総評
- 私立にしては英数重視の配点であり、現役生が有利になるような施策がある
- 理科も軽量対策で合格点に到達可能。現役生に有利に働きやすい大学
私立にしては英数重視の配点であり、現役生が有利になるような様々な施策があること、また理科も軽量対策で何とか合格点に到達することから、現役生にやや有利に働きやすい大学と言えるでしょう。どちらかというと浪人回数が多くなった受験生が渋々目指し始める大学の印象はありますが、目指すなら早めに目指す方が何かと有利に働きます。
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入試の基本情報と面接
- 《配点(一般入試A)》数学150点、理科200点、英語150点、小論文50点、調査書・面接100点
- 面接は10分程度で一般的な内容。
- 小論文30点、調査書・面接75点程度が平均点か。合計105点想定で計算。
- R2では一次合格435名も、正規合格142名、繰り上げ合格82名。
- 学納金 3700万(6年間)+α
国語 | 数学 | 理科 | 英語 | 小論/面接 | 合計 |
– | 150 | 200 | 150 | 50/100 | 650 |
様々な配点や入試制度がありますが、最も定員が多いのは一般入試Aなので、この一般入試Aに関して説明します。
<一般入試Aの配点>
配点は私立にしてはやや英数重視な配点で、数学150、理科2科目で200、英語150、小論文で50点で、調査書・面接点で100点となっています。面接については10分程度の面接で概ね一般的なことが聞かれるようです。恐らくは小論文で30点程度、調査書と面接点で75点程度が平均点で、共に±10%くらいの変動があるのではないかと予想します。
<得点シミュレーションの前提>
今回の得点シミュレーションでは小論文と面接点を併せて105点、7割取れたとして計算します。
<一次合格の半分くらいしか最終合格しない>
令和2年度の入試では、一般入試Aの一次合格は435名出ていますが、正規合格者は142名、繰り上げ合格者は82名ということで、一次合格になっても必ずしも入学できるわけではないことに注意してください。
<学納金はそこそこお高め>
ちなみに、学納金は6年間の合計で3700万円になります。また、これに加えて後援会費など種々の費用が追加されます。
数学の分析
<目標得点ライン>
満点150/H120/M90/L80/L-70/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン)
- 大問3問、試験時間90分
- 難易度は標準~やや難
- 頻出は大問1に三角関数、場合の数、整数。大問2・3に図形、数III 微積、複素数平面
- 対策:大問1の得点力養成のため、網羅系問題集で解法インプットが必須
大問 | 分野 | 難易度評価 |
1(1) | 数3微積 | C* |
1(2) | 三角関数 | B* |
1(3) | 場合の数 | B* |
2 | 複素数平面 | C*** |
3 | 不等式 | C** |
<試験問題の概要>
大問3問構成で、制限時間は100分の試験です。大問1に独立した重めの小問が3題あるので、事実上大問5問構成と考えても良いでしょう。大問1の配点は令和2年度では配点は記載されていませんが、さらに昔の過去問には配点が記載されており、その配点から全体の約半分弱程度あると予想しています。
全体的な難易度は標準~やや難です。
大問1は標準的な問題も多く、ここできちんと点数を拾っていかないと合格点に到達しません。大問2は複素数平面の難易度評価C、大問3は不等式の応用で難易度評価Cと設定しました。いずれもやや非典型的な設問が含まれており時間のかかる設問になっています。
繁雑な計算は少なく、難易度の割には意外と時間の余裕は出てきます。ただ典型ではない出題も多いので、方針を立てる段階や、式変形などを行う段階で若干時間を食うかもしれません。
<頻出分野>
頻出分野としては、大問1に三角関数、場合の数、整数、大問2及び3には図形の問題や数3微積、複素数平面などがよく出題されています。やや非典型な問題を含む大問2や3に比べて、大問1の難易度が比較的標準的なので、大問1の出来が、最も合否に影響するでしょう。
<兵庫医科大数学の対策>
大問1の得点力を養成するために、青チャート、フォーカスゴールド、一対一対応の演習などの網羅系問題集できちんと解法のインプットを行うことは必須でしょう。
その後大問2や大問3まで手を付けてアドバンテージを取っていきたい受験生に関しては、最終到達点としてやさしい理系数学などのアウトプット用の演習書まで手を付けても構いません。
英語の分析
<目標得点ライン>
満点150/H120/M105/L95/L-85/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン)
- 試験時間90分、大問5問
- 《難易度評価》
1:読解/104words/A/-
2:読解/429words/B/語彙問題多め
3:読解/534words/B/-
4:読解/232words/B/穴埋めオンリー
5:和文英訳/-/C/阪大レベル - 大問5問あるもそこまで時間きつい試験ではない
- 対策:通常の長文読解演習のほか、語彙、イディオムの強化も多少有効か
- 『英作文が面白いほど解ける本』等の参考書も良いが、添削指導が受けられると望ましい
大問 | 種別 | ワード数 | 難易度評価 | 備考 |
1 | 読解 | 104 | A | |
2 | 読解 | 429 | B | 語彙問題多め |
3 | 読解 | 534 | B | |
4 | 読解 | 232 | B | 穴埋めオンリー。 |
5 | 和文英訳 | – | C | 阪大レベル。 |
<試験問題の概要>
90分の試験で、大問は5問です。
大問1は語彙レベルも内容も易しく、文章量も104ワードとたいへん短いです。設問は和訳と内容説明からなりますが、いずれもやや易しい内容となっています。
大問2は語彙レベル標準、内容も標準、ワード数は429ワードとやや短めの長文問題になっています。設問については語彙の意味を推測させる問題がメインですが、単語集を難しいものまでやっているなら文章を読まなくても正答可能です。ただし時間にそこまで余裕がないわけでもないので、推測しながら解いていく方針でももちろん、オッケーです。
大問3は534ワードの通常の長文問題で、和訳・内容説明問題・穴埋め問題からなります。
大問4は232ワードの短めの長文問題で、穴埋め問題のみになります。文脈判断もあればイディオム知識で解けるものもあればと様々です。例年はこの問題は並び替え問題になっているのですが、令和2年度については穴埋め問題となりました。
大問5はやや難の和文英訳で、これだけがくせ者で阪大二次くらいの難易度はあります。
<時間配分に関して>
時間は90分で大問5問というと多いようにも見えますが、長文問題はそれぞれ短めのワード数でそれほど難しくなく、そこまで時間がきつい試験でもありません。
<兵庫医科大英語の対策>
通常の長文読解演習に加えて、語彙やイディオムの知識だけでも解ける問題も多いので、入試の直前期でも細々と語彙の強化を続けておくことも多少は有効かと思われます。
また最後の和文英訳はかなり難しいので、英作文が面白いほど解ける本など参考書の学習も良いですが、可能であれば添削指導を受けながら練習すると更にアドバンテージが取れるでしょう。
化学の分析
<目標得点ライン>
満点100/H85/M70/L60/L-55/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン )
- 大問3問、試験時間120分(2科目)理論1問、有機1問は確定。残る1問は理論、無機、融合問題
- 全体的にさほど難しくはないが、応用問題で悩んでしまうと時間が足りなくなる
- 対策:『重要問題集』等の標準的な問題集の周回で構わないが、有機だけでも得意分野を作っておくと応用問題でアドバンテージ取れる
大問 | 分野 | 分量 | A | B | C |
1 | 無機 | やや少 | 50% | 35% | 15% |
2 | 理論 | 標準 | 30% | 40% | 30% |
3 | 有機 | 標準 | 30% | 20% | 50% |
<試験問題の概要>
令和2年度の試験では、大問1は無機の出題があり、概ね基本知識を問う問題でした。
大問2は理論の問題で、前半は基礎的な問題でしたが後半はやや応用的な出題で、誘導に乗っていければサクサク完答までいきつきますが、誘導の意味が分からなければそこから先の問題が全て解けなくなるというオールオアナッシングな出題でした。解けなくても合格点には到達しますが、解けるとかなりアドバンテージが取れます。
大問3は有機化学の構造決定問題で、これもまた前半は基礎的な問題でしたが後半は誘導こそ丁寧なものの応用的な問題でした。解きなれているとそう難しい問題ではありませんでしたが演習量足りなくなりがちな現役生では後半は捨て問だったかもしれません。全体的にさほど難しい問題ではありませんが、応用的な問題で無駄に悩んでしまうと時間が足りません。見慣れないテーマが出てきたら一旦飛ばして、基礎的な問題を全部拾ってから落ち着いて応用問題に取り組みましょう。
<出題分野の傾向>
大問3問構成で、理論が1問、有機が1問は確定、残る1問は理論になったり無機になったり、理論と無機の融合問題になったりと様々です。高分子の出題は基本的には控えめですが、年度によっては有機の問題がまるまる高分子になっていることもあるので注意してください。
<時間配分に関して>
理科2科目で120分なので、化学には60分割けることになります。
<兵庫医科大化学の対策>
重要問題集など標準的な問題集の周回で構いませんが、有機だけでもいいので得意分野を作っておくと、応用問題の正答率で他の受験生にアドバンテージが取れると思います。
物理の対策
<目標得点ライン>
満点100/H80/M70/L60/L-55/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン )
- 試験時間120分(2科目)、大問5問。原子を含む全分野から1題ずつ。
- 難易度はやや易しい~標準レベル
- 試験時間の割にボリュームはかなり多い。時間さえあれば、得意なら高得点が期待
- 対策:『重要問題集』等のオーソドックスな問題集の演習+過去問で時間配分の最適化
大問 | 種別 | 分量 | A | B | C |
1 | 電磁気 | 多め | 60% | 30% | 10% |
2 | 力学 | やや少 | 60% | 40% | |
3 | 熱力学 | 標準 | 40% | 60% | |
4 | 波動 | やや少 | 20% | 80% | |
5 | 原子 | やや少 | 20% | 80% |
<試験問題の概要>
理科2科目で120分なので、物理には60分の時間は割けます。
大問5問構成で、原子を含むあらゆる分野からそれぞれ1題ずつ出題されるようになりました。
令和2年度では、大問1の電磁気の分量が非常に多く、次点で大問3の熱力学も相対的にやや多め、大問2、4,5はかなり少な目の分量になっています。
難易度はいずれもやや易しい~標準ですが、全体的に設問数が多く、60分の試験の割にはボリュームはかなり多いと感じるでしょう。物理で稼ぎたい人は、化学の難問を解く時間をカットして物理にやや多めに時間を投入したいところです。時間さえあれば問題そのものの難易度はそれほどでもないので、得意な人であればかなりの高得点が期待できます。
<兵庫医科大物理の対策>
問題の難易度は標準レベルなので重要問題集などオーソドックスな問題集の演習で構いませんが、時間配分がシビアですので過去問演習は多めに行い、自分の実力が全て得点に繋がるように、時間配分のペースの最適化にはしっかり時間を取ってください。
生物の対策
<目標得点ライン>
満点100/H80/M70/L65/L-60/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン )
- 試験時間120分(2科目)、大問5問
- 全体的に標準レベルで知識問題が中心。考察問題も典型的なものが多い
- 対策:『セミナー生物』等の基礎的な問題集、『基礎問題精講』等の標準問題まで出来れば結構なアドバンテージ。余裕があれば遺伝も
大問 | 分野 | 分量 | A | B | C |
1 | 小問集合 | 多め | 60% | 35% | 5% |
2 | 発生 | やや多め | 30% | 30% | 40% |
3 | 代謝 | 少な目 | 85% | 15% | |
4 | 分子生物 | 標準 | 35% | 50% | 15% |
5 | 体内環境 | 標準 | 50% | 50% |
<出題分野の傾向>
単科医科大学ではありますが分野の偏りはあまりなく、生態・進化を含む生物の広い範囲から出題が見られます。ただし植物生理だけは出題が控えめかもしれません。
<試験問題の概要>
理科2科目で120分なので、生物には60分程度の時間は割けます。大問数は5問です。
全体的な難易度は標準レベルで、知識問題が中心です。考察問題があっても典型的なものが多い印象です。時々その場で考えないといけない考察問題もありますが、時間がやや足りないのもあり、そのような問題を飛ばしても十分合格点に到達します。
<兵庫医科大生物の対策>
セミナーなどの基礎的な問題集をしっかり固めるだけでもそれなりの点数は取れますし、その後基礎問題精講などの標準的な問題集もやりこめれば結構なアドバンテージが取れるでしょう。
遺伝についてはそれなりに出題されているので、余裕があれば対策をしておいても良いかと思います。
兵庫医科大のその他の入試情報
- 《推薦入試》
- 一般公募制:現役生のみ/評定平均4.0以上/併願不可
地域指定制:一浪まで可/保護者が兵庫県在住、または自身が兵庫県の高校卒業、等の地域縛り/評定平均 現役:4.0以上、浪人:4.2以上/併願不可/奨学金縛りなし、就労義務なし
※いずれも評定平均の数値は変更の可能性 - いずれも11月に試験。
- 配点は、数学100点、英語100点、理科2科目150点、小論文50点、調査書・面接30点。
- 《一般選抜B(高大接続型)》
- 英検2級相当の民間の英語試験の合格実績が出願の条件
- 第1次試験:数学150点、理科100点、小論文50点
- 第2次試験:英語150点、面接30点、英語資格試験及び調査書の加点50点
- 全体として理科が圧縮された配点。理科対策が間に合わない受験生は一般Bでの出願も検討か。
- 第1次試験の数理の問題は一般入試Aと同じ。第2次試験の英語はオリジナル問題。
<推薦入試/一般公募制>
推薦入試は一般公募制と地域指定制があります。一般公募制は現役生のみ、評定4.0以上となっていますが新型コロナウイルス感染症の影響による特例措置の可能性があるので、来年度以降は4.2以上になるかもしれません。併願は不可です。
<推薦入試/地域指定制>
一方で、地域指定制は一浪までOK、保護者が兵庫県在住または受験生自身が兵庫県の高校卒業など地域縛りがあり、評定は現役は4.0または浪人は4.2以上になっています。これもまた来年度以降は4.2で統一されるかもしれません。併願は不可です。
地域枠でありますが奨学金縛りはなく、卒業後の就労義務なども課されません。いずれも11月に試験があります。配点はいずれも数学100、英語100、理科2科目で150、小論文50、調査書・面接点で30点です。現役生に配慮してか、出題範囲には数学3がなく、理科の範囲も狭くなっています。
<一般選抜B(高大接続型)は一応英語重視・理科軽視>
一般選抜に関しても一般選抜B(高大接続型)と呼ばれる特殊な試験形式があります。英検2級相当の民間の英語試験の合格実績があることが出願の条件です。
第1次試験の配点は数学150点、理科100点、小論文50点で、合格者のみが第2次試験に移ります。
第2次試験の配点は、英語150点、面接30点、英語資格試験及び調査書の加点が50点分あります。
全体として、理科が圧縮された配点となっています。兵庫医大の理科はかなりの軽量対策でもそれなりの得点が期待できますが、難化してしまうと思った以上に点数が取れないかもしれません。理科の対策がどうも間に合いそうにない受験生は一般Bでの出願も要検討でしょう。
なお、第1次試験の数学と理科の問題は通常の一般入試Aと変わりませんが、第2次試験の英語の試験はオリジナル問題になっています。一般入試Bの英語の問題は、一般入試Aに出題されていた和文英訳の問題が自由英作に差し替えられるなど、マイナーチェンジが所々に見られます。
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