<傾向と対策>日本医科大学(医学部医学科)配点は現役有利だが試験の中身は浪人有利。英語と理科で差がつく。

総評

  • 英語は時間に余裕があるものの、ほどほどの難易度で点差がつく試験。
  • 数学はやや難し目で計算力が要求される試験。
  • 化学は重厚な問題である一方、物理は平易な問題
  • 若干物理選択のほうが有利な傾向がある
①英語は時間に余裕があるものの、ほどほどの難易度で点差がつく試験であること、②数学はやや難し目で計算力が要求される試験であること、③理科については化学は重厚な問題である一方物理は平易な問題であり、また若干生物より物理のほうが有利傾向があること、などが抑えるべきポイントです。現役有利な配点ですが試験の内容は浪人有利な内容で、様々な年齢層から学生を集めるスタンスが見て取れます。

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入試の基本情報と面接

  • 《配点(一般選抜前期)》数学300点、理科400点、英語300点
  • 面接は集団面接(30分程度)と個人面接(10分程度)の2回。概ね一般的な内容
  • R2は定員81名、一次合格352名、合格者327名(繰上げ含む)
  • 学納金 2,250万(6年間)+α
  • 特待枠あり。初年度授業料250万免除

<一般前期の配点>
配点はやや英数重視な配点で、数学300、理科2科目で400、英語300です。一次試験に合格すると二次試験で、小論文と面接があります。

<面接に関して>
面接については30分程度の集団面接(グループディスカッション)と、10分程度の個人面接とが2回という面接です。概ねふつうの内容を聞かれているようです。

<一次合格者はだいたい合格>
令和2年度の入試では、一般選抜前期の定員81名に対して、一次試験合格者が352名、その中で繰り上げ合格を含む合格者がトータルで327名出ています。面接までこぎつけても必ずしも受かるとは限らないようですね。多浪生や再受験生にも寛容とはされていますが、最低限の準備はしたうえで面接に臨みましょう。

<学納金はお安め>
ちなみに、学納金は6年間の合計で2250万円になり、私立の中ではかなり安めになります。その他の費用に関してはホームページには記載はありませんでしたが、種々の費用が追加されることかと思われます。特待枠もあり、特待で合格した場合は初年度授業料250万円が免除されます。

数学の分析

<目標得点ライン>
満点300/H240/M200/L170/L-150/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン)

  • 大問4問構成、試験時間90分
  • 難易度は標準~難しい
  • 全体的に思考力より計算力を問う試験
  • 頻出は数Ⅲ微積、空間ベクトル、二次曲線
  • 対策:網羅系問題集でのインプット学習必須。計算力向上のためのアウトプット演習も重要。『やさしい理系数学』やワンランク上まで。
大問分野難易度評価
1数3微積B***
2ベクトルB*
3二次曲線B**
4確率・数列D#

<試験問題の概要/令和2年度>
大問4問構成で、制限時間は90分の試験です。全体的な難易度は標準~難しいレベルです。

大問1の数3微積は良くある標準問題で難易度評価Bとしていますが、計算だけやや煩雑なので注意しましょう。

大問2はベクトルの問題で典型的な問題で難易度評価Bとしました。

大問3は二次曲線で計算は煩雑なものの標準的な問題で難易度評価はBとしました。

大問4は確率の問題で、途中の小問までは何とかなるものの、後半の設問は極めて煩雑な処理が要求されており、正直捨て問と言ってよいでしょう。難易度評価Dをつけました。

<時間配分/計算膨大で余裕なし>
全体的に煩雑な処理や計算を要求する試験で、思考力や発想力というより、計算力や処理能力を問う試験と言えます。方針こそ容易に立つものの、計算量が非常に多いので時間の余裕もありません。

<頻出分野>
数3微積・空間ベクトル・2次曲線が頻出ですが、その他の分野は多分野融合問題も含め満遍なく出題されているようです。

<日本医科大数学の対策>
標準問題も多いため、網羅系問題集でのインプット学習は必要ですが、それだけでは得点は安定しないでしょう。計算力や処理能力を向上させるためのアウトプット演習も重要と言えます。難易度の変動幅が激しく、例年はもう少し難しい問題が出題されているようです。数学で差をつけたい受験生は、やさしい理系数学や、余裕があればハイレベル理系数学など更にワンランク上の問題集でアウトプット演習もやってみても良いでしょう。

英語の分析 

<目標得点ライン>
満点300/H240/M210/L190/L-180/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン)

  • 試験時間90分、大問5問
  • 《難易度評価》
    1 長文/約900語/B~C
    2 自由英作文/-/C
    3 空所補充、正誤/約400語/A
    4 語彙、アクセント/-/B
    5読解/約800語/B
  • 時間はちょうど良いか、少し余る程度
  • 対策:長文対策は記述式/選択式のバランス取れた問題でトレーニング。単語も細々継続。
    英作文は様々なバリエーションで対策を。
大問種別ワード数難易度評価
1長文約900B~C
2自由英作文 C
3空所補充、正誤約400A
4語彙、アクセント B
5読解約800B

<試験問題の概要/令和2年度>
90分の試験で、大問は5問です。

大問1は長文問題で、語彙レベルも内容のレベルも標準的です。設問は記述問題がメインになっていますが、文章の大意が掴めておればそれほど難しい問題ではありません。

大問2は自由英作文で、大問1の内容を踏まえたものとなっています。大問1の内容をある程度理解していないと大問2の作文を書くのは難しいでしょう。ワード数の指定はありませんが、ふつうに書くと100ワードちょっとくらいになるんでしょうか。

大問3は空所補充と正誤問題で、一見長文っぽく見えますが、どちらかというと文法の理解を試す問題です。例年出題されていなかった形式ですが、難易度としてはやや易しい程度で、それほど難しくはありません。

大問4はアクセントの問題と語彙の意味を聞く問題でしたが、これもまた極端に難しい問題は少なく、標準的でした。

大問5でまた長文問題に戻りますが、全て選択問題となっています。所々にややこしい選択肢の問題がありますが、時間に余裕もあるので丁寧に吟味して解答してください。

<時間配分に関して>
時間に関してはちょうどいいくらいか、少し余る受験生も多いでしょう。

<日本医科大英語の対策>
①長文対策は記述式・選択式のバランスの取れた問題でトレーニングをすること、②単語帳をきちんとやってるかどうかを問うだけの問題も毎年出題されているので直前期でも細々と単語帳の勉強を続けておくこと、③自由英作文はやや書きにくいテーマの難易度の高いものが出題されることもあるので様々なバリエーションの問題を解いておくこと、の3点となるでしょう。

化学の分析 

<目標得点ライン>
満点200/H160/M130/L110/L-100/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン )

  • 試験時間120分(2科目)、大問4問無機たまに。高分子は2年に1回程度の出題。
  • 「難問頻出」の問題が並ぶ。ハイレベルではあるが差がつくのでは。
  • 時間かなり厳しい。完答出来た人は皆無か。
  • 対策:『重要問題集』はB問題までトレーニング。加えてハイレベルな問題演習。
    有機は例年やや易しめのため理論だけでも。
大問分野分量ABCD
1理論標準 25%75% 
2理論やや多10%30%60% 
3有機やや少50%35% 15%
4有機標準50%50% 

<試験問題の概要/令和2年度>
第1問は電離平衡の分野となっており、やや難しいものの難関校ではよく出題される「難問頻出」的なテーマでした。予備校の講習で取り扱いやすいテーマで、化学が得意な浪人生はガッツリ点が取れたかもしれませんが、理科の対策が遅れがちな現役生では伸び悩んだかもしれません。

第2問も溶液の分野となっており、極端に難しいわけではないのですが、この分野そのものが苦手な受験生が非常に多いため、全体的に点数は低めだったように思います。

第3問は有機の問題で、一部に大学の一般教養レベルの設問がありましたが、それ以外は平易な問題でした。

第4問も有機の問題で、これは特にひねりもない平易な問題でした。

<出題分野の傾向/高分子はやっておくべきだが、無機はそこまで…>
令和2年度では理論2問、有機2問というセットでした。無機についてはたまに出る程度で、令和2年度では全く聞かれませんでした。高分子に関しては2年に1回程度出る、といった感じです。高分子は少しはやっておくべきですが、無機については正直放置でいいかもしれません。

<時間配分に関して/タイトなので、飛ばし飛ばし>
理科2科目で120分なので、化学には60分割けることになります。時間に関しては非常に厳しく、理論の後ろのほうの問題も含めて完走出来た人はほぼ皆無でしょう。ただし物理や生物は比較的平易だったので、化学に多めの時間を割けば理論の問題にも時間が割けるかもしれません。

<日本医科大化学の対策>
重要問題集B問題も含めてトレーニングをしておきたいところです。

それに加えて何かしらハイレベルな問題集を積みたいのですが、個人的には化学の新演習より標準問題精講を薦めます。(有機は例年やや易し目なようなので、理論だけでもいいです。)マイナーネタも含めて色々な問題を取り揃えている新演習より、難しいけれども頻出問題を厳選してある標準問題精講の方が、日本医科大の対策としてはより効果的なように思います。

物理の対策 

<目標得点ライン>
満点200/H180/M150/L130/L-120/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン )

  • 試験時間120分(2科目)、大問4問。力学・電磁気・熱は固定。その他は波動or原子。
  • 化学に比べると標準的な問題が多い。
  • 典型問題多く、時間はちょうどいい程度か。
  • 対策:意外と易しい。『重要問題集』A問題レベル、『良問の風』レベルでも高得点期待。
大問種別分量ABC
1力学標準30%70% 
2電磁気やや少 100% 
3標準50%30%20%
4波動やや多70%30% 

試験問題の概要/令和2年度>
第1問の力学、第2問の電磁気は典型的な問題で、なるべく完答を目指したいレベルです。

第3問の熱は最後だけやや難ですが、それ以外はきちんと押さえたいところです。

第4問は波動でしたが、数値計算がやや面倒で正確に行う必要があります。

<時間配分について/意外とカンタンなので程ほどくらい。>
大問4問ありますが、いずれも典型的な問題でしたので、時間はちょうどいいくらいです。

<出題分野の傾向>
大問4問構成で、力学・電磁気・熱が固定で、波動か原子が最後の1題としてランダムに出題されます。バランスよい学習が必要でしょう。

<時間配分に関して>
理科2科目で120分なので、物理には60分の時間は割けます。なるべく物理は早めに仕上げて、化学に時間をさけると理科全体として点数を伸ばせるでしょう。

<日本医科大物理の対策>
意外と易しい問題が多いので、重要問題集A問題レベル、良問の風レベルが解けるだけでもけっこうな高得点が期待できます。

生物の対策

<目標得点ライン>
満点200/H175/M135/L120/L-110/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン ) 

  • 試験時間120分(2科目)、大問3問。分野にかなりの偏り。体内環境はほぼ毎年出題。分子生物、細胞生物も頻出。
  • 化学と考察問題どちらに時間を使うか要検討
  • 対策:考察注力しないなら『基礎問題精講』等の易しめの標準問題集&化学に注力。考察も得点狙うなら、分野絞ってでも『標準問題精講』orワンランク上まで。
大問分野分量ABCD
1体内環境やや少40%50%10% 
2分子生物やや少70% 30% 
3細胞生物標準 15%70%15%

<出題分野の傾向/令和2年度>
大問1と大問2は平易な典型問題で、満点に近い点数を狙っていきたいところです。

大問3がかなり凝った考察問題となっており、たいへん難易度が高いです。たくさんの実験を行い、それぞれの実験の結果を正しく解釈した上で、全ての実験結果を考慮して解答させる問題も含まれており、これが中々くせ者です。

<試験問題の概要>
体内環境がほぼ必ず出題されており、分子生物や細胞生物からの出題もよく見られます。

生態からは出題はなく、植物生理からは出題された年度もありますが、頻度は極めて低いため、出たら出たらで分かるところだけ埋めて他でリカバリーしましょう。

<時間配分に関して>
制限時間については、大問の1番や2番は簡単なので、3番の考察問題をじっくり考える時間が取れますが、化学は時間が不足気味なので、化学に時間を割くか生物の考察に時間を割くかは一考の余地があります。

<日本医科大生物の対策>
この3番の考察をどこまで頑張るかで大きく対策が変わります。考察を頑張らないのであれば、基礎問題精講などの易しめの標準問題集だけで片付けてしまうのも一つの戦略です。考察問題も選択問題ばかりですから、何かしら記号をうめておけば当たるかもしれません。その代わり化学の勉強は頑張ってください。

考察でもきちんと点を狙っていくなら、分野を絞ってでもいいので、標準問題精講、あるいはそのワンランク上の問題集の思考力問題精講に手を出しても構いません。

日本医科大のその他の入試情報

  • 《一般選抜後期》
  • 定員23名、3月上旬に試験実施
  • 配点は一般選抜前期と同じ
  • 共通テスト(国語)の点数を加えて選抜する「国語併用」の試験アリ
  • 奨学金付き地域枠も充実
    前期:千葉4名、埼玉3名、静岡3名
    後期:福島1名、千葉3名、埼玉1名、静岡1名
  • 貸付額は福島のみ1792万、他は1440万
  • 卒後9年間県内の病院に勤務する必要診療科縛りは原則なし(埼玉を除く)
  • 日本医科大学のその他の入試制度
    《総合型選抜》
  • 定員2名
    一次選考:共通テスト+志望理由書+調査書
    二次選考:小論文+面接
  • 一般後期試験との併願不可
  • R2の志願者2名、合格者0名

日本医科大のその他の入試制度について説明します。

<一般後期>
まずは一般選抜後期について説明します。23名の定員があり、3月上旬に実施されます。配点は前期と同じで、問題のぱっと見の傾向も前期とそう変わりません。入学難易度も同じくらいかちょっと難しいくらいに落ち着くようです。

後期試験にはユニークな試験形式があり、共通テストの国語の点数を後期試験の成績に足して選抜する試験があります。通常の後期試験と併願できるとのことですので、共通テスト国語で良い点数が取れたのであれば併願してみるのもありでしょう。

<前期・後期共に地域枠が充実>
奨学金付きの地域枠も充実しています。前期では千葉県から4名、埼玉県から3名、静岡県から3名、後期の地域枠でも福島県から1名、千葉県から3名、埼玉県から1名、静岡県から1名の枠があります。どうやら複数の県の併願が可能なようです。貸付額は福島県だけ少し多めで1792万円、他の県は1440万円となります。出身地や評定縛りについてはいずれの県にもありません。卒後、県内の病院に9年間勤務する必要があります。

診療科縛りについては原則ありませんが、埼玉だけは少し特殊な縛りがあります。詳細は埼玉県のホームページを見て頂きたいのですが、産科・小児科・救急科であれば埼玉県内である程度勤務地に融通が利きますが、その他の科では勤務する病院に大きく制限がかかるという形式になっています。

<総合型選抜はあるが、合格者が出ない>
最後に総合型選抜です。定員は2名です。共通テストと志望理由書、調査書で1次選抜を行い、2次試験は小論文と面接です。この枠で出してしまうと一般後期に出願できません。一応浪人でも出願できるようですが、基本的には現役生向けの試験でしょう。

一般入試では理科を筆頭に浪人有利の重厚な二次試験が出題されており、これを回避する目的で出願してみるのはアリでしょう。学費を支払う余裕があれば、国公立の推薦入試などと併願してみるのも悪くないのかもしれません。

ただし令和2年度は志願者は合計2名、最終合格者に至ってはゼロ名という状態であります。あまり積極的に合格者を出すつもりがないのかもしれません。

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