材も多く丁寧な読解が必要で、計算問題も慎重に取り組む必要があるため、化学が得意な人でもギリギリ、といった感じでしょう。半分くらいの得点でもどうにかなりますので、問題を取捨選択して進める必要があります。
<獨協医大化学の対策>
獨協医大の化学の対策としては、重要問題集B問題相当の演習まできちんと行っておきたいところです。難しい題材が多く、問題難易度的には化学の新演習などに取り組んでもいいくらいなのですが、偏差値的には下位の医学部でもあり、求められる得点率はそう高くないため、基本的にはお勧めしません。
物理の対策
<目標得点ライン>
満点100/H85/M65/L50/L-45/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン )
- 時間:100分間(2科目)
- 難易度評価
①小問集合・B
②熱・B~C
③原子・B
④電磁気・B
⑤力学・C - 難易度は標準~やや難。全体見てから手を付ける必要。
- 分量そこそこ&難問あり。飛ばしながらでないと時間不足。
- 対策:『重要問題集』B問題、『名問の森』★★レベルまで練習し、取れる問題を拾うスタンス。原子要対策。
問題番号 | 分野 | 難易度 |
1 | 小問集合 | B |
2 | 熱 | B~C |
3 | 原子 | B |
4 | 電磁気 | B |
5 | 力学 | C |
<出題範囲の偏り>
大問5問構成で、令和2年度では、小問集合1問、力学1問、電磁気1問、熱1問、原子1問というセットでした。原子物理もほぼ毎年出題されているので、丁寧に対策する必要があります。
<やや難の問題も多く、問題の取捨選択が必要>
全体的な難易度は標準〜やや難くらいです。かなりアッサリな典型問題もある一方、しょっぱなから骨のあるやや難の問題もあります。試験が始まったらざっと問題全体を眺めてみて、ありがちな題材の問題から手を付ける必要があります。
<制限時間/かなりタイトなので、優先順位を立てながら進めていく>
制限時間は50分ありますが、分量もそこそこあり難しい問題も含まれているので、難しい問題は飛ばしながら進めていかないと、時間が足りなくなるでしょう。
<獨協医大物理の対策>
獨協医大の物理の対策としては、重要問題集B問題、名問の森★★レベルまで練習した上で、本番では取れる問題だけ拾っていく、というスタンスになって来るかと思われます。また繰り返しになりますが、原子が頻出なので、原子も含めて丁寧に対策する必要があります。
生物の対策
<目標得点ライン>
満点100/H90/M70/L60/L-55/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン )
- 時間:100分間(2科目)
- 難易度評価
①体内環境・B
②代謝、酵素・B
③分子生物・A
④生殖、発生・A~B
⑤生態・A~B - 全体的にやや易~標準レベル。問題平易だが数が多過ぎ。時間かかる問題は適当にマークして飛ばす、か。
- 対策:『基礎問題精講』等の標準的な問題集でOK。周回して即答できる問題を増やす。遺伝は特化した対策は不要か。
問題番号 | 分野 | 難易度 |
1 | 体内環境 | B |
2 | 代謝、酵素 | B |
3 | 分子生物 | A |
4 | 生殖、発生 | A~B |
5 | 生態 | A~B |
<出題分野の偏り>
獨協医大生物の分野の偏りはほぼありません。生態や進化、植物生理などの分野からもしっかり出題されています。
<試験問題の概要・制限時間に関して/平易な問題が多いが、問題数が多すぎる>
全体的な難易度はやや易しい~標準レベルで、そこまで考え込む問題はありませんが、あまりにも問題数が多すぎて、殆どの受験生は完走出来ないと思われますから、「考え方が分かるが時間がかかりそうなので適当にマークして飛ばす」という判断が必要になるかもしれません。試験時間は50分ありますが全く持って足らず、私自身、数分オーバーしての完走でした。化学も時間が足りないのですが、化学は問題難易度が高いものもたくさんあるので、生物にちょっと多めの時間を割く時間配分が良いように思います。
<獨協医大生物の対策>
獨協医大の生物の対策としては、基礎問題精講などの標準的な問題集で構いませんが、即答できる問題のバリエーションが多ければ多いほど良いので、周回数は多めに取っておいた方が良いように思います。遺伝に関してはあまり出題されておらず、仮に出題されたとしてもややこしい遺伝問題は真っ先に飛ばすでしょうから、特化した対策は不要です。
<目標得点ライン>
他の理科科目と比べると、量がクソ多いだけで問題難易度は大したことが無いので、比較的高得点が取りやすい科目と考えています。生物選択者はやや有利と思われます。化学の点数をちょっと犠牲にしてでも、生物で7割くらいの得点を狙っていきたいところです。
全体の得点戦略
- 全体的に難度高く、数・物・化でMiddleライン以上を狙うのはかなり困難。
- 解ける問題を見抜き、Lowライン死守が無難。
H | M | L | L- | 満点 | |
数学 | 80 | 60 | 55 | 50 | 100 |
英語 | 95 | 80 | 75 | 70 | 100 |
物理 | 80 | 65 | 50 | 45 | 100 |
化学 | 90 | 65 | 50 | 45 | 100 |
生物 | 90 | 70 | 60 | 55 | 100 |
最後に獨協医大の全体の得点戦略について考察してみようと思います。
獨協医大の合格最低点は公表されておりませんので、目標得点ラインの設定は完全に我々の予想になります。全体的に問題難易度が難しく、特に数学・物理・化学でMiddleライン以上を取るのはかなり困難でしょう。私立医大御三家や順天堂大などが本命の受験生であれば、積極的にMiddle以上を狙えるかもしれませんが、このレベル帯の受験生は獨協医大をそもそも受験すらしないことが多いように思います。殆どの受験生にとっては、何とか解ける問題を見抜いてLowラインを死守する、という方針で乗り切るのが無難でしょう。
その一方で、対策次第で比較的高得点が狙いやすいのが英語で、そこそこレベルの長文読解力と、抜けの無い文法問題の解答力があれば、Middleライン相当の点数も意外と取りやすいように思います。次点で稼ぎやすいのは生物で、時間だけは圧倒的に不足するのですが、問題難易度はそこまで高くないので、時間配分の戦略次第で十分高得点が狙えます。
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