総評
- 全体的に基礎~標準問題を短時間で解かせるタイプの問題
- 例外的に物理の問題だけが非常に難しい
- 令和4年度より標準化された得点で合否判定が行われる
私立医学部は基本的に"理科ゲー"になり、理科依存の得点になる受験生が多いとは思いますが、理科の選択の有利不利がはっきりしている大学を受ける際には注意をする必要があります。
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入試の基本情報と面接
- 《配点》 数学(100)、 英語(100)、理科2科目(150)
- 一次試験合格で二次試験へ(小論文(60)+面接(110))
- 面接:20分程度/グループディスカッション
- 学納金 約3,950万円(6年間)+α
- その他の入試制度
一般入試後期(10名):理科&数Ⅲなし
AO入試(21名):25歳以下/キャリア縛り5年間
卒業生子女入試(8名):上記AO入試出願条件+同窓生の子女
指定校推薦(6名):一浪まで/指定校在校生 - R4入試より得点は標準化される
国語 | 数学 | 理科 | 英語 | 面接 | 合計 |
– | 100 | 150 | 100 | 110+小論60 | 520 |
<面接はグループディスカッション>
最も定員が多い一般入試前期について説明します。配点は理科が1.5倍の配点で、数学100点、英語100点、理科2科目で150点の配点となっています。一次試験に合格すると二次試験で、小論文と面接が実施されます。小論文に60点、面接に110点の配点があります。面接については約20分のグループディスカッションになっています。出しゃばり過ぎず、引っ込み過ぎず、ほどほどに空気を読みながら切り抜けてください。
<学納金は高額>
学納金は6年間の合計で約3950万+諸経費となっており、私立医の中でも、トップクラスの学費になってきます。
<その他の入試制度/指定校や子女入試も目立つが、AO入試の定員にも着目>
・理科・数3なしで有名な一般後期入試で10名の定員
・25歳以下縛り、金沢医大病院及び関連病院への5年間縛りのあるAO入試で21名の定員
・この縛り(AO入試)に加えて同窓生の子女であることを求める卒業生子女入試で8名の定員
・一浪までOK、金沢医大で指定された高校に在校生のみが出願できる指定校推薦で6名の定員
があります。受験生になってからの努力ではどうにもできない入試形式が目立ちますが、理科も数3もない後期試験や、出願要件がゆるく定員も多いAO入試はねらい目かもしれません。
<得点は標準化される>
なお、令和4年度入試より、金沢医科大学の入試の得点は全て標準化された得点となります。いわゆる偏差値が得点となります。故に、科目間の有利不利はほぼ発生しません。
数学の分析
<目標得点ライン>
満点100/H85/M70/60/L-55/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン)
- 時間:60分間/大問4問
- 難易度評価
①確率・三角関数・B**
②数Ⅱ微積・B**
③数列と極限・ベクトル・B*
④数Ⅲ微積・B*** - 全体的な難易度は標準レベル。
- 試験時間に対して分量はかなり多い。
- 数Ⅲ微積が毎年出題。数列と極限、確率も頻出。
- 対策:網羅系問題集でのインプット学習必須。アウトプットは『チョイス』『核心(標準編)』がお薦め。
問題番号 | 分野 | 難易度 |
1 | 確率・三角関数 | B** |
2 | 数Ⅱ微積 | B** |
3 | 数列と極限・ベクトル | B* |
4 | 数Ⅲ微積 | B*** |
数学の分析に入ります。制限時間は60分で、大問4問構成です。どの大問もマーク式です。令和2年度の難易度評価は、大問1から大問4まですべてBとしました。
<試験問題の概要>
全体的な難易度は標準レベルです。センター試験、共通テストに準じた難易度ではありますが、誘導小問の数を減らして少し難易度が上がっている感じです。
<時間配分>
制限時間60分に対し、分量はかなり多くなっています。その主な要因は令和2年度では大問4の計算が膨大になっていることです。工夫次第で計算量を減らせるような問題もありますので、そのような計算を減らすための工夫を知っていると、得意な人なら間に合うかもしれません。
<頻出分野>
毎年出題されているのは数3微積で、面積の計算が特によく出題されています。次点で数列と極限、確率などもよく出題されています。
<金沢医大数学の対策>
金沢医大の数学の対策としては、標準問題中心の出題であるため、網羅系問題集を用いたインプット学習は必須となるでしょう。アウトプット演習はチョイス新標準問題集、理系数学入試の核心(標準編)などを薦めます。本番の試験の計算量は多めなので、普段の演習から早く正確な計算を心がけてください。
英語の分析
<目標得点ライン>
満点100/H95/M75/L70/L-65/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン)
- 時間:60分間/大問4問
- 難易度評価
①長文・A
②長文・A
③長文・A
④長文・A - 難易度は易しいが、時間が少なく完走困難。残り数分になったら、「とりあえずマーク」が必要。
- 対策:読解問題ばかりのため、特筆すべき対策はなし。かなりの速読型の試験。普段から意識して学習。
問題番号 | 分野 | 難易度 |
1 | 長文 | A |
2 | 長文 | A |
3 | 長文 | A |
4 | 長文 | A |
英語の分析に入ります。制限時間は60分の試験です。
<試験問題の概要>
大問4問、全て長文です。語彙レベルも易しく、内容も平易ですので、問題を解くのはさくさく進むと思われます。空所補充などを中心に、内容理解を問うマーク式の問題が大半を占めますが、普通の問題で、特筆すべき事項はありません。
<時間配分がシビア>
問題難易度は大したことはないのですが、時間は60分しかないので、時間内に完走するのはかなり困難です。共通テストよりもタイトといって良いくらいで、試験本番で全てマークしきれないかもしれませんが、残り数分になった段階でとりあえずマークは済ませておくくらいのことはしておいたほうがいいかもしれません。
<金沢医大英語の対策>
金沢医大の英語の対策は、結局読解問題ばかりなので、特筆すべき対策はありませんが、かなり速読型の試験となっているので、そこだけ意識をして普段の演習に取り組んでください。
化学の分析
<目標得点ライン>
満点75/H70/M65/L60/L-55/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン )
- 時間:90分間(2科目)
- 難易度評価
①理論・A
②理論・A
③理論・B
④理論・B
⑤理論・A
⑥有機・B
⑦高分子・B - 全体的に基礎レベルの問題。満点も狙えるレベル。
- 問題難度が平易なため、45分でちょうどよいくらいの分量。
- 対策:理論は『重要問題集』A問題レベルまでで基本OK。高分子が毎年出題、無機もよく出題されるため、直前期に詰め込むと多少プラスになるか。
問題番号 | 分野 | 難易度 |
1 | 理論 | A |
2 | 理論 | A |
3 | 理論 | B |
4 | 理論 | B |
5 | 理論 | A |
6 | 有機 | B |
7 | 高分子 | B |
化学の分析に入ります。理科2科目併せて90分なので、化学には45分割けることになります。
<出題範囲の偏り/理論メインで出題>
令和2年度では理論5問、有機1問、高分子1問のセットでした。大問数は多いですが、大問1つ1つはかなり軽めになっています。高分子は毎年出題されてるようです。無機は出る年が大半ですが、出ない年もあります。問題数が年度によって異なりますが、例年理論重視の出題になっています。
<試験問題の概要>
全体的に基礎レベルの問題で、満点も狙っていけるレベルの問題です。
<制限時間/45分しかないが問題平易なので余りそう>
制限時間は45分しかありませんが、問題難易度が平易なので、ちょうどよいくらいの時間となったでしょう。
<金沢医大化学の対策>
金沢医大の化学の対策としては、重要問題集A問題レベルまでで基本的には構いません。高分子は毎年出題、無機も良く出題されているので、直前対策として知識を詰め込むと多少プラスになるでしょう。
物理の対策
<目標得点ライン>
満点75/H55/M37/L30/L-25/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン )
- 時間:90分間(2科目)
- 難易度評価
①力学・C
②波動・C
※例年は大問4問 - R2は明らかに難化。この数年は物理選択に不遇の状態。
- 難しすぎて歯が立たず、時間は余ったか。
- 対策:対策難しい。最難関の問題集まで取り組んでも、制限時間内に解き切れるかが微妙。普段の演習は『重要問題集』A問題、『良問の風』レベルで構わない。解ける問題を取捨選択し、化学へ時間を割く。
問題番号 | 分野 | 難易度 |
1 | 力学 | C |
2 | 波動 | C |
物理の分析に入ります。理科2科目併せて90分なので、物理には45分割けることになります。
<出題範囲の偏り>
大問2問構成で、令和2年度では、力学1問、波動1問というセットでした。この年度は例外的な構成となっており、例年、大問4問構成で、電磁気・波動・原子の分野も含めて幅広く出題されています。
<令和2年度では特に難化>
令和2年度では明らかに難化しており、殆どの受験生は前半の設問だけ拾って終わり、という形に終わったんじゃないでしょうか。令和2年度は特にきついのですが、ここ最近、物理選択がかなり不遇な状態が続いているようです。
<制限時間/難しすぎて逆に時間が余る>
制限時間は45分程度ですが、難しすぎて歯が立たず、逆に時間が余った受験生が多いんじゃないでしょうか。余った時間を化学に割けたかどうかが合否の分かれ目になったと言っても過言ではありません。
<金沢医大物理の対策>
金沢医科大学の物理の対策は非常に難儀です。難しい問題が出題されているので難しい問題集までやるべきかという話にもなるのですが、最難関の問題集まできちんと取り組んだとしても、制限時間内できちんと点が取れるかどうかは正直微妙なところです。ゆえに、普段の演習としては、重要問題集A問題や、良問の風レベルの演習で構いません。試験本番では、自分の実力でも解けそうな問題を取捨選択して解き、残った時間は化学に割きましょう。
<目標得点ライン/標準化得点のからくり>
目標点数に関しては、Highは55、Middleは37、Lowは30、Lowマイナスは25点と設定しました。このラインは素点ベースの目標得点となりますが、実際の得点は令和4年度入試より、標準偏差を用いて標準化されます。令和2年度では極端に低い得点となっており、実際物理選択は大きく不利だった試験なのでしょう。ただし同様の難易度の問題が令和4年度以降で出題されたとしても、得点の標準化により実際の得点はかなり上がると予想されます。
得点が標準化されるパターンでは一見有利不利が無いように見えて、物理有利になることが多々あります。どうしようもない記念受験勢は物理では壊滅的な得点となりますが、生物ではそこまで壊滅的な得点とならないことから、真っ当に勉強してきた受験生の相対的な立ち位置は、物理選択のほうが有利になることがあります。また物理のほうが優秀な受験生が満点を取りやすい傾向にあるのも一つの要因でしょう。ただし今回の試験では、物理が非常に得意でも、7割取れたら奇跡、といって良い難易度であるため、物理選択がそこまで有利とは見えず、得点が標準化されても生物選択とほぼイーブンかと思われます。
生物の対策
<目標得点ライン>
満点75/H65/M55/L50/L-47/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン )
- 時間:90分間(2科目)
- 難易度評価
①小問集合・A~B
②体内環境・A
③進化・B - 超典型問題が並ぶ。しっかり勉強してきた受験生なら時間は余るくらいか。
- 対策:『基礎問題精講』等の標準的な問題集でちょうどよい。遺伝は集団遺伝が少し出ている程度。特別な対策は不要。
問題番号 | 分野 | 難易度 |
1 | 小問集合 | A~B |
2 | 体内環境 | A |
3 | 進化 | B |
生物の分析に入ります。理科2科目併せて90分なので、生物には45分割けることになります。
<出題分野の偏り>
金沢医大の生物は分野の偏りはあまりありません。生態や進化、植物生理の出題もちょいちょいあります。
<試験問題の概要>
大問1は色々な分野からの小問集合、大問2と3はある程度まとまりのある大問となっています。色々な問題集に収録されている超典型問題が並びますが、典型問題の中でも受験生の出来の悪そうな問題がよく出題されている印象です。このような問題は予備校などでも丁寧に説明されると思いますから、一つ一つしっかり消化していきましょう。
<制限時間に関して>
制限時間は45分しかありませんが、超典型問題が並ぶため、しっかり勉強している受験生なら時間が余るくらいでしょう。
<金沢医大生物の対策>
金沢医大の生物の対策としては、基礎問題精講などの標準的な問題集でちょうど良いでしょう。恐らく出題者も基礎問題精講をベースにして問題作ってるのでは?と思うくらい、被り問題が多いです。遺伝に関しては集団遺伝がちょろっと出てきているくらいなので、特別な対策は不要です。
全体の得点戦略
- 物理以外は基礎~標準問題を短時間で解くタイプの問題。
- 物理以外は何を勉強しても成績が上がる。物理以外を頑張れ。
H | M | L | L- | 満点 | |
数学 | 85 | 70 | 60 | 55 | 100 |
英語 | 95 | 75 | 70 | 65 | 100 |
物理 | 55 | 37 | 30 | 25 | 75 |
化学 | 70 | 65 | 60 | 55 | 75 |
生物 | 65 | 55 | 50 | 47 | 75 |
合計 | 315 | 265 | 240 | 222 | 350 |
<恐らく得点調整?>
金沢医大の全体の得点戦略について考察してみようと思います。金沢医大の一次合格の最低点は213点と公表されています。この得点はあくまで一次合格の最低点であり、実際の合格ラインはもう少し上に考えられるため、生物選択の繰り上げ合格最低点ラインであるLマイナスラインの合計点を222点と設定しました。敢えて生物選択としています。この年度の物理は非常に難しく、恐らく、令和2年度では、ある程度は得点調整がなされたんじゃないかと予想しています。
<物理以外を頑張れ>
令和4年度以降、金沢医大の入試の得点は標準偏差を用いて標準化されます。元々金沢医大の問題は、物理以外は基礎~標準問題を短時間で解かせるタイプのものが多く、物理以外はどの科目もほどほどに実力差のつく問題になっているんじゃないかと思います。物理だけは難しめの難易度が定着しているようなので、めちゃくちゃ出来るなら物理で圧倒的な差もつけることも理論上出来るのですが、恐らくそのような受験生は、「物理だけなら慶応の医学部も受かる」くらいの実力がある人くらいで、普通の受験生は狙う水準ではありません。「物理以外は何を勉強しても成績が上がる、物理以外を頑張れ」というのが結論と言えるでしょう。
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