総評
- どの科目も標準問題を抑えておけば合格点には到達するが、全体的に難易度が高いことから、理科・数学で得意科目があれば大きくアドバンテージがとれる大学
どの科目も標準問題を抑えておけば合格点には到達するものの、全体的に難易度が高いことから、理科・数学で得意科目があれば大きくアドバンテージをつけることが出来る大学と言えるでしょう。英語でも差をつけることはできますが、専門性の高い英文が出題されるため理数よりは爆発力に劣るでしょう。
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入試の基本情報と面接
- 数学100点、理科200点、英語100点
- 二次試験:小論文+面接。
- 面接:7分間×6回。うち通常面接は1回。その他は課題に対する意見などを答える。
- R2は定員110名、一次合格497名、合格者321名(繰上げ含)
- 学納金 2,250万(6年間)+α
- 東京都からの奨学金枠5名アリ。卒後9年都内の病院勤務&診療科縛りあり。
- 首都圏以外の地域を5区分に分け、各区分から最低1名合格者を出す
- 慈恵医大発表の合格最低ラインはおそらく地域区分での合格者の最低点。本動画の合格最低ラインは若干高めに設定。
国語 | 数学 | 理科 | 英語 | 面接 | 合計 |
– | 100 | 200 | 100 | – | 400 |
定員のほぼすべてが一般枠です。配点は私立医学部の標準的な配点です。
<面接に関して>
一次試験に合格すると二次試験で、小論文と面接があります。面接については7分程度の面接が6回ある形式で、普通の面接が実施されるのはそのうち1回で、課題を与えられてその内容や意見について答える形式の質問が大半を占めます。
二次落ちも結構あるようなので、多少は練習しておいてもいいかもしれませんね。令和2年度の入試では、一般選抜の定員110名に対して、一次合格は497名、繰り上げ含む合格者数は321名となっています。一次合格し、二次の補欠合格をもらっても補欠順位が下位であれば不合格の可能性があります。
<学納金に関して>
ちなみに、学納金は6年間の合計で2250万円になり、私立の医学部としては安めの学費となります。その他、学生会経費、保護者会経費、各種試験の受験費用などがプラスアルファで発生します。
<東京都地域枠>
また東京都からの奨学金が支給される東京都地域枠も5名あります。一般枠と併願可能です。学費2250万円を総額貸与、それに加えて月10万円の生活費の貸与まであります。卒後9年の間、東京都の病院縛りに加え、小児科・産婦人科・救急などの診療科縛りもありますので、注意をしてください。
数学の分析
<目標得点ライン>
満点100/H80/M65/L55/L-50/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン)
- 試験時間90分、大問4問構成。全体的な難易度はやや難レベル
- ボリュームはちょうどよいか、やや多め
- 頻出分野は数Ⅲ、微積、確率
- 対策:必要最小限なら、確率&大問2以降の(1)を正答を狙う。それ以上を狙うなら東大・京大に準ずる対策。『やさしい理系数学』『ハイレベル理系数学』『マスターオブ整数』等
大問 | 分野 | 難易度評価 |
1 | 確率 | B** |
2 | 数3微積 | C*** |
3 | 整数 | C** |
4 | 空間ベクトル・数3微積 | C*** |
<試験問題の概要>
制限時間は90分の試験で、大問は4問構成です。全体的な難易度はやや難レベルです。
令和2年度では大問1の確率の問題は最も易しく、典型かつ標準的な問題で難易度評価B、大問2は数3微積の問題で、(1)は必ず得点したいものの(2)は不等式の評価に慣れていないと厳しい問題でした。難易度評価はCです。
大問3は整数の問題で、良問ではあるものの、場合分けの必要性に自分で気づいたうえで、条件に合うように慎重に論証を行う必要がある問題でした。難易度評価はCとしています。大問4は空間ベクトルと数3微積の融合問題で、難易度評価Cとしています。
全体的に、思考力や論証力を要求する問題が多い傾向にあります。制限時間90分に対して、分量はちょうどいいくらいかやや多めです。小問こそ少ないものの、方針を立てる段階や解答を書く時間でけっこうな時間を要する印象です。
<頻出分野>
頻出分野は数3微積と確率ですが他の分野はまんべんなく出題されているようです。融合問題の出題も多く、あまり山を張った勉強はお勧めできません。
<東京慈恵医科大数学の対策>
必要最小限の得点を確保するだけなら、比較的やさしい確率の問題と、大問2以降の(1)を正答するだけで構いません。これらの問題を落としてしまうと目も当てられませんので、確率の分野を中心に、網羅系問題集を用いたインプット学習は必須でしょう。
それ以上の対策を行うのであれば、思考力や論証力を問う問題が多いことを踏まえて、東大や京大の対策に準ずる対策を薦めます。やさしい理系数学のレベルは勿論、ハイレベル理系数学の水準の問題演習や、整数問題対策のためにマスターオブ整数などの対策本に手を出すのも悪くはないでしょう。
英語の分析
<目標得点ライン>
満点100/H80/M65/L55/L-50/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン)
- 試験時間60分、大問3問
全て長文問題も作文の小問あり - 《難易度評価》
1 読解/約500語/C
2 読解/約700語/B
3 読解/約500語/B - 大問1に時間かかるため、試験時間ややタイト
- 対策:直近4年分以前の過去問は積極的に取り組む必要ないか。傾向不安定。併願校の対策がそのまま生かせるか。
大問 | 種別 | ワード数 | 難易度評価 | 備考 |
1 | 読解 | 約500 | C | 医学の専門性高 |
2 | 読解 | 約700 | B | |
3 | 読解 | 約500 | B |
<試験問題の概要>
60分の試験で、大問は3問です。すべて長文問題ですが、小問単位で作文の出題もあります。
<専門性の高い長文あり/物理選択は苦しいか>
大問1は科学雑誌からの引用で、語彙及び内容の専門性がいずれも高く、語彙レベルはやや難、内容レベルは難としています。生物選択なら辛うじて内容についていけるか、といった感じで、物理選択であれば理解に苦しむ内容でしょう。空所補充、同義語選択、内容理解を問う問題に加え、長文内容を踏まえた自由英作文の出題もあります。30ワード程度の短いもののようですが、長文内容がそもそも難しいので得点率はかなり低かったんじゃないかと思われます。
<大問2以降は普通の長文>
大問2は長文問題で、これに関しては大問1に比べると、語彙レベルも内容のレベルも標準的な文章となっています。空所補充がメインの設問形式となっていますが、一部に難しい問題があるものの概ね標準的な難易度で、文章の理解度でほどほどに差のつく難易度でしょう。
大問3も長文問題で、内容のレベルも語彙レベルも標準的です。設問のタイプは設問1とほぼ同様で、空所補充問題、同義語選択問題、内容理解を問う問題、そして最後に空所補充の形をとった自由英作文の問題があります。これも一文挿入すればいいので分量は少ないですが、長文内容の理解が必要であるためそれほど得点できなかった受験生が多いように思います。
<時間配分に関して>
時間については、大問1の読解に時間がかかるためややタイトです。
しかしながら捨て問などを作らないといけないレベルで難しいわけではありません。明らかに専門性の高い文章は後回しにし、ふつうの長文問題を片づけてからゆっくり取り組みましょう。
<出題傾向が不安定>
東京慈恵会医科大の英語の対策としては、現状、直近4年分の過去問以外は積極的に取り組む価値があまりありません。平成30年度から大幅な形式の変更があり、それ以降も和文英訳があったりなかったりとマイナーチェンジが続き、傾向が不安定となっています。長文は受験生なら誰でも対策しますし、英作文も結局短文の英作文なので、併願校の対策でどうにかなるでしょう。
化学の分析
<目標得点ライン>
満点100/H75/M60/L50/L-45/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン )
- 試験時間120分(2科目)。大問4問構成。例年有機1問、高分子1問の出題。
- 時間やや厳しい。R2は有機がカギか。
- 対策:『重要問題集』はB問題までトレーニング。
分野絞ってでも『新演習』レベルまで対策。直前期は資料集を用いて実験の確認も。
大問 | 分野 | 分量 | A | B | C |
1 | 理論 | 標準 | 45% | 20% | 35% |
2 | 無機 | やや多 | 25% | 45% | 30% |
3 | 有機 | 標準 | 15% | 60% | 25% |
4 | 有機 | 標準 | 15% | 40% | 45% |
<出題分野の傾向>
大問4問構成で、令和2年度では大問1が理論、大問2が無機、大問3と4が有機という構成でした。
ただしこのパターンは変則的で、例年有機は1問で代わりに高分子が1問出題されるのが通常のパターンです。無機についても毎年そこそこは聞かれているのできちんと対策しておきましょう。
<試験問題の概要>
令和2年度では、1番の理論の問題は前半部分はおおむね標準的ですが、後半部分にやや複雑であったり難しい問題が目立ちます。前半部分を確実に正答できたかどうかがカギになりそうです。
大問2は無機の問題ですが、計算問題も多く正しく計算が出来るかどうかで差のついた問題だったように思います。知識メインで聞く年度も多いですが、この年度に関しては計算問題も多い年度でした。
大問3は有機の構造決定問題ですが、標準~やや難レベルです。ただしオール・オア・ナッシングな形の設問で、出来る人はほぼ完答、出来なかった人はボロボロといった形になったことでしょう。最も差がついた問題なんじゃないかと思われます。可能な限り稼ぎたい大問でした。
大問4は有機の実験問題で、高分子の代わりに出題されました。実験操作に関する細かい事項がネチネチと聞かれ、殆ど壊滅状態だった受験生も多かったんじゃないでしょうか。これまでも時々は実験操作に関する問題は出題されていましたが、こう全面的に実験操作の問題が目立ってくると面食らった受験生も多かったでしょう。
全体的な難易度は標準~やや難レベルで、大問4以外はほどほどに差がつく設問でした。
<時間配分に関して>
理科2科目で120分なので、化学には60分割けることになります。時間に関してはやや厳しく、この年度では有機がスムーズに完答できたかどうかで余裕が出たかどうかが変わったでしょう。
<東京慈恵医科大化学の対策>
重要問題集はB問題も含めてトレーニングをしておきたいところです。また、全体的に難しい問題が出題されていることから、有機分野など分野を絞ってでもいいので、化学の新演習レベルにもチャレンジしたいところです。もちろん、余裕があれば理論を含め全分野こなしてもらって構いません。
物理の対策
<目標得点ライン>
満点100/H80/M65/L55/L-50/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン )
- 試験時間120分(2科目)、大問3問。原子も頻出レベル。しっかり対策。
- ややこしい問題飛ばせば、時間少し余る程度
- 対策:『重要問題集』のB問題レベル、『名門の森』のレベルまで押さえておきたい。目新しいテーマに落ち着いて取り組めることが本質的に大切。十分に過去問演習の実施を。
大問 | 種別 | 分量 | A | B | C |
1 | 力学 | やや少 | 60% | 20% | 20% |
2 | 電磁気 | やや多 | 50% | 30% | |
3 | 熱 | 標準 | 50% | 30% | 20% |
<出題分野の傾向>
力学と電磁気は固定、残る1問が波動か熱か原子となっている年度が多いようです。原子もしっかり出題されており、むしろ頻出と言ってよいレベルなのできちんと対策しておきましょう。
<試験問題の概要>
令和2年度では、第1問の力学はぱっと見目新しい題材を使っており面食らいますが、結局殆どの設問は典型的な問題ですので、落ち着いて取り組めば殆ど正答できるはずです。
第2問は電磁気の問題で、これもまたリード文にやたら長い説明がありますが、正直なところこのリード文をあまり理解していなくても殆どの設問は解けてしまいますので、これもまた見掛け倒し感の強い問題です。
第3問は熱で、これも新しい概念が登場しますが、リード文にしっかり説明があるので、この手のタイプの問題に慣れている受験生ならさくさく解答できることでしょう。
<時間配分に関して>
全体的な時間は、ややこしそうな設問を飛ばしながら進めていくなら少しあまるくらいかもしれません。リード文が分かりにくくてもあまりこだわらずに、先に読み進めてテンポよく解答していきましょう。
<東京慈恵医科大化学の対策>
重要問題集のB問題レベル、名問の森の★★レベルまで抑えておきたいですが、本質的に大事なところは目新しいテーマでも落ち着いて取り組むための姿勢ですので、過去問演習の時間は十分に取っていきましょう。
生物の対策
<目標得点ライン>
満点100/H80/M65/L55/L-50/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン )
- 試験時間120分(2科目)、大問4問。分野の偏りほとんどなし。
- 粒ぞろいの考察問題多く、そこそこ時間タイト。
- 対策:『基礎問題精講』等の標準的な問題集を終え、『標準問題精講』にも手を付けたい。余裕あれば遺伝対策も。
大問 | 分野 | 分量 | A | B | C |
1 | 代謝 | やや多 | 15% | 50% | 35% |
2 | 神経 | 標準 | 75% | 25% | |
3 | 発生 | 標準 | 20% | 50% | 30% |
4 | 分子生物 | 標準 | 10% | 65% | 25% |
<試験問題の概要>
大問1は代謝の問題で、厳密な理解の上に考察を解かせるタイプのもので、得点は伸びにくいタイプのものだったかもしれません。
第2問は神経の問題で、標準的な問題が多いですが細かい理解を問う問題もちらほら見られます。
第3問は発生の問題で、簡単な知識問題に加え、遺伝計算、考察問題もあわさった問題でした。第4問は進化の問題で、後半の設問を除けば概ね標準的な問題でした。
<出題分野に関して>
東京慈恵会医科大生物は分野の偏りが殆どありません。生態や植物生理、進化などの分野も含め、満遍なく出題が見られます。ちょっぴり代謝の問題の頻度が高いくらいでしょうか。理科については小問ごとの難易度評価をつけ、その結果を表にまとめています。
<時間配分に関して>
理科2科目で120分なので、生物には60分程度の時間は割けます。時間については、粒ぞろいの考察問題が結構な数ありますので、それなりにタイトです。後ろのほうの大問に標準的な問題が隠れていることもあるので、難しいと思ったら無理せず飛ばして、テンポよく解答していきましょう。
<東京慈恵医科大生物の対策>
基礎問題精講などの標準的な問題集を抑えた後、標準問題精講など考察系問題集にも手を付けたいところです。余裕があれば遺伝対策も行うとより万全の対策となるでしょう。
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