総評
- 入試形式の変更により全科目が非常に平易な問題へ
※一次試験 全科目で得点標準化
日大医学部の入試は、入試形式の変更により、全科目が非常に平易な問題となったことが大きな特徴でしょう。また一次試験の全科目で得点が標準化されるようになることもポイントでしょう。以前の主要な形式であるA方式入試も、理科だけがくせ者だったため、二次試験で大きな傾向変化が無ければ、以前に紹介した福岡大や久留米大に引けを取らないレベルの易問高得点型になったと言えるでしょう。
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入試の基本情報と面接
- 《配点》 数学(100)、 英語(100)、理科2科目(200)
- 一次試験合格で二次試験へ。面接(60)+英語(60)+数学(60)
面接:10分×2回/個人/バリエーションあり - 学納金 約3,338万円(6年間)+α
- その他の入試制度
N全学統一方式[第2期](10名)
校友会子女入試(5名):親族にOBOG - 一次試験の得点は標準化される(これまで:理科のみ R4~:全科目)
- R4よりN方式メインへ変更
以下、英数はN&Aを両方分析、理科はNのみ分析
国語 | 数学 | 理科 | 英語 | 面接 | 合計 |
– | 一次100+二次60 | 200 | 一次100+二次60 | 60 | 580 |
<全学共通のN方式を中心とした試験へ>
最も定員が多いN全学統一方式(第1期)について説明します。まず、一次試験として全学共通問題での学科試験があります。配点は理科が2倍の配点で、数学100点、英語100点、理科2科目で200点の配点となっています。一次試験に合格すると二次試験で、面接60点のほか、再び学科試験があり、英語60点、数学60点の配点があります。面接については10分の個人面接が2回という形式で、志望動機など普通の質問に加え、色々なバリエーションの質問がなされるようです。ガチガチに対策というのも難しいですから、教員とのコミュニケーション能力が試されていると思って、答えにくい質問や分からない質問に関しては素直にわからないと答え、ずっと黙り込んでいるなどということがないようにしましょう。
<学納金は高額>
ちなみに、学納金は6年間の合計で約3338万+諸経費となっており、私立医の中でも、そこそこくらいの学費になってきます。
<その他の入試制度>
日大医学部のその他の入試制度について説明します。
・日程や定員の異なるだけのN全学統一方式第2期で10名の定員
・親族に日大のOB・OGがいることが求められる校友会子女入試で5名の定員
があります。校友会子女入試はおそらく医学部以外のOB・OGでもOKで、校友会入試で出願すると、N全学方式の第1期には出願できなくなります。
<得点は標準化される>
なお、日大医学部の一次試験の得点は標準化された得点となります。いわゆる偏差値が得点となります。今までは理科のみで標準化があったようですが、令和4年度より全科目で標準化されます。また、一次試験では標準化がされますが、二次試験については恐らく素点で加算されます。
<令和4年度より大きな入試制度の変更/N方式がメインに>
これまで日大医学部では、医学部専用のA方式がメインで、全学共通問題で選抜するN方式は僅かな定員しかありませんでした。令和4年度より、これが大きく変更され、全学共通問題で選抜するN方式がメインとなりました。しかしながら純粋なN方式とは異なり、一次試験では全学共通問題で選抜されるものの、二次試験では医学部専用問題の数学・英語で選抜されます。故に今回の分析では、数学・英語は全学共通問題とかつての医学部専用A方式の分析を両方、理科に関してはN方式の問題のみを分析することとします。
数学の分析
<目標得点ライン>
N方式 満点100/H85/M75/L70/L-65/
A方式 満点60/H51/M48/L45/L-42/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン)
- 試験時間/大問数
(N方式)60分/大問6問
①小問集合・A4問
②平面ベクトル・三角関数・A*
③空間ベクトル・B**
④確率・B**
⑤数列・B*
⑥数Ⅲ微積・B** - (A方式)75分/大問5問
①小問集合・A3問、B1問
②小問集合・A3問、B1問
③確率・A**
④数Ⅲ微積・B**
⑤数Ⅲ微積・A* - 全体的な難易度はやや易しい~標準。教科書レベルがN:6割、A:8割以上、を占める
- 時間配分・ボリューム
(N方式)分量かなり多く時間足りないか。
(A方式)分量ほどほど。すぐに方針立つ。 - 頻出分野
(N方式)確率と空間ベクトルがほぼ毎年出題。次いで数Ⅲ微積
(A方式)前半は数ⅠAⅡB中心、後半は数Ⅲ微積中心 - 対策:網羅系問題集でのインプット学習必須。アウトプットは『チョイス』『核心(標準編)』がお薦め。
問題番号 | 分野 | 難易度 |
1 | 小問集合 | A4問 |
2 | 平面ベクトル・三角関数 | A* |
3 | 空間ベクトル | B** |
4 | 確率 | B** |
5 | 数列 | B* |
6 | 数Ⅲ微積 | B** |
問題番号 | 分野 | 難易度 |
1 | 小問集合 | A3問、B1問 |
2 | 小問集合 | A3問、B1問 |
3 | 確率 | A** |
4 | 数Ⅲ微積 | B** |
5 | 数Ⅲ微積 | A** |
数学の分析に入ります。一次試験にあたるN方式と、二次試験にあたる医学部専用のA方式を同時に紹介します。
N方式では制限時間60分、大問6問構成です。大問1は小問集合、大問2以降は記述式の問題となっています。令和2年度の難易度評価は、大問1、大問2はA、大問3〜大問6までBとしました。
A方式では制限時間75分、大問5問構成です。大問1と2は小問集合で難易度評価はA〜B、大問3はマーク式の確率の問題で難易度評価B、大問4、大問5は数3微積の記述式の問題で難易度評価はそれぞれB,Aとしています。
<試験問題の概要>
全体的な難易度はやや易しい〜標準レベルです。教科書レベル、教科書傍用問題集レベルの問題でN問題では6割を占め、A問題では8割以上を占め、ひねりもない方針の立ちやすい問題が中心です。意外なことに、全学共通のN方式の問題より、医学部専用のA方式の方が、難しいという結果になりました。
<時間配分>
N方式では分量はかなり多く、制限時間60分では時間が足りなくなる受験生もいるのではないでしょうか。問題数が多いので、大問1や2など、方針がたちやすく計算量も少ない問題は素早く捌いていきたいところです。その一方で、A方式では分量はほどほどくらいで、問題数こそ少し多いのですが、方針が速攻で立つのでほぼほぼ手の運動となっています。
<頻出分野>
頻出分野に関しては、N方式では確率と空間ベクトルがほぼ毎年出題されており、次点で数3微積と行ったところになります。A方式では、前半部分の小問集合では数1A2B中心ですが、後半の記述式では数3微積が大半のようです。
<日大医学部数学の対策>
日大医学部数学の対策としては、典型問題、標準問題中心の出題であるため、網羅系問題集を用いたインプット学習は必須となるでしょう。教科書レベルの問題も多いので、網羅系問題集に取り組む際も例題だけのトレーニングでも全然構いません。アウトプット演習はチョイス新標準問題集、理系数学入試の核心(標準編)などを薦めます。N方式でもA方式でも数3は頻出なので、きちんと対策してください。
英語の分析
<目標得点ライン>
N方式 満点100/H100/M85/L82/L-80/
A方式 満点60/H60/M51/L48/L-45/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン)
- 時間/難易度
(N方式)60分
①文法・A
②文法・A
③発音・A
④会話文完成・A
⑤空欄補充・A
⑥長文・B
⑦長文・B - (A方式)75分
①長文・A
②長文・A
③長文・A
④長文・B - 時間配分・ボリューム
(N方式)分量多くなく、時間は少し余る程度
(A方式)時間たっぷり。余る受験生が多いか。 - 対策:特筆すべき点は無し。高得点勝負になるため、1ミスが命取りに。きちんと見直しが必要。
問題番号 | 分野 | 難易度 |
1 | 文法 | A |
2 | 文法 | A |
3 | 発音 | A |
4 | 会話文完成 | A |
5 | 空欄補充 | A |
6 | 長文 | B |
7 | 長文 | B |
問題番号 | 分野 | 難易度 |
1 | 長文 | A |
2 | 長文 | A |
3 | 長文 | A |
4 | 長文 | B |
英語の分析に入ります。制限時間はN方式で60分、A方式では75分の試験です。
<試験問題の概要>
N問題では、前半パートでは文法や発音などの問題も多いですが概ね平易な問題で、後半パートは標準レベルの長文といった構成になっています。一方で、A問題ではオール長文で、これも標準的な難易度です。
<時間もそこまできつくない>
N方式では制限時間60分しかないですが、そこまで分量が多くないので少し余るくらいの受験生が多いでしょう。A方式では75分もあるので、多くの受験生が時間を余らせたんじゃないかと思っています。
<日大医学部英語の対策>
日大医学部の英語の対策として特筆すべき事項はありませんが、高得点勝負で標準偏差も小さいと考えられるため、1ミスで標準化得点が大きく下がる可能性があることには注意しましょう。時間はそこまできつくないので、マークミスなどないか、きちんと見直しをしてください。
化学の分析
<目標得点ライン>
満点100/H100/M85/L80/L-75/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン )
- 時間:120分間(2科目)
- 難易度評価
①理論・A
②理論・A
③理論・A
④理論・A
⑤無機・A
⑥有機・A
⑦高分子・A - 全体的に基礎レベルの問題。満点も狙えるレベル。
- 全て平易なため、時間は余裕。見直し入念に。
- 対策:『重要問題集』A問題レベルまでで基本的にOK。時間無ければ、教科書傍用問題集の基本問題だけでも何とかなるかも。残り時間と相談して教材選択。
問題番号 | 分野 | 難易度 |
1 | 理論 | A |
2 | 理論 | A |
3 | 理論 | A |
4 | 理論 | A |
5 | 無機 | A |
6 | 有機 | A |
7 | 高分子 | A |
化学の分析に入ります。理科2科目併せて120分なので、化学には60分割けることになります。
<出題範囲の偏り/理論メインで出題>
令和2年度では理論4問、無機1問、有機1問、高分子1問のセットでした。大問数は多いですが、大問1つ1つはかなり軽めになっています。無機も高分子は毎年出題されているようです。
<試験問題の概要>
全体的に基礎レベルの問題で、満点も狙っていけるレベルの問題です。かつてのセンター試験より易しいくらいの問題が多く、共通テストの方が明らかに難しいと言って良いレベルです。化学の実力というよりは、ケアレスミスの有無だけで差がつく、そういった試験といって良いでしょう。
<制限時間>
問題が全て平易なため、制限時間もかなりの余裕が出るでしょう。しかしながら1ミスで標準化得点が大きく下がる可能性があるので、見直しは入念に行っておきたいところです。
<日大医学部化学の対策>
日大医学部の化学の対策としては、重要問題集A問題レベルまでで基本的には構いません。下手すると重要問題集A問題すらオーバーと言って良いレベルで、本当に時間がなければ、教科書傍用問題集の基本問題となっているところだけでも何とかなってしまうかもしれません。残り時間と相談して、テキストを選んでください。
物理の対策
<目標得点ライン>
満点100/H95/M80/L75/L-70/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン )
- 時間:120分間(2科目)
- 難易度評価
①力学・A
②波動・A
③電磁気・A
④熱・A
⑤原子・A - かつてのセンター試験並み、またはそれより易しい。苦手でなければ満点に近い高得点狙える。
- すべて平易な問題。時間が少し余る受験生が多いか。
- 対策:『重要問題集』A問題、『良問の風』レベルの演習。波動・熱・原子もセットで出題。バランスの良い学習を。
問題番号 | 分野 | 難易度 |
1 | 力学 | A |
2 | 波動 | A |
3 | 電磁気 | A |
4 | 熱 | A |
5 | 原子 | A |
物理の分析に入ります。理科2科目併せて120分なので、物理には60分割けることになります。
<出題範囲の偏り>
大問5問構成で、令和2年度では、物理の各分野から1問というセットでした。例年このような構成になっており、物理の各分野について満遍なく学習する必要があります。
<試験問題は平易>
問題難易度としては、かつてのセンター試験や、それよりも易しい問題が並び、苦手でなければ満点に近い高得点が狙っていけるでしょう。
<制限時間>
制限時間は60分程度ですが、全て平易な問題であるため、少し時間が余る受験生が多いかと思われます。
<日大医学部物理の対策>
日大医学部の物理の対策としては、重要問題集A問題や、良問の風レベルの演習で構いません。波動、熱、原子もセットで出てきますから、バランスの良い学習を心がけてください。
生物の対策
<目標得点ライン>
満点100/H95/M80/L70/L-65/
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン L-:繰り上げ合格者最低点予想ライン )
- 時間:120分間(2科目)
- 難易度評価
①代謝・A
②分子生物・B
③体内環境・B
④生殖・遺伝・B~C
⑤神経・A
⑥進化・B
⑦生態・A - 各大問はじめは平易だが、後半は難しい。R2はやや特殊。
- 難しい問題を考えすぎると時間は不足する可能性。
- 対策:『基礎問題精講』等の標準的な問題集でちょうどよい。難化にも備えるなら、一つ上の問題集にも取り組むと安心。遺伝は頻出のため対策必須。
問題番号 | 分野 | 難易度 |
1 | 代謝 | A |
2 | 分子生物 | B |
3 | 体内環境 | B |
4 | 生殖・遺伝 | B~C |
5 | 神経 | A |
6 | 進化 | B |
7 | 生態 | A |
生物の分析に入ります。理科2科目併せて120分なので、生物には60分割けることになります。
<出題分野の偏り>
日大医学部の生物は分野の偏りはあまりありません。生態や進化、植物生理の出題もしっかりあります。
<試験問題の概要>
大問の初めの方の設問は非常に平易ですが、後ろの方の設問になるにつれてだんだん難しくなってきます。この令和2年度だけやや特殊だったのかもしれませんが、標準問題だがややマイナーネタからの出題が多く、一部はかなり難しいパズル的な考察問題も含まれていました。例年もう少し易しいのでサクサク進むはずですが、この年度は医学部受験生の中でも若干の差がついた試験なんじゃないかと思われます。
<制限時間に関して>
制限時間は60分ありますが、あまり難しい問題を考え込みすぎると時間が足りなくなるかもしれません。
<日大医学部生物の対策>
日大医学部の生物の対策としては、基礎問題精講などの標準的な問題集でちょうど良いでしょう。しかしながらこの年度のように難化した問題にも対応するには、大森徹の最強問題集や生物重要問題集などにも取り組んでおくとより安心です。遺伝に関してはめちゃくちゃ難しいわけではないのですがよく出ているので、対策はほぼ必須と言って良いでしょう。遺伝計算を得意分野にして、得点源にしてください。
全体の得点戦略
- ケアレスミスに危機感を持つマインドが必要
H | M | L | L- | 満点 | |
数学(一次) | 85 | 75 | 70 | 65 | 100 |
英語(一次) | 100 | 85 | 82 | 80 | 100 |
物理 | 95 | 80 | 75 | 70 | 100 |
化学 | 100 | 85 | 80 | 75 | 100 |
生物 | 95 | 80 | 70 | 65 | 100 |
合計(一次) | 380 | 325 | 307 | 290 | 400 |
数学(二次) | 51 | 48 | 45 | 42 | 60 |
英語(二次) | 60 | 51 | 48 | 45 | 60 |
合計 | 491 | 424 | 400 | 377 | 520 |
<8割の得点は必要と予想>
日大医学部の全体の得点戦略について考察してみようと思います。日大医学部の合格者最低点は一応公表されてはいるのですが、理科が標準化された得点で加算した合計点が公表されているため、あまりあてにならず、分析には難渋しました。表には物理選択の場合の素点ベースの合計点を示してあります。易しい問題とは言え、なんやかんやでポロポロ落とすため、満点を取らないと不合格!というほどシビアではありませんが、一次も二次も8割以上の得点はなんとか取りたいところです。生物だけやや低めのライン設定になっていますが、例年はもう少し上になっているかと思われます。
<ケアレスミスを見つけるにも技術が必要>
日大医学部合格に向けた対策としては、基礎的事項の習熟に加え、試験本番でのケアレスミスをいかに見つけるかが課題になるでしょう。慣れていないと、見直しをしてもケアレスミスってなかなか見つけられません。普段の模試から、ケアレスミスゼロで通過できるようにトレーニングをしてみてください。「これはケアレスミスだ仕方ない」で済ませるのではなく、「ケアレスミスしてしまった!これで落ちてしまうかもしれない!」とミスに対して危機感を持つようなマインドになれば、こういうタイプの試験で落ちなくなります。
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