<傾向と対策>聖マリアンナ医科大学(医学部医学科)ーやや難の問題多いが時間に余裕があり差は付く難易度。

総評

  • 理科・数学を筆頭にやや難しい難易度だが理不尽な難易度ではない。
    時間の余裕もあり、差が付きやすい試験
聖マリアンナ医科大は特に理科・数学を筆頭に、やや難しい難易度ですが理不尽な難易度でもなく、また時間の余裕もあるので、医学部受験生の中でも差が付きやすい難易度の試験であるということが抑えておきたいポイントでしょう。

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入試の基本情報と面接

  • 《配点》 数学(100)、 英語(100)、理科2科目(200)
  • 一次試験合格で二次試験へ(小論文(50)+面接(150))
  • 面接:15分程度/個人/質問は多岐にわたる
  • 学納金 約3,440万円(6年間)+α
  • その他の入試制度
    指定校推薦(20名):指定校在校生
    一般公募制推薦(10名):現役/評定4.0以上
    神奈川県地域枠(5名):現役/評定4.0以上/神奈川県在住or卒業/奨学金貸付あり
国語 数学 理科 英語 面接 合計
100 200 100 150+小論50 600

<一般入試前期の配点/やや面接・小論文の配点多め>
最も定員が多い一般入試前期について説明します。配点は理科が2倍の配点で、数学100点、英語100点、理科2科目で200点の配点となっています。一次試験に合格すると二次試験で、小論文と面接が実施されます。小論文に50点、面接に150点の配点があります。面接については約15分の個人面接になっています。少し長めの面接で、変わった質問はありませんが多岐にわたる質問がなされます。聖マリアンナが本命校であれば丁寧に練習を積み重ねる必要があるのは勿論ですが、併願校としている受験生に関しても、良い面接の練習になるでしょう。

<学納金は高額>
ちなみに、学納金は6年間の合計で約3440万+諸経費となっており、私立医の中でも、それなりくらいの学費になってきます。

<その他の入試制度/多くが指定校推薦だが廃止の予告>
聖マリアンナ医科大学のその他の入試制度について説明します。
・大学で指定した高校の学生に対する指定校推薦で20名の定員、
・現役オンリー、評定4.0以上を求める一般公募制推薦で10名の定員、
・現役オンリー、評定4.0以上、神奈川県在住、または神奈川県の高校を卒業予定であることを求め、奨学金の貸付もある神奈川県地域枠で5名の定員
があります。全ての枠で現役オンリーです。出願を予定される方は、早め早めに準備しておきましょう。ちなみに、指定校推薦は令和4年度が最後で、令和5年度からは廃止されます。注意して下さい。

数学の分析

<目標得点ライン>
満点100/H80/M65/L60/L-55/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン)

  • 時間:90分間/大問4問
  • 難易度評価 
    ①小問集合・A1問、B2問
    ②複素数平面・B**
    ③数列と極限・B**
    ④整数・C**
  • 全体的な難易度は標準レベル。思考力・論証力問われる。
  • 試験時間に対して分量は適正かやや少ない。
  • 満遍なく出題も、データの分析や難しい整数問題に警戒。
  • 対策:網羅系問題集でのインプット学習必須。 アウトプットは『チョイス』『核心(標準編)』がお薦め。
問題番号分野難易度
1小問集合B**
2複素数平面B**
3数列と極限B**
4整数

制限時間は90分で、大問4問構成です。大問1は小問集合で、大問2や大問3は答えのみを記述する形式、大問4は完全記述式となっています。令和2年度では、大問4で難易度評価Cをつけた他は、概ねB評価としています。数学の実力差が点数にも大きく現れる試験と言えるでしょう。

<試験問題の概要>
全体的な難易度は標準レベルです。計算量や作業量で攻めるというよりは、思考力や論証力を問う内容が多くなっており、数学が得意であれば差をつけることができるでしょう。各大問に誘導がついており、これにきちんと乗ることが出来ればスムーズに解けていけるでしょう。

<時間配分>
制限時間90分に対して標準レベルの問題が並んでいるため、分量は適正かやや少ないくらいに感じるでしょう。そこまで時間がタイトな試験ではないので、1問1問じっくり取り組みたいところです。

<頻出分野>
どの分野も満遍なく出題されていますが、データの分析も頻出であることや、難易度の高い整数問題が出題されやすいことに関しては警戒しておきましょう。

<聖マリアンナ医大数学の対策>
聖マリアンナ医大の数学の対策としては、標準問題中心の出題であるため、網羅系問題集を用いたインプット学習は必須となるでしょう。アウトプット演習はチョイス新標準問題集、理系数学入試の核心(標準編)などを薦めます。余力があれば、プラチカIA2Bなど取り組んでもらっても構いません。典型問題から少し捻ってあるケースが多いので、アウトプット演習も丁寧に取り組みたいところです。

英語の分析 

<目標得点ライン>
満点100/H85/M75/L70/L-65/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン)

  • 時間:90分間/大問4問
  • 難易度評価 
    ①長文・B
    ②長文・B
    ③会話表現・B
    ④長文穴埋め・B
  • 時間はかなり余るか。苦手でも十分キャッチアップ可能。
  • 対策:特殊な対策は不要。記述式問題の練習や医系トピック中心の長文演習をしておくと良い。 
問題番号分野難易度
1長文B
2長文B
3会話表現B
4長文穴埋めB

制限時間は90分の試験です。

<試験問題の概要>
大問4問で、2問は長文、1問は会話表現、最後の1問は長文の穴埋め問題となっています。長文そのものはさほど難しくはありませんが、大問1に関しては医系トピックで、記述式の問題も目立ち、一部に答えにくい設問も紛れています。大問3や大問4は主に会話文が題材にはなっていますが、そう特殊な表現をたくさん知っておく必要もなく、標準的な難易度となっています。

<時間配分もたっぷり>
90分も時間があり、まともな長文は大問1と大問2だけですので、時間はかなり余るでしょう。英語が苦手な受験生でも、十分キャッチアップできる内容となっています。

<聖マリアンナ医科大英語の対策>
聖マリアンナ医科大の英語の対策としてそう特殊なものはありませんが、強いていうなら記述式問題の練習と医系トピック中心の長文演習が必要になるでしょう。私立専願組というよりは、国公立併願組が強そうな内容です。

化学の分析 

<目標得点ライン>
満点100/H85/M70/L60/L-55/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン )

  • 時間:150分間(2科目)
  • 難易度評価
    ①高分子・C
    ②理論・B
    ③理論・B
    ④有機・B 
  • 全体的に標準~やや難レベルの問題が中心。得点差つく。
  • やや難問題に費やし過ぎると時間は不足する可能性。
  • 対策:『重要問題集』B問題レベルまでしっかり取り組む。R2は『新演習』までやっていいレベルだが例年は不要か。
問題番号分野難易度
1高分子C
2理論B
3理論B
4有機B

理科2科目併せて150分なので、化学には75分割けることになります。

<出題範囲の偏り/高分子は特に重要。無機も一応やっておきたい。>
令和2年度では理論2問、有機1問、高分子1問のセットでした。例年、高分子はそこそこ凝った問題が出ているようで、無機に関しては令和2年度では出なかったものの、それなりに出題頻度は高いです。

<試験問題の概要>
標準〜やや難レベルの問題が中心となっており、制限時間も比較的長いことから、医学部受験生の中でもきちんと差がつきそうな出題です。

<制限時間/難しい問題にこだわりすぎると時間を浪費するかも。>
制限時間は75分ありますが、令和2年度では大問1にペプチドの質量分析を題材としたやや難しい問題がありました。このような問題に変に時間を浪費すると、時間が足りなくなることも十分予想されます。

<聖マリアンナ医科大化学の対策>
聖マリアンナ医科大の化学の対策としては、重要問題集B問題レベルまではしっかり取り組みたいところです。今年度だけで言えば新演習などをやってもいいくらいのレベルでしたが、毎年難しい問題が出題されているわけではないので、あまり期待値は大きくないでしょう。

<目標得点ライン>
目標点数に関しては、Highは85、Middleは70、Lowは60、Lowマイナスは55点と設定しました。時間もやや長めであるため、基礎の習熟度や反射スピードというより、標準問題ややや難の問題への取り組み方でもある程度差がつきそうな内容です。しかしながら、難しい問題は飛ばしていく時間配分の感覚も必要なセットと言えるしょう。

物理の対策 

<目標得点ライン>
満点100/H75/M60/L55/L-50/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン )

  • 時間:150分間(2科目)
  • 難易度評価
    ①小問集合・A
    ②電磁気・前半A/後半C
    ③力学・A~B
    ④熱・前半A/後半B~C
    ⑤波動・A 
  • 全体的な難易度は標準~やや難レベル。後半に難問多い。
  • 75分あるが、難しい問題は飛ばして進める必要あり。
  • 対策:『重要問題集』B問題、『名問の森』レベルはきちんと。難度の高い問題集も良い。科目間バランスに注意
問題番号分野難易度
1小問集合A
2電磁気 前半A、後半C
3力学A~B
4前半A、後半B~C
波動A

理科2科目併せて150分なので、物理には75分割けることになります。

<出題範囲の偏り>
大問5問構成で、令和2年度では、小問集合1問、力学1問、電磁気1問、波動1問、熱1問というセットでした。原子に関しては小問集合で入ってくるパターンが大半ですが、たまに大問1問分出題されていることもあります。

<難易度傾斜がはっきり。前半はやさしいが後半はやや難。>
全体的な難易度は標準〜やや難くらいでしょう。大問の前半と後半で難易度の傾斜があり、前半はかなり取り組みやすいですが後半は結構な難問になっているパターンが多くあります。

<制限時間/たっぷりあるが難問は飛ばそう>
制限時間は75分ありますが、難しい問題は飛ばしながら進めていく必要があるでしょう。きちんと難しすぎる問題を飛ばすことが出来れば、そこまで時間に苦労することはありません。また他の一般的な私立と違って制限時間も長めなので、途中でバテてしまわないようにしたいところです。どちらかというと、国公立の併願者向けの内容といっても良いでしょう。

<聖マリアンナ医大物理の対策>
聖マリアンナ医科大の対策としては、重要問題集B問題や名問の森相当の問題集まではきちんと取り組みたいところです。難問スクリーニングの力を養うために、難系や標準問題精講などに取り組むのも悪くはありませんが、他の科目とのバランスには注してください。

生物の対策 

<目標得点ライン>
満点100/H80/M70/L65/L-60/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン ) 

  • 時間:150分間(2科目)
  • 難易度評価
    ①進化と系統、発生・B~C
    ②体内環境・B~C
    ③生態・B 
  • 前半に知識問題、後半に考察問題多い。知識問題は論述多い。考察問題は目新しいテーマ少ない。
  • 実力ある受験生ならかなり時間余る。化学に時間割きたい。
  • 対策:『基礎問題精講』等の標準的な問題集に加え、『重要問題集』などの網羅性の高い問題集も取り組みたい。さらに論述対策もぜひ実施したいところ。遺伝は頻出ではない。余裕あれば対策しておくと良い。
問題番号分野難易度
1進化と系統、発生B~C
2体内環境B~C
3生態B

理科2科目併せて150分なので、生物には75分割けることになります。

<出題分野の偏り>
聖マリアンナ医大生物の分野の偏りはあまりありません。体内環境が最頻出で、次点で細胞生物・分子生物・神経あたりの分野がよく出ています。この年度のように進化や生態が大問1問ぶん出ている年度もありますし、他の年度では植物生理が前面に出ている大問もあります。ただ医学系分野以外から出題される時はやや難易度が抑え気味な感はあります。

<試験問題の概要>
他の科目と同様、前半部分は知識問題が多く、後半になればなるほど考察問題の頻度が高くなります。知識問題に関して注意しておきたいことは、論述で書かせる問題が多いことです。一方で、考察問題に関しては、全く目新しいテーマが出題されることは少ないようで、考察問題の経験を積んでいる浪人生であればネタそのものを知っているというケースも多いんじゃないでしょうか。

<制限時間に関して>
制限時間は75分ありますが、大問数があまり多くないこともあり、実力があり考察問題に時間がかからない受験生であれば、かなり時間が余ると思われます。化学の時間がタイトなので、化学に時間を割きたいところです。

<聖マリアンナ医大生物の対策>
聖マリアンナ医大の生物の対策としては、基礎問題精講などの標準的な問題集に加え、重要問題集や大森徹の最強問題集などの網羅性の高い問題集に取り組みたいところです。余裕があれば標準問題精講などの難しめの考察系問題集に取り組むのも悪くありませんが他の科目とのバランスには注意して下さい。これらの問題集に加えて論述対策もぜひ実施したく、生物記述論述問題の完全対策などの問題集に取り組むことができるとより良いでしょう。遺伝に関してはそれほど頻出ではないものの出題はされているので、余裕があれば対策しておくと良いでしょう。

全体の得点戦略

  • 理不尽な難易度の問題は少なく時間にも余裕
    ⇒得意科目で不得意科目のカバーも可能。
  • 記述問題多いため、下位の国公立大学の滑り止めとしても悪くない。
HMLL-満点
数学80656055100
英語85757065100
物理75605550100
化学85706055100
生物80706560100
合計325270245225400

<全体の得点戦略/意外と自由度は高い>
聖マリアンナ医科大学の合格最低点は公表されていません。およそ5割~6割くらいの間がギリギリのラインではないかと噂はされているようです。今回の分析では、物理選択者の繰り上げ合格ギリギリのラインであるLマイナスラインを400点満点中の225点と設定しました。どの科目もやや難しめの試験となっていますが、理不尽な難易度の問題は意外と少なく、時間にも比較的余裕があるので、得意科目があれば、苦手科目の不出来をカバーすることも出来ます。大学受験はなるべく科目間のバランスを意識して勉強するのが原則ではありますが、実際問題として得意・不得意がはっきり出てしまう受験生は多いと思われます。そのような受験生でも、意外と相性が良いのがこの大学と言えるでしょう。また、記述問題が非常に多いため、下位の国公立の滑り止め的なポジションとしても悪くありません。特に単科医大系との併願は相性が良いように思います。

差別入試の現在(2021年9月時点)

  • 女性受験生、多浪生に最大80点程度の減点を行っていたことが発覚。
  • 現時点で少なくとも女性差別については解消か。
    ※R3二次合格率:男性20% 女性34%
  • 浪人生の二次合格率は未だ低調。27%(H31) → 26%(R2) → 23%(R3)
    ※現役生二次合格率:45%程度
  • 一次試験(学科)は理科2倍の「the 浪人ゲー」
    ※一次合格率:浪人30%前後、現役20%前後
  • 最も有利に働くのは一浪生か。

聖マリアンナ医科大では、女性受験生や多浪生の点数に80点程度の大きな減点を行っていたとのことで、大きな問題となり、この問題は未だ現在進行形でくすぶっています。

この問題は部分的には解決され、少なくとも女性差別に関しては現段階では解消されたといっても良いでしょう。令和3年度の2次試験の合格率は、男性で20%、女性で34%となっており、女性の合格率が非常に高くなっています。

一方で、浪人生の二次試験合格率はそこまで改善したとは言えず、平成31年度で27%、令和2年度で26%、令和3年度でも23%と、むしろ低下傾向にあります。現役生の二次試験合格率は45%程度で推移しており、「現役生が大好き」である傾向が見て取れます。純粋にコミュニケーション力を評価した結果、女性合格率が上がったものの浪人合格率は改善しないということもまあ無くは無いとは思いますが、現状、こういう結果になっていることは理解した上で受験したほうが良いかと思われます。

一次試験の学科試験は、お察しの方も多いとは思いますが、理科2倍配点で問題難易度も難しめという、ザ・浪人ゲーと言わんばかりの内容ですので、一次試験の合格率は浪人生で30%前後、現役生では20%前後で推移しており、浪人生のパフォーマンスが非常に高くなっています。このような、「一次試験は浪人有利・二次試験は現役有利」というパターンで最も有利に働くのは一浪生かと思われます。ギリギリ、二浪生も多めに見てもらえるかもしれません。

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