総評
- 数学、化学で極端に時間の制約が厳しく、問題の取捨選択のために、多めの過去問演習が必要になる
- 他科目は基本的な国公立大学対策の延長線上で十分対応できる
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入試の基本情報と面接
- 私立大学で、共通テスト利用入試なし
- 試験形式はやや複雑なので注意
- 出身都道府県ごとに採用があり、それぞれ2~3名の定員
- 第一次試験(筆記)
数学25点/理科50点/英語25点 - 第一次試験(筆記)の合格者に対して第1次試験(面接)を実施
- 各都道府県10名弱が第1次試験合格か
- 第2次試験が自治医大@栃木県で実施。記述型の筆記試験と面接
- 第2次試験(筆記)
数学12.5点 試験時間30分
英語12.5点 試験時間30分
※令和3年度からの導入。かなりのスピードテストになる可能性。 - 小論文試験は令和3年度以降廃止
- 面接(第1次試験)は個人面接、面接(第2次試験)は個人+グループ
- 個人面接は、基本的な質問に加え、「地域医療への貢献」を確認。練習目的の受験生は学科優秀でも×
- グループディスカッションは40分前後。医療系のテーマについて議論。ただし合否はほとんど学科で決定の噂
- 都道府県により難易度に大きな差
- 今回の分析は
「各都道府県の主要な大学の医学部より、自治医科大学の入試難易度は少し易しめになっている」と仮定し、都道府県ごとの目標得点を設定
High ⇒ 東京、大阪、神奈川等大都市圏
Middle ⇒ その中間
Low ⇒ 島根、秋田、沖縄等地方圏 - 合格最低点などは非公開のため目安程度に
国語 | 社会 | 数学 | 理科 | 英語 | 面接 | 合計 | |
一次 | – | – | 25 | 50 | 25 | – | 100 |
二次 | – | – | 12.5 | 12.5 | – | 25 |
<都道府県ごとに定員が設定>
出身の都道府県ごとに2~3名の定員があり、各都道府県で概ね10名弱が一次試験である学力試験で合格します。
<栃木で二次試験(一次は各々の都道府県)>
その後、二次試験が栃木県の自治医科大学で実施され、面接と小論文が課されます。面接は概ね地域医療への貢献を確認され、入学の意思がなく、練習で受験したことが明らかな学生は、学科試験の成績がよくても不合格になることがあります。都道府県により、入学難易度に大きな差があります。
<目標得点ラインの目安>
今回の分析では、「各都道府県の主要な大学の医学部より、自治医大の入学は少し易しめになっているのではないか」という仮定の下で、東京・大阪・神奈川など大都市の難関の都道府県の目標点数をHライン、島根、秋田、沖縄などといった、地方の中でも比較的難易度の低いであろう都道府県の目標点数をLライン、その中間をMラインとして、予想される点数を設定しています。この大学では合格最低点なども公表されていないため、ラインはあまり正確ではないかもしれません。あくまで目安としてご覧ください。
数学の分析
<目標得点ライン:忘れずに書き込んでください>
満点25/H21/M18/L16
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン)
- 25問、試験時間80分。10個の選択肢から選ぶマーク式
- 難易度は易しい~標準レベル
- 基本的な計算問題、典型問題を誘導なしで解かせる問題が多い。連問もあり。
- 分野の偏りはほとんどなし
- ボリューム多い(1問当たり3分強の時間)問題の取捨選択が非常に重要
- 対策:基礎的、標準的な問題集トレーニング。その後はなるべく多く自治医大の過去問で時間配分、類題のトレーニングが最重要。
<試験問題の概要>
25問の構成で、制限時間は80分の試験です。10個の選択肢の中から正しい選択肢を選ぶマーク式の形式をとっています。全体的な難易度は易しいから標準レベルです。基本的な計算問題や、教科書傍用問題集に乗っているような典型問題を、誘導なしで解かせるような問題が多いです。また、連問になっている問題もあり、これは標準レベルの難易度で、頻出パターンの出題が多くなっています。
<頻出分野>
分野の偏りはほとんどなく、数1A2B、数3の様々な分野からまんべんなく出題されています。
<時間配分について>
制限時間80分の試験としては、たいへんボリュームの多い試験です。1問あたり3分強しか時間がありませんが、計算量の多い問題や解答に至るまでに作業量が多くなる問題も多いため、そのような問題を3分以内で解くのは極めて難しいです。問題の取捨選択がたいへん重要で、ぱっと見で反射的に解答の流れが思い浮かぶ問題から手を付け、解答に詰まる問題は後回しにする必要があります。また連問形式の問題は、解法が分かればその後はすぐに解答できるので、比較的コストパフォーマンスが良いと言えます。
<自治医大数学の対策・インプット編>
問題の難易度そのものは平易で、センター試験が8割~9割とれ、数3の典型的な問題が解けるのであれば、自治医大の問題は、時間さえあれば全て解ききることが出来る実力が恐らく備わっています。このため、普段の演習としては、どこの大学を目指すにしても行うような基礎的な問題集や標準的な問題集のトレーニングで十分対応できます。しかしながら、時間配分はたいへんシビアです。
<自治医大数学の対策・アウトプット編>
自治医科大学の過去問演習が、その後の対策として最重要と言えます。複数の年度で類似するテーマが出題されていることも多いので、本気で合格を目指すのであれば、なるべく多めの過去問演習を行い、解けそうな問題の取捨選択のトレーニングをしたり、類題の研究を行ってください。
英語の分析
<目標得点ライン>
満点25/H22/M18/L15
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン)
- 試験時間60分、大問3問。3問とも長文の出題。
- 長文の内容は比較的平易で設問もマーク式のため、時間は余るか
- 満点近い点数も狙えるが、一部語彙力が求められる設問あり
- 対策:語彙力強化のための勉強はしっかり。過去問を何周もする必要はないか。
<試験問題の概要>
60分の試験で、大問は3問です。3問とも長文です。時間が厳しいようにも見えますが、長文は比較的平易で、設問もマーク式なので、意外と時間は余ります。
<対策に関して>
人によっては満点に近い点数も狙っていけますが、一部の設問は、語彙力がきちんと備わっていないと正答できないので、語彙の勉強はしっかり目にやっておいた方がいいように思います。あまり何周も過去問演習を行う必要はないかもしれません。
化学の分析
<目標得点ライン>
満点25/H20/M17/L15
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン)
- 試験時間80分(理科2科目)
- 25問構成。理論、無機、有機、高分子バランスよく出題
- 問題ごとの難易度の傾斜が激しい。
- 40分ですべて解き切るのは難しい。明らかに重い問題は適当にマークして次へ。
- 対策:無機、高分子でちょっとしたマニアックな知識を問う出題あり。試験直前に資料集を眺めておくと出題されるかも
<出題分野の傾向>
25問の構成で、理論・無機・有機・高分子がバランスよく出題されています。
<試験問題の概要>
恐らく1問1点なのですが、問題ごとの難易度の傾斜は激しく、即答できる知識問題から、かなり多くのステップを踏まないと正答までいきつかない問題まで様々な問題があります。
<時間配分に関して>
40分の試験で全て解ききるのはかなり難しいセットになっています。問題をパッと読んで、明らかに重そうな問題は適当にマークをして次に進みましょう。
<自治医大化学の対策>
無機や高分子でちょっとマニアックな知識を問われることがあります。試験直前にでも、資料集でこれらの分野の知識を眺めておれば、眺めたところが出題されるかもしれません。
物理の対策
<目標得点ライン>
満点25/H25/M23/L20
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン)
- 試験時間80分(理科2科目)
- 教科書レベルの基本的な問題のみ
- 40分しかないため、スピードを意識して解いていく必要あり
- 原子分野を含むすべての分野から出題。苦手分野があると命取りになる可能性。
- ケアレスミスも合否に大きく影響か
- 正確さが要求される試験
<出題分野の傾向>
原子分野を含むすべての分野からまんべんなく出題されています。苦手分野があると、基本問題すら答えられず、命取りとなる可能性もありますので、必ず苦手をつぶしてから試験に臨みましょう。
<試験問題の概要>
基本的な問題ばかりで、教科書レベルの問題しか出題されていません。
<時間配分に関して>
とはいえ時間は40分しかないため、スピードを意識して、さくさく解いていく必要があります。
<注意事項>
またケアレスミスなどがあるとそれも合否に大きく影響します。正確さも要求される試験と言えます。
生物の対策<75分・4問>
<目標得点ライン>
満点25/H22/M20/L18
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン)
- 試験時間80分(理科2科目)
- 25問構成。生態・進化を含む幅広い分野から出題。
- 生態は頻出。凝った設定の考察問題も多い。植物生理が辛うじて出題頻度少し低めか。
- 半数近くが考察問題でボリュームはかなり多い、旧センター試験の時間を圧縮したイメージ。
- 対策:共通テスト対策がそのまま自治医大対策。試験直前に過去問周回の実施
<出題分野の傾向>
25問構成で、生態・進化を含む幅広い分野から出題されています。むしろ生態は医学部オンリーの試験にも関わらず、頻出で、結構凝った設定の考察問題も多いです。植物生理が辛うじて出題頻度が少し低めかもしれません。
<試験問題の概要>
制限時間が40分しかないのに、半数近くが考察問題になっており、典型でない問題も含まれているため、ボリュームはかなり多い試験と言えます。旧センター試験を時間を短縮して実施したようなイメージです。
<自治医大生物の対策>
対策としては共通テスト対策がそのまま自治医大対策になりますので、試験直前に過去問の周回を行えば十分でしょう。
自治医科大学卒業生の卒後キャリア
- 貸し付けられた奨学金は、卒業後、出身の都道府県知事に指定された病院で9年以上働かなければ、返還免除とならない
- 卒業後2年の前期研修は、出身都道府県の臨床研修指定病院での研修のため、比較的大きな病院での研修
- その後、4~5年へき地医療に従事する必要
- 専門医取得、などの理由で必要に応じて当該都道府県の臨床研修指定病院や、自治医大の附属病院で2年間働くことも
☆★詳細はHPをチェックしてください★☆
自治医科大学は多額の奨学金を貸し付け授業料に充てるという形式をとることで、事実上学費が無料となっています。しかしながら、この奨学金は出身都道府県で、知事に指定された病院で9年以上働かねば免除となりません。卒業後2年の前期研修は、出身都道府県の臨床研修指定病院での研修になるので比較的大きな病院での研修になりますが、その後は4~5年のへき地医療に原則として従事する必要があります。とはいえ恐らく、専門医取得等の理由で、必要があれば、その都道府県の臨床研修指定病院や、また、自治医大の附属病院で2年間働くこともあるようです。
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