<傾向と対策>埼玉医科大学(医学部医学科)全体的に易問だが時間制限は非常に厳しい。明らかな生物有利傾向。

総評

  • 共通テストやセンター試験で見られるような易しい問題の出題が中心。制限時間の短縮など、時間制限がかなり厳しい医学部。
埼玉医科大学の入試は、全体的に共通テストやセンター試験で見られるような易しい問題が中心ですが、制限時間の短縮措置などもあり、時間制限はやや厳しい医学部と言えるでしょう。

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入試の基本情報と面接

  • R3から配点変更。英語配点が縮小。
  • 一次試験で小論文実施されるが、小論文の成績は二次試験で使用
  • 二次試験:面接(個人/10分程度)
  • R2は定員52名、正規合格64名、最終合格者129名(繰上げ含)
  • 学納金 3,700万(6年間)+a

 

国語 数学 理科 英語 面接 合計
100 200 100 400

最も定員が多い一般入試前期について説明します。

一次試験と同時に小論文試験も実施されますが、小論文の成績は二次試験の際に利用されます。一次試験に合格すると二次試験で、面接が実施されます。面接については個人面接で、凡そ10分程度の面接で概ね普通の内容が聞かれるようです。令和2年度の入試では、一般前期の定員52名に対し、正規合格64名、最終合格が129名出ています。ちなみに、学納金は6年間の合計で3700万円+諸経費となっており、私立医の中でも中々に高額の学費を要求されます。

数学の分析

<目標得点ライン>
満点100/H80/M65/L60/L-55/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン)

  • 試験時間60分(R3以降は50分)。大問4問構成
  • 全体的に標準問題。癖は少ない。
  • 60分なら時間ちょうどよい。50分だと不足。
  • 頻出は確率。次点で数II 微積と三角関数。
  • 対策:網羅系問題集でのインプット学習必須『チョイス』、『核心標準編』お薦め。小問集合の取捨選択のため過去問演習。
大問分野難易度評価
1小問集合A1/B1/C1**
2数3微積B**
3ベクトルB**
4確率B*

<試験問題の概要>
制限時間は60分の試験でしたが、令和3年度以降は50分に短縮されました。

大問4問構成です。数学では各大問に難易度評価をつけています。A,B,C,Dのアルファベットは問題そのものの難易度、*の数は所要時間の目安を示しています。

令和2年度では大問1の小問集合は易しいものと難しいものが混在しており、A1問、B1問、C1問の評価としています。

大問2の数3微積は標準的で難易度評価B,大問3のベクトルの問題も標準的な難易度で難易度評価B、大問4の確率も比較的シンプルな問題で難易度評価Bとしています。全体的に標準的な問題で、一部難しい設問もありますが、私立の割には癖の少ない普通の問題です。

<制限時間に関して>
制限時間は令和2年度では60分ですが、計算量が多い問題もあるものの、逆に少ない問題もあるため、トータルではちょうどよいくらいの分量でしょう。ただし50分だと足りなくなるので、大問1の小問集合などに難しい問題があったらさっさと飛ばして次へ行きましょう。

<頻出分野>
頻出分野は確率で、次点で数3微積と三角関数が頻出となっています。

<埼玉医科大数学の対策・インプット編>
 殆どの問題は標準問題になっているため、網羅系問題集を用いたインプット学習が最重要課題でしょう。

<埼玉医科大数学の対策・アウトプット編>
チョイス新標準問題集や理系数学入試の核心(標準編)などを薦めます。これに加えて、大問1の小問集合は問題の取捨選択が必要になるため、過去問演習は必要ですが、同様の傾向は他の私立医の入試問題にもよく見られるため、そちらで済ませても構いません。

英語の分析 

<目標得点ライン>
満点100/H90/M80/L75/L-70/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン)

  • 試験時間80分(R3は70分)
  • 大問6問構成
    《難易度評価》
    1 文法/-/A
    2 読解/約400語/A
    3 読解/約400語/B
    4読解/約200+100語/A
    5 読解/約500語/A
    6読解/約900語/A
  • 長文かなり易しく、70分でも苦労しないか。
  • 対策:オーソドックスなため特別な対策不要。併願校対策へ集中してOK。
大問種別ワード数難易度評価備考
1文法 A 
2読解約400A 
3読解約400B 
4読解約200+100A 
5読解約500A 
6読解約900A

<試験問題の概要>
令和2年度では80分の試験ですが、令和3年度では70分に短縮されています。

大問は6問構成です。英語も難易度評価をつけることにしています。A,B,C,Dのアルファベットがそれぞれ難易度を示しています。大問1は文法問題で、かつてのセンター試験より易しく、英検2級レベルです。

大問2から大問6までダラダラと長文問題が並びますが、3番が少し難しいのを除けば、全て平易な問題です。設問もひねりがなく、さくさく解けていけるでしょう。

<時間配分に関して>
時間に関しては、長文がダラダラ続くもののかなり易しいので、80分では少し余るくらいの受験生が多いように思います。

70分でも、英語が極端に苦手でなければそう苦労しないでしょう。埼玉医大の英語の対策としては、非常にオーソドックスな問題ですので、特別な対策は不要です。併願校の対策に集中してください。

化学の分析 

<目標得点ライン>
満点100/H80/M70/L60/L-55/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン )

  • 試験時間は理科2科目100分
    ※R3~理科2科目で90分
  • 大問3問、無機対策コスパよい。
  • 最後の高分子だけかなり重厚だが、他の大問は平易。
  • 試験時間45分では少し厳しいか。
  • 対策:『重要問題集』はA問題レベルでもOK.B問題レベルまでやれると難化に対応可能。
大問分野分量ABC
1理論標準60%40% 
2理論やや多30%70% 
3高分子やや多 25%75%

<出題分野の傾向>
令和2年度では、1番の無機の問題は、共通テストやセンター試験で出題されても良い基本的なレベルでした。

大問2は理論の問題で、これもまた平易な問題です。

大問3の高分子の問題は、これまでの平易な問題から急に難易度が上がり、重厚な問題が連続します。

<試験問題の概要>
令和3年度では理科2科目90分となり、それぞれで5分ずつ短縮されるということになります。

大問3問構成で、令和2年度では理論1問、無機1問、高分子1問のセットでしたが、最後の高分子は有機になっている年度も勿論たくさんあります。

<時間配分に関して>
令和2年度では理科2科目で100分なので、化学には50分割けることになります。時間に関してはちょうどよいくらいですが、令和3年度では45分に短縮されるため少し厳しい感じになります。

<埼玉医科大化学の対策>
重要問題集はA問題レベルでも合格点には到達しますが、余裕があればB問題レベルも解いておくと難化した問題にもある程度対応できます。

物理の対策 

<目標得点ライン>
満点100/H80/M60/L55/L-50/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン )

  • 試験時間は理科2科目100分。※R3~理科2科目で90分、大問3問
  • 標準~やや難の難易度。生物は易しいので、生物有利傾向。
  • 時間50分でもかなり厳しい。各大問の最後は積極的に飛ばさざるを得ないか。
  • 対策:『重要問題集』のA問題レベル、『名門の森』★レベルまでは取り組みたい。問題の癖は少ないため、何年分も過去問をやりこむ必要はないか。
大問種別分量ABCD
1力学やや多30%30%40% 
2電磁気やや多 100%  
3多い 30%70%

<試験問題の概要>
大問3問構成で、力学1問、電磁気1問、残り1問は波動か熱が多いですが原子になっていることもあります。

令和2年度では、大問1の力学の問題は、解ける問題と捨てる問題がはっきりしており、あまり差がついていないと思われる大問です。大問2の電磁気については、同じような考え方を何度も使うため、その考え方をきちんと理解できたかどうかで大きく点差のついた問題でした。

大問3の波動の問題は全体的に難しいものの、途中にやさしい問題もあるので、そういう問題を見つけて食らいつきたいところです。

<時間配分に関して>
令和2年度では理科2科目で100分なので、化学には50分割けることになります。令和3年度では理科2科目90分となり、大幅に短縮されました。

令和2年度でも50分しか制限時間が無いので、かなり厳しくなっています。各大問の最後の設問などは積極的に飛ばさざるを得ません。令和3年度以降では45分に短縮されるので、時間はよりシビアになります。

<埼玉医科大物理の対策>
重要問題集A問題や、名問の森の★レベルまでは取り組みたいところです。時間配分こそシビアですが、問題そのものの癖はあまりないので、過去問演習を何年分もやる必要はないでしょう。

生物の対策

<目標得点ライン>
満点100/H85/M70/L65/L-60/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン ) 

  • 試験時間は理科2科目100分。※R3~理科2科目で90分
  • 生物の基礎的な理解を問う良問が多い。そこまで難しくない。物理は難しいので、生物有利傾向。
  • 時間50分でギリギリ。45分は足りなくなるか。
  • 対策:『基礎問題精講』等の標準的な問題集でほとんど大丈夫。遺伝対策に『大森徹の生物遺伝問題の解法』がおすすめ。
大問分野分量ABCD
1神経標準60%40%  
2進化標準25%55%20% 
3遺伝多い10%35%55% 
4分子生物標準 80%20% 
5酵素やや少60%20%20% 
6生態標準70%30% 

<試験問題の概要>
大問1は神経の問題で、基礎的な理解を問う良い問題ですが、是非とも満点を取ってほしい問題です。

大問2は進化の問題ですが、殆どの設問が勉強をしてなくても正答できる問題で、これもまた高得点を狙える大問です。

大問3は遺伝の問題で、よくあるネタですが誰でもできる問題ではないので、差のついた問題となったと思います。

大問4は分子生物の問題で、若干のパズル要素はありますがそこまで難しい問題でもありません。

大問5は酵素の問題で、後半の問題は若干高校生には酷ですが、前半はなんとか拾っていきたい設問です。

大問6は代謝の問題で、殆どよくある問題なのできちんと正答したいところです。

<出題分野>
埼玉医大生物は分野の偏りが殆どありません。

大問数が多く、生態や進化などを含む様々な分野から満遍なく出題されています。植物生理だけは控えめですが、全くないわけでもありません。

<時間配分に関して>
時間については、分量がかなり多いので50分でも結構ギリギリの受験生は多そうです。45分では、間に合わなくなるかもしれません。

<埼玉医科大生物の対策>
基礎問題精講などの標準的な問題集で殆ど大丈夫ですが、意外にも遺伝の問題が良く出ており、そこそこの難易度なので、遺伝対策が必要です。「大森徹の生物 遺伝問題の解法」などが鉄板の問題集なので、余裕があれば是非取り組んでおきましょう。

埼玉医科大のその他の入試情報

  • 《一般選抜後期》
  • 定員20名、選抜方式は前期と同じ。
    《共通テスト選抜》
  • 定員5名
  • 配点:国200,英200,数200,理200
  • 二次試験:小論文+面接
  • R2の一次合格ライン:80%合格まで至るには85%程度まで必要か。
    《学校推薦選抜》
  • 指定校枠(5名)埼玉医大指定校出身/一浪まで/評定3.8
  • 一般公募枠(14名)一浪まで/評定4.0
  • 埼玉県地域枠(19名)一浪まで/評定 指定校3.8、その他4.0
  • 地域枠は6年間で総額1,440万の奨学金貸与卒後9年間のキャリア縛りあり
  • 特別枠(2名)》
  • 民間英語試験ハイスコア or 科学オリンピック
  • いずれの枠も適性検査(学力試験)+面接
  • 数20,理40,英20,小論文20

<一般選抜後期>
定員20名で、選抜方式は前期と完全に同じです。問題の傾向も同じようなもので、合格の難易度も同じような感じです。

<共通テスト選抜>
次に共通テスト選抜です。定員5名で、配点は国語200、英語200、数学200、理科200で社会がありません。二次試験は小論文と面接があります。令和2年度での一次合格ラインの得点率は80%ですが、実際に合格までいきつくには85%くらいは欲しいところです。

<学校推薦選抜>
次に学校推薦選抜です。指定校枠で5名、一般公募枠で14名、埼玉県地域枠で19名、特別枠で2名の枠があります。

指定校枠は埼玉医大の指定校出身者で一浪までOK、評定は3.8必要です。一般公募枠は一浪までOK,評定は4.0必要です。埼玉県地域枠は一浪までOK、評定は指定校であれば3.8、その他の学校であれば4.0必要です。

埼玉県の地域枠は奨学金と紐づけられており、埼玉県から6年間総額で1440万の貸与があります。もちろん、卒後9年の縛りがあります。

<特別枠>
最後に特別枠ですが、民間英語試験のハイスコア、または科学オリンピックの実績が必要です。

英語試験はかなり高いスコアを要求されますが、科学オリンピックはそこまででもない印象でした。推薦入試で実施される試験はどの区分でも適性検査という名の学力試験を課され、数学20,理科2科目で40,英語で20,小論文で20です。面接が実施され、最終的な合否が決定されます。

埼玉県の地域医療

  • 人口当たり医師数は日本で最も不足。看護師数、病床数も。
  • 拠点病院が分散。偏在は目立たないが、医療資源自体が極めて不足している。
  • 今後高齢化によりさらに状況悪化の見込み。地域密着型の医療機関へのニーズが増大する。
  • 診療科はどの科も足りていないが、特に内科や整形外科の不足が深刻。

埼玉県の人口当たりの医師数は日本でも最も不足しているといってよい状況で、医師数のみならず、看護師数や病床数も極端に不足しています。

拠点病院は分散しており、偏在の問題こそは目立たないものの、トータルの医療資源が極めて不足しているため状況は非常にシビアです。現段階でも非常に厳しい状況にある埼玉県ですが、今後更に状況は悪化すると考えられています。

その大きな要因は高齢化の進行です。今まで比較的若い住民が多かった埼玉県も、徐々に高齢化が進み、埼玉県の医療需要は今後さらに増大していくと予想されています。

また高齢の患者さんは電車で都内の医療機関に通院、ということも難しくなっていくため、地域に密着した医療機関のニーズが増していくことでしょう。

診療科偏在に関しては、結局どの科も足りていないのですが、特に足りていないのが内科や整形外科となっています。

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