総評
- 数学は点を伸ばしにくい
- 英語は速読力で差がつく試験
- 化学は比較的平易。物理、生物はハイレベルだが差のつく問題
英語や理科で稼ぐタイプの受験生であれば、大きな波風も立たず実力通りの結果を出せるでしょう
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入試の基本情報と面接
- 一次試験合格で二次試験(小論文+面接)
面接:個人/10分程度/2回 - 学納金 2,200万円(6年間)+α
- 付属校からの内部進学 定員40名近い
国語 | 社会 | 数学 | 理科 | 英語 | 面接 | 合計 | |
共通 | – | – | – | – | – | – | – |
二次 | – | – | 150 | 200 | 150 | – | 500 |
最も定員が多い一般入試について説明します。一次試験に合格すると二次試験で、小論文試験と面接が実施されます。面接は個人面接で、凡そ10分程度の面接が2回あり、普通の内容が聞かれるようです。ちなみに、学納金は6年間の合計で約2200万円+諸経費となっており、私立医の中では比較的安めな学費となっています。慶応大医学部は付属校からの内部進学も多く、40名近い定員が設定されています。その他には帰国生入試や外国人留学生入試しかなく、シンプルな入試制度です。
数学の分析<100分・4問>
<目標得点ライン>
満点150/H100/M85/L75/L-65
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン)
- 試験時間:100分
- 大問ごとの難易度評価
1:(1)B* (2)B* (3)C**
2:C*** 3:D**** 4:C**** - 全体的な難易度は「やや難」。
- 計算量膨大な設問あるため分量かなり多い
- 頻出:確率と数列の融合問題、数3微積。二次曲線、軌跡、平面ベクトルも頻出。
- 対策:網羅系問題集のインプットはほどほど。市販問題集の他、慶応大過去問、東京医歯大、京都府立医大の過去問トレーニングも有効
問題番号 | 難易度 |
大問1(1) | B* |
大問1(1) | B* |
大問1(1) | C** |
大問2 | C*** |
大問3 | D**** |
大問4 | C**** |
<試験問題の概要>
制限時間は100分です。令和3年度の難易度評価は、大問1は小問集合となっており、B2問、C3問、大問2はC、大問3はD、大問4はCとしました。全体的な難易度はやや難です。計算量が膨大な設問があるため分量はかなり多いです。計算量が穏やかな設問から取り組むように心がけましょう。また工夫次第で計算量を減らせるかどうかで差が付きます。
<頻出分野>
頻出分野は確率と数列の融合問題、数3微積で、その他、二次曲線、軌跡、平面ベクトルなども頻出で、多分野融合問題が目立ちます。
<慶応大数学の対策・インプット編>
典型問題や標準的な問題がほぼないといって等しいので、網羅系問題集を用いたインプット学習はほどほどにしておきましょう。
<慶応大数学の対策・アウトプット編>
市販の問題集でいえば「理系数学入試の核心(難関大編)」や、「上級問題精講」に相当するレベルまでやりたいのですが、慶応大の問題はこのような問題集に収録される良問とはベクトルが違うので、慶応大医学部の過去問のほか、東京医科歯科大や京都府立医大など重厚な単科医大系の過去問でトレーニングすると良いでしょう。
英語の分析<90分・4問>
<目標得点ライン>
満点150/H125/M105/L90/L-85
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン)
- 試験時間:90分間
- 大問ごとの難易度評価
1:長文・B 2:長文・B
3:長文・C 4:自由英作文・B - 問題は標準的だが、時間は非常に厳しい。1→2→4→3の順で解くのもアリか。
- 対策:比較的オーソドックスな問題のため、特化した対策は必要ないが、自由英作文のみ意識的に対策が必要。
問題番号 | 分野 | 難易度 |
大問1 | 長文 | B |
大問2 | 長文 | B |
大問3 | 長文 | B |
大問4 | 自由英作 | B |
<試験問題の概要>
制限時間は90分の試験です。大問1から大問3まで至って標準的な長文問題で、設問は和訳であったり内容説明問題だったり、内容理解を試す選択肢問題などがありますが、いずれも標準的な問題です。大問4だけは100ワードの自由英作文で、ただこれもオーソドックスなものです。
<時間配分に関して>
問題は標準的なものの、時間に関しては非常に厳しく、英語が得意な受験生でもギリギリでしょう。毎年必ずそうとは限りませんが、大問3は選択肢問題が多くなっていることが多いので、1⇒2⇒4⇒3、の順に解き、最悪3の選択肢問題は時間が足りなければ適当に埋めていくなどの方針もありかもしれません。
<慶応大英語の対策>
比較的オーソドックスな問題であるため特別な対策はあまり必要ありませんが、近隣の国公立大医学部では自由英作文が出ないところも多いので、自由英作文の対策だけは意識して行うようにしてください。
化学の分析<60分・4問>
<目標得点ライン>
満点100/H90/M80/L75/L-70
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン)
- 試験時間:120分間(2科目)
- 大問ごとの難易度評価
1:小問集合・B 2:無機・A
3:理論・A〜B 4:有機・B - 設問多いが平易。時間はちょっと余る程度か。
- 対策:R3は「重要問題集」A問題レベル。難化に備えてB問題レベルまでトレーニング。
問題番号 | 分野 | 難易度 |
大問1 | 小問集合 | A |
大問2 | 無機 | A |
大問3 | 理論 | A〜B |
大問4 | 有機 | B |
<出題分野の傾向>
理科2科目で120分なので、化学には60分が割けます。令和3年度では小問集合1問、無機1問、理論1問、有機1問のセットでした。例年小問集合はなく、大問3問構成となっており、理論や有機は勿論出題されますが、無機や高分子は年によって出たり出なかったりです。
<試験問題の概要>
全体的にかなりあっけないような難易度で、大問1から3まで教科書傍用問題集で扱ってもいい基礎レベルの問題が中心となっています。大問4の有機だけは標準レベルですが、慶応大医学部を受けるような受験生にとってはどうってことないでしょう。
<時間配分に関して>
時間に関しては、設問数は多いものの平易な問題が多いので、ちょっと余るくらいの受験生が多いでしょう。
<慶応大化学の対策>
今年度だけで見ると重要問題集A問題レベルで構いませんが、難化した場合に備えてB問題相当のレベルまでは押さえておきたいところです。
物理の対策<60分・3問>
<目標得点ライン>
満点100/H80/M70/L60/L-55
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン)
- 試験時間:120分間(2科目)
- 大問ごとの難易度評価
1:小問集合・B 2:無機・A
3:理論・A〜B 4:有機・B - 時間はやや厳しめ。大問2、3後半に見切りつけられれば足りる。
- 対策:「重要問題集」B問題、「名問の森」★★までは取り組みたい。過去問で時間配分練習。
問題番号 | 分野 | 難易度 |
大問1 | 小問集合 | B |
大問2 | 波動 | <前半>A~B<後半>C |
大問3 | 電磁気 | B~C |
<出題分野の傾向>
大問3問構成で、小問集合1問、波動1問、電磁気1問でした。化学と違って、物理では小問集合の大問がコンスタントに出題されています。令和3年度は力学の出題がほぼないという特殊な感じでしたが、例年は勿論よく出題されています。原子については大問単位では出ませんが、小問集合で登場することは多いようです。
<試験問題の概要>
理科2科目で120分なので、物理には60分が割けます。大問1の小問集合に関しては、ぱっと見目新しい問題のように見えますが、落ち着いて取り組めばそう難しいものではないのできちんと稼いでいきたいところです。大問2、大問3については、前半こそ取り組みやすいものの、後半になるにつれてかなり難易度が高くなっています。
<時間配分に関して>
時間については、やや厳しめですが、大問2や大問3の後半部分に早々に見切りをつけることが出来れば何とかなるでしょう。
<慶応大物理の対策>
「重要問題集」B問題や、「名問の森」の★★レベルまでは取り組みたいところです。その上で、時間配分の練習目的に過去問対策を行えば最低限の点数は確保できます。制限時間にそれほど余裕がないので、コストパフォーマンスは高くないですが、「難問題の系統とその解き方」や、「標準問題精講」に相当する難問のトレーニングも損にはなりません。
生物の対策<60分・3問>
<目標得点ライン>
満点100/H75/M65/L55/L-50
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン)
- 試験時間:120分間(2科目)
- 分野に偏り。植物生理は出題なし。生態は個体群の問題、神経の出題頻度高い。
- 大問ごとの難易度評価
1:神経・C 2:分子生物・進化・C
3:生態・B〜C - 考察問題まじめに取り組むと時間不足。
- 対策:標準的な問題集+ハイレベルな考察系問題集まで取り組みたい。遺伝は対策不要。
問題番号 | 分野 | 難易度 |
大問1 | 神経 | C |
大問2 | 分子生物・進化 | C |
大問3 | 生態 | B~C |
<出題分野の傾向>
理科2科目で120分なので、生物には60分を割けます。出題分野には若干偏りがあり、植物生理は出題が無く、生態に関しては医学系テーマの個体群の問題に偏っています。神経の出題頻度は明らかに高く、他の分野は概ね満遍なく出題されています。
<試験問題の概要>
全体的に、かなりこだわって作ったであろう新作の考察問題がたくさんあり、ハイレベルでありながら高校生物の知識で解けるように工夫してあります。ただ一部には大学一般教養に近いレベルの設問も含まれています。ハイレベルな受験生を選抜するための良い問題ではありますが、60分しか制限時間がないので考察問題まであまり手が回らないのが残念なところです。
<時間配分に関して>
考察問題をまじめに考えすぎると時間が足りなくなります。後ろのほうに簡単な問題が紛れていることもあるので、難しい考察問題は後回しにして、まずは簡単な設問を押さえていきましょう。
<慶応大生物の対策>
「基礎問題精講」などの標準的な問題集に加え、「標準問題精講」や「思考力問題精講」などのハイレベルな考察系問題集まで取り組みたいところです。遺伝に関しては意外とそれほど複雑なものは出題されていないので、基本的には対策不要です。
全体の得点戦略
- 得点しやすい順番
化学→英語→物理→生物→数学
H | M | L | L- | 満点 | |
数学 | 100 | 85 | 75 | 65 | 150 |
英語 | 120 | 100 | 85 | 80 | 150 |
物理 | 80 | 70 | 60 | 55 | 100 |
化学 | 90 | 80 | 75 | 70 | 100 |
生物 | 75 | 65 | 55 | 50 | 100 |
合計 | 395 | 340 | 295 | 270 | 500 |
令和3年度における慶応大医学部の一次合格の最低点は251点と発表されています。一次合格しても二次落ちが結構あるようなので、Lマイナスラインの合計は物理選択の場合、やや高めの270点に設定しています。
最も高得点を出しやすいのは化学、次点で英語、物理、生物と並び、稼ぎにくいのは数学となっています。特に今年度の化学に関しては非常に平易なもので、極端に苦手な受験生だけがふるい落とされるような格好になったんじゃないでしょうか。
英語は記述式の問題も多いのでもう少し低めの点数分布になっているかもしれませんが、速読力次第で完走できるかどうかが決まり、実力差のついた試験となっていることでしょう。
物理・生物に関してはやや物理有利ですが、どちらの科目もハイレベルな問題の出来で若干の差がついたと考えられます。
少し面倒なのが数学です。理不尽な計算量を要求する問題も多く、東大などの王道的な良問とはまた違ったベクトルの問題となっており、数学が得意であっても慶応医学部の問題では思ったように点数が伸ばせない可能性があります。「東大理3合格者が滑り止めのはずの慶応医に落ちる」ことが時々あり、そのようなことを根拠にして慶応医学部の難易度は過大評価されがちですが、恐らく、数学で引っ張って東大理3に合格するタイプの受験生が、慶応医学部ではあまり点数が伸ばせていないのが実情なのかなあと思っています。
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