総評
- 英語・化学が平易で点を稼ぎやすく、試験の特性を理解して対策することでかなり合格しやすくなる
概ねオーソドックスですが、試験の特性を理解して対策するとかなり合格しやすいでしょう
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入試の基本情報と面接
- 《科目(配点)》数学(100)、英語(100)、理科2科目(150)
- 一次試験合格で二次試験(小論文+面接)。面接:個人/10分程度/一般的な内容
- 学納金 3,759万円(6年間)+α
- その他の入試制度
東京都地域枠(約10名) 地元縛り/奨学金縛り/診療科縛り
共通テスト利用入試(前期10名、後期5名)
総合型選抜(1名)、外国人留学生選抜(1名)
国語 | 数学 | 理科 | 英語 | 面接 | 合計 |
– | 100 | 150 | 100 | – | 350 |
<面接>
二次試験では、小論文と面接が実施されます。面接は個人面接で、10分程度で概ね普通のことが聞かれます。
<学納金>
学納金は6年間の合計で約3759万+諸経費となっており、私立医の中でもけっこうな感じの学費です。
<その他の入試制度>
杏林大のその他の入試制度には地元縛り、奨学金縛り、診療科縛りのある東京都地域枠で約10名程度、共通テスト利用選抜の前期で10名、後期で5名の定員、総合型選抜で1名、外国人留学生選抜で1名の定員があります。詳細は大学HPをご覧ください。
数学の分析<60分・4問>
<目標得点ライン>
満点100/H80/M65/L60/L-55/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン)
- 試験時間:60分
- 全体的な難易度は標準レベル。共通テストより難度高く、計算量もかなり多め
- 試験時間は正攻法で取り組むと足りない。
- 頻出:数3微積、次点で空間ベクトル。
- 対策:網羅系問題集でのインプット学習必須。アウトプットは『チョイス』『核心標準編』など。私立医学部過去問演習(マーク式)を積むこと。
問題番号 | 分野 | 難易度 |
1 | 数列 | B* |
2 | 空間ベクトル | B*** |
3 | 数2微積 | B** |
4 | 二次曲線 | B** |
<試験問題の概要>
制限時間は60分で、大問4問構成です。令和2年度の難易度評価は、大問1はB、大問2はB、大問3もB、大問4もBとしました。全体的な難易度は標準です。傾向としては共通テストやかつてのセンター試験とよく似たものですが、問題難易度はやや高めで計算量もかなり多めです。ただ共通テストほどはきちんと問題が練られていないので、姑息なテクニックで答えが出せてしまう問題も目立ちます。制限時間のわりに分量が非常に多いので、正攻法的に取り組むと時間は足りません。計算をスピーディーに行い、重めの問題が目立つ後半の小問は飛ばし飛ばし進めていきたいところです。
<頻出分野>
この令和2年度こそ出題されていないものの、数3微積が頻出で、次点で空間ベクトルとなっています。
<杏林大数学の対策・インプット編>
計算量が多いものの結局標準問題の焼き直しが中心なので、網羅系問題集を用いたインプット学習は必須でしょう。
<杏林大数学の対策・アウトプット編>
『チョイス新標準問題集』や『理系数学入試の核心(標準編)』などそう難しくないものを選び、杏林大をはじめマーク式の私立医学部の入試問題の過去問でも演習量をきちんと積んでおきましょう。
英語の分析<60分・4問>
<目標得点ライン>
満点100/H90/M75/L70/L-65/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン)
- 試験時間:60分間
- 大問ごとの難易度評価
1.文法・A 2.並び替え・A 3.文の並び替え・B 4.長文2題・B - 長文少なく、時間は少し余るくらいか。
- 対策:文法や並び替え問題多いため問題集できちんとトレーニングしておきたい。長文は普通。併願校の方を優先してOK
問題番号 | 分野 | 難易度 |
1 | 文法 | A |
2 | 並び替え | A |
3 | 文の並び替え | B |
4 | 長文2題 | B |
<試験問題の概要>
大問1は文法、大問2は語句の並び替え、と続きますが、いずれもかなり平易なものが中心なのであまり点を落とさないようにしたいところです。大問3は文の並び替えで、それ以前の問題に比べると少し難易度が上がります。大問4は長文が2題分ですが、全てマーク式の試験で設問もよくあるようなもので、標準的な難易度です。
<時間配分に関して>
制限時間は60分の試験です。長文の数がそう多くないので、時間は少し余るくらいの受験生が多いでしょう。
<杏林大英語の対策>
文法や並び替えの問題の数が多いので、簡単な問題集で良いのできちんとトレーニングしておきたいところです。長文に関しては至って普通であるため、併願校で特殊なものがあればそちらを優先して構いません。
化学の分析<50分・3問>
<目標得点ライン>
満点75/H67/M57/L50/L-45/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン )
- 試験時間:100分間(2科目)
- ほとんど基本問題。計算量も穏やか。共通テストレベルかそれより易しい問題が大半。満点ストッパーの設問は気にしないでOK。
- 時間は多少余裕が出る受験生が多いか。
- 対策:『重要問題集』A問題レベルで構わない。余裕があればB問題レベルまでを推奨。
問題番号 | 分野 | 難易度 |
1 | 理論 | A |
2 | 無機 | B |
3 | 有機 | A |
<出題分野の傾向>
令和2年度では理論1問、無機1問、有機1問のセットでした。無機は毎年出題され、高分子はこの年度こそ出題されなかったものの、例年は何問か出ているようです。
<試験問題の概要>
選択科目2科目併せて100分なので、化学には50分割けます。殆どの問題が基本問題で、計算量も非常に穏やかです。共通テストレベルか、それよりも易しい問題が大半を占めます。一部の問題で重箱の隅を突くような満点ストッパーの設問がありますが、合否にはほぼ影響しないと思われるので気にしないでおきましょう。
<時間配分に関して>
知識問題も多く、計算量はそこまできつくないので、多少余裕が出る受験生が多いかと思われます。
<杏林大化学の対策>
『重要問題集』A問題レベルまでで基本的には構いませんが、余裕があれば無機などの分野でB問題レベルまで固めることを薦めます。基本的な知識を全分野にわたってきちんと固めることが重要です。
物理の分析<50分・4問>
<目標得点ライン>
満点75/H60/M50/L42/L-37/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン )
- 試験時間:100分間(2科目)
- 基礎レベルの問題が大半だが、そこそこ難しい問題も含まれているので注意
- 対策:『重要問題集』A問題や、「名問の森』★レベルがミニマム。余裕あればB問題、★★レベルまで取り組みたい。過去問演習も多め。
問題番号 | 分野 | 難易度 |
1 | 小問集合 | A |
2 | 電磁気&原子 | A |
3 | 力学 | A〜C |
4 | 電磁気 | B |
<出題分野の傾向>
大問4問構成で、令和2年度では、小問集合1問、力学1問、電磁気1問、電磁気と原子の融合問題1問というセットでした。ここ何年か同様の傾向が踏襲されており、波動や熱力学は小問集合でしか登場しない不気味なパターンとなっています。ただし年度をさかのぼれば波動や熱力学で大問1問出題されている年度もありますので一応注意はしておいてください。
<試験問題の概要>
選択科目2科目併せて100分なので、物理には50分割けることになります。難易度としてはそこそこ難しい問題も紛れており、特に大問3の力学の後半の問題はけっこうな難問でした。
<時間配分に関して>
粒ぞろいの問題セットのため、時間が足りなかった受験生がほとんどかもしれません。化学で時間が余った受験生が何とか救われたという形になったと思われます。
<杏林大物理の対策>
『重要問題集』A問題や、『名問の森』★レベルまでがミニマムの対策になりますが、余裕があれば『重問』B問題、『名問の森』★★レベルまで取り組みたいところです。また数値計算の問題が多いため、慣れるためにも過去問に多めに取り組んでおきましょう。
生物の分析<50分・3問>
<目標得点ライン>
満点75/H67/M57/L52/L-47/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン )
- 試験時間:100分間(2科目)
- 基礎レベルが大半だが、時々難しい問題が含まれる。
- R2は例外的に大問3問のため時間は余裕。例年は大問4問構成のためもう少し分量多い。
- 対策:標準的な問題集に加え、網羅性の高い問題集まで取り組んでおきたい。遺伝もちょいちょい出題。対策しておきたい。
問題番号 | 分野 | 難易度 |
1 | 小問集合 | A |
2 | 分子生物&代謝 | B |
3 | 体内環境 | B |
<出題分野の傾向>
杏林大生物には分野の偏りがあまりありません。強いて言うなら体内環境が必ず出題されるくらいで、他の分野は生態や植物生理、進化も含めてまんべんなく出題されています。
<試験問題の概要>
選択科目2科目併せて100分なので、生物には50分割けます。大問1の小問集合は、基礎レベルの知識問題が並んでおり、概ね平易ですが一部難しいものも含まれます。とはいえ対策も難しいのであまり気にしないでいきましょう。大問2以降は、典型問題をベースに少しひねった問題が続き、そこそこ差がついていそうな気はします。
<時間配分に関して>
令和2年度は例外的に大問3問構成でしたので、時間にはかなり余裕がありました。しかし最新年度の令和3年度を含め、例年は大問4問構成で分量はもう少し多いです。
<杏林大生物の対策>
『基礎問題精講』などの標準的な問題集に加え、『重要問題集』や『大森徹の最強問題集』など網羅性の高い問題集まで取り組みましょう。遺伝もちょいちょい出題があるので、余裕があれば対策しておきたいところです。
全体の得点戦略
- 点を伸ばしやすい科目
英語&化学→数学&生物→物理
H | M | L | L- | 満点 | |
数学 | 80 | 65 | 60 | 55 | 100 |
英語 | 90 | 75 | 70 | 65 | 100 |
物理 | 60 | 50 | 42 | 37 | 75 |
化学 | 67 | 57 | 50 | 45 | 75 |
生物 | 67 | 57 | 52 | 47 | 75 |
合計 | 297 | 247 | 222 | 202 | 350 |
<合格最低点非公表の大学…>
杏林大学医学部では合格最低点、平均点などの発表が一切ありません。故に、過去に分析した大学の問題難易度と偏差値を丁寧に照らし合わせながら、非常に慎重に分析した結果、6割弱くらいがギリギリのラインで、しっかり合格ラインに載せていくには6割5分~7割弱くらいを目指すのが妥当ではないかと考えています。ただし令和2年度は物理をはじめとして全体的に難しめだったらしく、例年はもう少しとらないといけないでしょう。
<英語と化学が点を伸ばしやすい>
この中で最も手っ取り早く点を伸ばしやすいのは英語と化学で、次点で数学や生物、最後に物理でしょう。英語と化学でHigh狙い、数学や生物・物理はLowが取れればいいやくらいのスタンスが一番良いかと思われます。ただ英語に関しては結構な数の文法問題が紛れているので、英語が得意だからといって文法対策をさぼり過ぎると痛い目に合うかもしれませんし、英語は苦手でも文法問題もしっかり対策していれば十分キャッチアップ出来ます。理科の有利不利も、令和2年度こそ生物有利、物理不利傾向でしたが、例年はそこまで差がありません。基本的にどんなタイプの受験生でも受けやすく、問題の特性を理解して対策することでかなり合格しやすい印象を受けました。
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