総評
- 国公立らしい配点。理科の傾斜が無く現役有利配点となっている。
- 数学・英語は標準的な問題だが、英語の採点が厳しいため、英語が得意でも点数が伸び悩みやすい。
- 理科の難易度変動は激しいが、頻出難問の経験値で差がつく浪人有利な問題。
総合すれば、配点や入試制度は現役有利、理科の問題の中身が浪人有利となっており、その結果、現役も多いですが多浪生もそこそこいる、という多様性に富んだ年齢構成となっているようです。
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入試の基本情報と面接
- 《配点(一般入試前期)》数学200点、理科200点、英語200点
- 面接は個人面接20分+MMI5分×2回
- MMI=マルチプル・ミニ・インタビューのこと。MMIでは様々質問されるため練習が必要
- R2は定員80名、正規合格者245名、繰上げ含む最終合格者256名
- 学納金 2,980万(6年間)+ α
最も定員が多い一般入試前期について説明します。
<面接は個人面接とMMI>
面接については個人面接とMMI(マルチプル・ミニ・インタビュー)の複合形式で、個人面接はやや長めのもので20分程度、MMIに関しては5分程度の面接が2回です。
個人面接では通常の面接で聞かれがちな内容が聞かれますが、MMI、マルチプルミニインタビューにおいては、様々な質問がなされるので、ぶっつけ本番では対応できる受験生も少ないので練習が必要でしょう。
<正規合格多いが、繰り上げはあまり出さない。学費は平均的。>
令和2年度の入試では、一般前期の定員80名に対し、正規合格者が245名、最終合格者が256名出ています。正規合格をたくさん出す代わりに、繰り上げ合格はあまりないようですね。ちなみに、学納金は6年間の合計で2980万円+諸経費と、私立の中では平均的な学費と言えるでしょう。
数学の分析
<目標得点ライン>
満点200/H150/M120/L105/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン)
- 試験時間100分、大問3問
- 標準レベルの問題が大半だが、一部発想力、計算力を要求する問題も出題。
- 小問集合に躓かなければ時間は余裕あるか。難しいと思ったら飛ばしていく。
- 頻出分野は不明確。ⅠAⅡB中心が特徴的。
- 対策:網羅系問題集でのインプット学習必須アウトプットは易しめ問題集からスタート。
『やさしい理系数学』レベルも可
大問 | 分野 | 難易度評価 |
1 | 小問集合 (9問) | A4/B3/C2**** |
2 | 確率 | B** |
3 | 二次曲線 | B*** |
<試験問題の概要>
制限時間は100分の試験で、大問3問構成ですが、大問1は9問の小問集合となっています。
令和2年度では大問1の小問集合は、非常に平易な問題もあれば難易度が高い問題もあり様々です。A評価4問、B評価3問、C評価2問としました。小問の後ろの方にCがあるわけでもないので、難しい問題だと思ったら思い切って飛ばして進めましょう。
大問2は確率の問題で、計算こそやや煩雑ですが考え方はあまり難しくなく難易度評価B、大問3は二次曲線の分野を総合的に問う標準的な問題で難易度評価Bとしています。
全体的な難易度は標準レベルの問題が大半を占めますが、所々に発想力や計算力を要求する問題が含まれています。
<制限時間>
制限時間は100分ですが、大問1の小問集合の難しい問題でつまづかなければ時間に余裕が出るでしょう。決して満点を狙いに行く試験ではありませんので、大問1に取り組む際には、難しいなと思った問題は飛ばしていきましょう。
<頻出分野>
頻出分野ははっきりしていませんが、数3の出題がひかえめで、数1A2B中心の出題となっているのが特徴的でしょう。
<藤田医科大数学の対策・インプット編>
大問1の半数程度の問題が教科書レベルの典型問題、大問2や3に関しても地方国公立で出題されるような標準問題が大半ですので、網羅系問題集を用いたインプット学習は必須でしょう。
<藤田医科大数学の対策・アウトプット編>
アウトプット演習に関しては易しめの問題集、理系数学入試の核心(標準編)やチョイス新標準問題集などから始め、数学でアドバンテージを取るならやさしい理系数学などに取り組んでも構いません。数1A2B中心の出題傾向であることを踏まえ、理系数学の良問プラチカ1A2Bなども悪くないチョイスです。ちなみにプラチカの3はかなり難しいので手を出してはいけません。
試験本番では大問1で易しい問題を見抜いてさくさく解いていき、余った時間で大問2と3にじっくり取り組む方針でやると得点も安定するでしょう。
英語の分析
<目標得点ライン>
満点200/H140/M100/L90/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン)
- 試験時間90分、大問5問
《難易度評価》
1 文法/-/A
2 並び替え/-/B
3 読解/約800語/B
4読解/約900語/C
5 和文英訳/-/B - 時間は「得意な人なら完走できる」程度か。
- 対策:記述問題対策がカギ。国立志望なら、
特化した対策は原則不要だが、私立志望なら丁寧な対策が必要。和文英訳も同様。
大問 | 種別 | ワード数 | 難易度評価 |
1 | 文法 | A | |
2 | 並び替え | B | |
3 | 読解 | 約800 | B |
4 | 読解 | 約900 | C |
5 | 和文枝訳 | B |
<試験問題の概要>
90分の試験で、大問は5問です。
第1問は文法問題で、センターより易しく、英検2級などで出てきてもおかしくないレベルです。
第2問は並び替え問題で、こちらに関してはセンター試験と同等レベルで標準的です。
第3問はマーク式の長文問題で、語彙レベルは標準、内容のレベルも標準です。設問タイプは空所補充や内容一致問題などがありますが、前半の設問こそふつうの問題ですが、後半の設問になるにつれて選択肢を注意深く吟味しないといけない設問が増えてきます。
大問4の記述式の長文問題では語彙レベルは標準的ですが、内容レベルはやや難となっています。設問タイプは内容説明が主になっていますが、文章の色々なところから要素を抜き出してまとめる必要があり、記述式問題の練習をしていないとあまり得点は伸びないでしょう。
第5問は和文英訳で、短文の和文英訳が4問となっています。例文暗記の延長線上である程度は対応できる程度の難易度です。
<時間配分に関して>
時間に関しては得意な人なら完走できるか、といった感じで、時間が足りない受験生は、記述式の設問に手間取っている可能性があるので、テンポよく記述式の設問に解答できるようにトレーニングしていきましょう。
<藤田医科大英語の対策>
藤田医大の英語の対策としては、やはり記述式の問題の対策でしょう。国公立が第一志望の受験生であれば対策は原則不要ですが、私立メインの受験生が藤田医大を受ける場合は丁寧に対策する必要があります。
また和文英訳は例文暗記の延長線上でどうにかなるので、国公立メインの受験生はほぼ対策不要ですが、私立メインの受験生であればこれもまた別枠で対策が必要になるかもしれません。
化学の分析
<目標得点ライン>
満点100/H75/M50/L45/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン )
- 試験時間120分(2科目)大問5問、理論・有機は毎年出題
- 標準~やや難だが、とにかく時間が足りない。
- 対策:『重要問題集』はB問題までトレーニング。頻出難問の経験値で差がつく問題。
大問 | 分野 | 分量 | A | B | C |
1 | 理論 | やや多 | 100% | ||
2 | 高分子 | 標準 | 25% | 50% | 25% |
3 | 理論 | 標準 | 40% | 60% | |
4 | 理論 | やや多 | 40% | 60% | |
5 | 有機 | 多い | 45% | 45% | 10% |
<出題分野の傾向>
令和2年度では、1番の理論の問題は小問集合に近い形となっていますが、1問1問は標準問題ですが決して軽い問題ではなく、粒ぞろいの問題が並んでいます。
大問2に高分子の問題が出題され、後半の設問はいわゆる難問頻出系で、解いた経験のある浪人生などはサクサク解けたでしょう。
大問3で再び理論に戻りますが、これもまた難問頻出系の問題で、解いた経験があるかないかで大きく差の出た問題だったと思います。
大問4はまた理論の問題で、最後まで完答するにはやや難しい問題でしょう。
大問5は有機の問題で、前半部は軽めの問題が多いですが後半部はやや重めの問題となっています。
<試験問題の概要>
大問5問構成で、令和2年度では理論3問、有機1問、高分子1問のセットでした。理論と有機は比率こそ様々ですが、毎年コンスタントに出題されています。
高分子に関しても殆どの年度で出題されていますが、無機についてはガッツリ出る年もあれば出ない年もあります。
<時間配分に関して>
全体的な難易度は標準~やや難レベルですが、時間がとにかく足りません。どのレベルの問題を飛ばすべきかは、その人の化学の実力によって異なるでしょうから、過去問演習を通して時間配分の練習は必要になってくるでしょう。
<藤田医科大化学の対策>
重要問題集は是非B問題レベルまで取り組みたいところです。頻出難問の経験値で、大いに差がつく内容です。現役生が地頭だけで何とかするには、時間が足りません。
物理の対策
<目標得点ライン>
満点100/H85/M65/L55/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン )
- 試験時間120分(2科目)。大問4問構成。
- 難易度は標準~やや難。
- 時間厳しいが、標準問題見抜けば完走可能。やや難の問題は飛ばしながら進めたい。
- 対策:『重要問題集』のB問題レベル、『名門の森』のレベルまでは取り組んでおきたい。
その上で過去問演習も多めに実施。
大問 | 種別 | 分量 | A | B | C |
1 | 力学 | 標準 | 40% | 20% | 40% |
2 | 熱 | 標準 | 100% | ||
3 | 電磁気 | やや多 | 50% | 30% | 20% |
4 | 力学 | やや多 | 20% | 60% | 20% |
<出題分野の傾向>
令和2年度では、大問1の力学の問題は、解ける問題とやや難レベルの問題がはっきりしており、物理の理解に加えて、数学的な考え方も必要な問題が混じってきます。
大問2の熱については、典型問題なのでなんとか全問拾っていきたいところです。
大問3の電磁気の問題は、前半は典型問題ですが後半は難問で、飛ばしてしまった方が賢明かもしれません。
最後の大問4は再び力学の問題で、物理というよりは数学の問題に近く、式変形の仕方に工夫が必要です。
前半が解けないと後半も解けなくなっており、大いに差がついた大問だったでしょう。時間についてはやや厳しいですが、標準的な問題もあるので、そういう問題だけを見抜いて拾っていけばどうにか完走できるでしょう。
<試験問題の概要>
大問4問構成で、力学2問、電磁気1問は固定で、熱・波動・原子のうちから1問出題というパターンとなっています。
<藤田医科大物理の対策>
重要問題集B問題や、名問の森の★★レベルまでは取り組みたいところです。その上で、シビアな時間配分や、数学的な処理を必要とする独特な試験問題に慣れるためにも、過去問演習はやや多めに行っておきたいところです。
生物の対策
<目標得点ライン>
満点100/H85/M70/L60/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン )
- 試験時間120分(2科目)、大問4問。分野の偏りあまりなし。
- 概ね標準的だが、一部分野(体内環境など)でマニアックな知識問題の出題あり。
- 時間ほどほど。浪費しなければ余裕あり。
- 対策:『基礎問題精講』等の標準的な問題集に加え、網羅性の高い問題集も取り組みたい。
体内環境対策に『生物用語の完全制覇』も。遺伝はあまり出題なく、原則対策不要か。
大問 | 分野 | 分量 | A | B | C | D |
1 | 神経 | 標準 | 40% | 40% | 20% | |
2 | 生態 | 標準 | 75% | 12.5% | 12.5% | |
3 | 分子生物 | やや多い | 35% | 40% | 25% | |
4 | 動物の行動 | 標準 | 30% | 40% | 15% | 15% |
<試験問題の概要>
大問1は神経の問題で、ややマニアックな分野ではあるものの標準的な問題でした。
大問2は生態の問題で、共通テストで出題されてもいいレベルの平易な問題でした。
大問3は分子生物の問題ですが、前半は非常に平易な問題ですが、後半はかなり難しいパズルになっており、あまりこのような問題で時間を浪費しないようにしたいところです。
大問4は動物の行動に関する問題で、概ね標準的な問題でそこそこ差がついた問題かと思われます。
<制限時間>
時間についてはほどほどくらいで、変なパズル的な問題で時間を浪費しなければ化学に時間を割くこともできます。
<出題分野の傾向>
大問は4問構成です。藤田医大生物は分野の偏りがあまりありません。ただし、医学系分野以外から出題する場合は生態が多く、植物生理や進化と系統からの出題があまりありません。
また、体内環境から出題される場合はやや難易度の高い問題が出題される傾向があります。理科については小問ごとの難易度評価をつけ、その結果を表にまとめています。
<藤田医科大生物の対策>
基礎問題精講などの標準的な問題集に加え、生物重要問題集や大森徹の最強問題集など、網羅性の高い問題集にもぜひとも取り組みたいところです。
今年度こそ出題はなかったものの、体内環境に関しては知識問題がマニアックなところまで聞かれることから、同じくマニアックな知識問題集である「生物用語の完全制覇」なども、分野を絞ってでいいのでこなしておきたいところです。遺伝についてはあまり出題が無く、原則として対策は不要でしょう。
藤田医科大のその他の入試情報
- 《地域枠》
一般入試 前期・後期に各5名の定員。通常の一般枠と併願可能 - 愛知県出身者/二浪まで/奨学金貸与/卒後9~10年間愛知県内の病院勤務が必要。
- 藤田医大の貸付と愛知県の貸付の二種類
藤田医大:貸与総額900万円、愛知県:貸与総額1,110万円
※再掲:学納金2,980万円
《一般入試 後期》 - 定員13名(一般枠8名、地域枠5名)
- 配点は一般入試前期と同じ。傾向も似ている。
- 前期同様、面接試験もある。
《共通テスト利用入試》 - 定員 前期10名、後期5名
- 配点(前期・後期とも同じ) 国100、200、数200、理200 +面接50
- 後期のみ、上記に加えて総合問題 300
- R2の合格得点率は86~87%
《ふじた未来入学試験(いわゆるAO入試)》 - 定員15名、専願制。(ただし国公立医学部に前期試験または推薦で合格した場合は辞退が認められる。)
- 一浪までOK。卒後、藤田医大または関連病院で5年間勤務する必要あり。
- 英100、数100、小論文+面接+「課題」200
※面接:個人面接+グループディスカッション
※「課題」:20~30分の講義を聞いた後、
講義内容に関する論述問題に解答する。
<地域枠は一般前期・後期に設定>
はじめに地域枠について説明します。地域枠は一般入試の前期と後期にそれぞれ定員が設定され、前期でも後期でも5名の定員があります。通常の一般枠と併願できます。愛知県出身者で2浪までの縛りがあり、奨学金を貸し付ける形式で卒後9年または10年は愛知県内の病院につとめる必要があります。
貸付は藤田医大からのものと愛知県からのものがあり、藤田医大からのものは貸与総額900万、愛知県からのものは貸与総額1110万となっています。(ちなみに繰り返しになりますが、学納金は2980万円です。)
<一般後期>
定員13名で、内訳は一般枠8名、地域枠5名となっています。一般枠の8名に関して、3名は必ず現役生としています。配点は一般前期と同じで、試験の傾向もだいたい似たような感じです。面接も普通にあり、前期と同様です。
<共通テスト利用入試(前期・後期)>
前期で10名、後期で5名の定員があります。令和2年度では、前期の選抜では正規合格10名ですが最終合格者は22名で、繰り上げも積極的に出しているようです。しかしながら後期に関しては正規合格すら4名となっていて、繰り上げはありません。共通テスト選抜は前期・後期共にほぼ配点は同じで、国語100、英語200、数学200、理科2科目で200となっています。社会はありません。これに加えて面接が50点あり、ここまでは前期と後期で共通する部分です。後期ではこれに加えて総合問題なるものに300点の配点があり、この中身は小論文試験です。日本語または英語の課題文に対して、その要約や自分の意見をかなりの分量で記述させるものとなっており、結構な点差がついていそうです。小論文のトレーニングをきちんとしている受験生であれば、最後の大逆転があるかもしれません。
令和2年度の共通テスト利用入試で必要だった得点率は86~87%となっており、国公立医学部志願者であればそこそこくらいの得点率で合格できる水準と言えます。
<ふじた未来入学試験(AO入試)>
最後にふじた未来入学試験を紹介します。いわゆるAO入試です。定員15名の専願制ですが、国公立の医学部に前期試験又は推薦入試で合格した場合は辞退が認められるというちょっぴり良心的な制度となっています。それゆえ、繰り上げ合格もきちんと出ています。一浪までOKで、卒後藤田医大または関連病院で5年の縛りがあります。とはいえ奨学金の貸し付けなどはありません。
配点は英語100、数学100、小論文+面接+「課題」なる科目を併せて200点という配点となっています。英語と数学は前期試験の内容とほぼ変わりません。ただ数学は前期試験以上に数3分野からの出題が控えめになっています。
面接は一般入試とは少し異なり、個人面接に加えグループディスカッションも課されます。二次試験で「課題」なる科目が課されるのですが、この中身は20~30分の講義を聞いた後で、講義内容に関する論述問題に解答するというもので、特殊な形の小論文試験と言えます。総合すると、学科試験は理科がなく英語と数学のみ、面接や小論文の比重も大きい、人物重視の試験と言えるでしょう。
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