国公立医学部(50大学)前期入試 全科目まとめ

医学部入試対策についてはインターネット上で様々な情報が錯綜しています。「医学部受験生は難しい問題集までやらないとダメ」と言われたり、「医学部受験は基礎問題と標準問題の完成度だ」などと言われたり、「医学部受験は特殊な問題が出るから特化した対策をしないといけない」などと言われたり、矛盾したメッセージが氾濫しています。この矛盾は国公立で50、私立でも30余りある医学部を全て一括りにして話してしまうからこそ発生していると私は考えています。このチャンネルではこれまで、実際に50ある国公立大学の医学部入試の過去問を全科目コツコツ解き、分析動画(記事)をアップロードしてきました。この記事では、これまでの国公立50大学の医学部入試の分析を踏まえ、大学入試を問題タイプ別に分類し志望校選択や学習の方向性の指針としていただくことを目的としています。

7つのタイプ別分類

全部で50ある、医学部を持つ国公立大学をズバッと分類すると

  • 英数二科目型
  • 易問高得点型
  • 標準問題型
  • 標準・短時間型
  • 単科医大型
  • 旧帝大型
  • 特殊型

の7つにわけることが出来ます。それぞれどのような特徴があるでしょうか。

英数二科目型

  • 旭川、秋田、徳島、島根の4大学(宮崎は二次理科導入のため標準問題型へ移行)
  • 二次試験で理科が出題されない
  • 配点は現役有利だが、面接で現役優遇するかどうかは大学によってまちまち
大学名二次比率英数の偏り面接リスク備考
旭川医大39%英強有利標準面接点は以前と比べ1/3に圧縮
秋田大42%数強有利高め面接段階評価
徳島大31%イーブン一発アウト有理系科目重視配点
島根大40%数強有利やや低め国語重視配点

まずは英数二科目型から説明します。旭川医科、秋田、徳島、島根大の4大学が該当します。英数二科目型の大学では共通テストでは理科の試験も要求されるものの、二次試験では理科が無く英数二科目で受験できます。医学部に入ってからの勉強はほぼ理科、特に生物の延長線上で、英語も数学も実は滅多に出てきませんが、それでもそのような入試形態になっているのは入学者の現役生の割合を増やしたいというのが本音でしょう。理科の成績は現役生より浪人生のほうが出来が良いことが多く、二次試験で理科の試験を課さないことで、現役生に有利な試験になっています。面接については、露骨に現役生を有利に扱ってるんじゃないかと疑いたくなる大学もありますが、純粋に人物評価を行っていると考えられる大学もあり、そういう大学は実は文系出身の再受験生のねらい目でもあったりします。

<旭川医大>二次比率は39%です。英語も数学もやや難しめですが、程ほどに難しめの方が医学部受験生同士での学力差がはっきり表れやすく、英数どちらも程ほどに点差が付きます。ただ数学についてはかなり難しい問題が混じることもあるので、それを考慮すると英語の方が差のつきやすい試験じゃないかと考えています。以前は面接点が高く、また面接点に大きく差がついていたことからかなり面接リスクの高い大学でしたが、面接点が大きく圧縮され学力試験の比率が高い試験となりました。

<秋田大>二次比率は42%です。数学はほどほどの難易度ですが、英語は極端に易しく高得点帯で団子になると考えられるので、数学の方が差を付けやすい試験です。面接はA、B、Cの段階評価となっており、A評価が取れなければ合格はかなり厳しい形になっています。二次試験は面接の比重が高いこともあり、面接対策が最重要項目といってもいいくらいかもしれません。

<徳島大>二次比率は31%です。共通テストの理系科目配点がかなり高めになっていることには特徴でしょう。英語も数学もやや易し目の難易度ですが、採点はかなり厳しめと考えられるので添削指導などつけてもらえるとより合格を確実にできるでしょう。基本的には逃げ切り目的で受ける大学とは思いますが、面接の一発アウト報告がちょいちょいある大学なので、面接対策はある程度は行っておいた方が無難かと思われます。

<島根大>共通テストボーダーは80%、二次比率は40%です。共通テストの国語の配点が高めになっているのが特徴です。数学は程ほどの難易度で差がついていますが、英語は易しい問題と難しい問題の落差が激しく差のつく難易度の問題がないので、数学で差がつく試験と考えています。面接点はそこそこ差がつくものの面接点そのものがあまり大きくないので、面接リスクはやや低めです。とはいえ20点くらいは簡単に差がつくので面接の練習はしっかりしてくださいね。

<二次比率>二次比率も大差はありませんが、面接点を除いた二次比率は秋田大は21%で最低、その他の3大学では30%強になっていることを補足しておきます。

<英数の偏り>旭川医大以外は数強有利かイーブンであるため、数学や物理で点を稼いでいく受験生のほうが合格しやすいと思っています。

<面接リスク>面接リスクについては、島根大以外は高めですので、面接リスクが気になる方は島根大への出願を薦めます。ただし残りの大学の面接も細かい点差がつくのは旭川医大のみで、徳島大や宮崎大では面接点そのものは全員0点で、一発不合格の事例が時々あるということですので、一定以上の水準と認められるのであれば面接点の点差はつかないことは考慮しておいてもいいかと思います。すなわち、「面接アピールが素晴らしい受験生が合格する」わけではなく、「面接がダメすぎる受験生が落ちる」試験であることです。この2大学では最低限の面接の練習などはしておくべきですが、あまりガッツリやりすぎても学力試験の対策が追いつきません。本当に面接リスクの高いのは秋田大かなあと個人的には思います。かつては現役生であっても本人の持病などを理由に0点をつけたこともある大学です。志望動機や自己PR、医学を学ぶにあたっての意気込みや将来の展望など、複数の先生からの多面的なフィードバックを受けながら練っていき、面接で最高評価が取れるように、しっかりエネルギーを注いでくださいね。

易問高得点型

  • 信州、長崎、山形、鳥取、香川、愛媛、佐賀、鹿児島、琉球の9大学
  • 二次試験の問題難易度は易しいが、合格には高得点が必要
  • 得意過ぎる科目があっても点を稼げないが、苦手過ぎる科目があれば大きく点をロストする
大学名二次比率英数の偏り理科の偏り面接リスク備考
信州大57%イーブン物理有利低め
長崎大64%イーブン イーブン低め調査書配点(40点)追加。
山形大44%数強有利生物有利低め二次国語あり。
鳥取大44%数強有利生物有利 標準
香川大50%イーブン 生物有利 標準国社理重点配点。
愛媛大61%数強有利物理のみ標準英語は総合問題に変更。
佐賀大32%イーブン 物理のみ低め?調査書配点が削除。
鹿児島大51%イーブン 生物有利 高め理科重視配点。
琉球大47%イーブン 生物有利 非常に高め

次に易問高得点型です。このカテゴリーには信州、長崎、山形、鳥取、愛媛、鹿児島、琉球、香川、佐賀大の9大学が該当します。易問高得点型の大学では、二次試験の問題の難易度は易しいものの、合格のためには高得点を取る必要があります。故に、これらの大学を受験する際に重要なことは「各科目の基礎的な事項を漏れなくマスターする」ことになります。苦手過ぎる科目があると他の受験生に大きく差をつけられる可能性があるので、そのような科目が出ないようにバランスよく学習を進めていく必要があります。もう少し詳細に検討してみましょう。

<信州大>二次比率は57%です。英語も数学も易しい問題で大差はついておらず、英数の偏りはイーブンと考えています。理科については高得点層では満点の取りやすさから物理選択者有利、ボーダー層では生物選択の方がやや安定はするかも、といった感じです。面接リスクはほぼ皆無で、満点の受験生が大半と言われています。

<長崎大>二次比率は64%です。いわゆる旧六医大と呼ばれる歴史のある大学ですので、学閥など気にするのであれば検討してみるといいでしょう。学力試験の傾向は信州大と大差なく、英語も数学も易しい問題で大差はついておらず、理科については今までやや生物有利感もありましたが新傾向問題の導入によりそれなりに骨のある考察問題が入って来るため令和3年度からはイーブンになるかと思われます。面接もほぼ満点の受験生が大半で、殆ど差がついていません。ただし令和3年度から調査書配点が40点分追加され、大きな配点ではないものの無視できる点数でもありませんので、一応考慮しておきましょう。

<山形大>二次比率は44%です。数学は医学部専用問題だけがやたら計算が重いですが他の問題は易しく、英語も全体的に易し目で殆ど差がついていないと考えられます。ただ医学部専用問題で多少の差がついているだろうという意味で数強有利としています。理科も全体的に易しめですが、時間制限がやや厳しいためちょっぴり生物選択有利かもしれません。山形大では二次に国語があるのが大きな特徴です。現代文のみで、記述問題もあります。大差はついていないと考えていますが、国語が苦手過ぎるなら他の大学を検討したほうがいいかもしれません。面接リスクは殆どなく、調査書点数化などもあるようですがそれでも大差はついていないようです。

<鳥取大>二次比率は44%です。変更:全科目平易な難易度でしたが、2022年度の数学は急激に難化し、実力差のつく難易度となったため数強有利の設定にしました。英語は易しめですが和文英訳なども出題されているのでそれには注意をしてください。理科については易しいにも関わらず時間も90分×2科目とたっぷり与えられ、高得点帯で団子になっていると予想されます。物理選択でも十分満点が狙っていける試験ですが、生物選択でも満点狙えてしまうレベルの難易度ですので、上位層では大差ありませんがボーダー層ではやや生物有利と予想しています。面接点についてはそれほど大きくないものの、程ほどに差がついているといった様子で、面接リスクは標準としています。

<香川大>二次比率は50%です。共通テストの配点に変更があり、数学と英語の配点が圧縮され、国語・社会・理科の配点が大きくなっています。英語も数学も大きな特徴はなく、易しめであまり大差はついていないと考えられ、イーブンとしています。理科についてもほぼイーブンなのですが、上位層では満点の取りやすさから物理有利である一方、物理の問題のボリュームがあまりにも多いので意外と時間に余裕がなく、ボーダー層では生物有利かも、そんな感じの試験です。

<愛媛大>二次比率は61%です。全体的に易しめで二次でそんなに大差はつかないとは思いますが、二次比率は高めですので、易問高得点型のつもりで対策したものの健康上の理由などで共通テストに失敗してしまったようなケースでは、出願を検討してみてもいいかもしれません。今まで国語重視の配点でしたが、共通テスト国語の配点が圧縮され、ふつうの配点になりました。二次英語が廃止され総合問題という形になりましたが、結局課題文は英語だそうで、ジャンルも理系ジャンルということなので、これまでの傾向とそう変わりはないんじゃないかと考えています。これまでの愛媛大英語については英文は易しめですが、設問は論述ばかりで、半分国語の試験じゃないかという問題で、大差はついていないと考えています。(追記:実際は結構難しい問題とのことですが、当サイトでは未分析です。)ただ数学も易しめで分野の偏りも強く、これもまたあまり大差はついていないと予想しています。とはいえ今までの英語試験については事実上国語の試験と言ってよいもので英語力そのものではあまり差がついていないと予想され、数学の方が素直に数学力で点差がつくと考えています。理科については物理・化学のみで、制限時間がそれぞれ50分しかなく、かなり時間的にバタバタした試験になります。ただし問題の難易度はいずれも易しめです。面接点については、配点が低いものの点差はほどほどにつく、といったタイプで面接リスクは標準です。

<佐賀大>二次比率は32%です。変更:100点もあった調査書配点が廃止されました。英語・数学ともにやや易しめから標準レベルで、特徴的な問題もあるものの、共通テスト後からの対策でも十分キャッチアップできるレベルのものです。理科は物理・化学オンリーですが、たいへん易しく分野も絞りやすく、事実上二科目型といってよいレベルですね。佐賀大はかつて、調査書の配点が異様に大きく、素行の良い受験生が集まるからか、面接では殆ど点差がついていませんでした。2023年度以降は様々な受験生が集まりそうですが、面接点にどう反映されるかは未知数です。

<鹿児島大>二次比率は51%です。理科重視の配点になっています。英語も数学もやや易し目ですが一部に標準レベルの問題も交じり、それぞれの科目で若干の点差がつくかなあといった印象です。理科については3科目全てやさしいですが、生物に考察問題が殆どないと言ってよく、生物有利としています。面接については配点も大きく、得点率は大きくばらつき、面接リスクは高めとしています。理科重視配点は浪人生には魅力的に映るかもしれませんが、面接リスクが高めなのがネックですね。理科の完成度が高く、面接についても多めに見てもらいやすい一浪生の合格率が結果として高くなっているようです。

<琉球大>二次比率は47%です。二次試験の難易度は英・数・理ともに日本で最も易しいんじゃないかというレベルです。高得点勝負であまり差はついていないと考えられます。理科も相当易しいですが、制限時間は短めで生物の問題の分量があまりにも少ないので、やや生物有利としています。最も差がつくのは面接で、配点も大きいため、面接リスクは高めです。

<二次比率>かつてのセンター試験は概ね平易な問題でしたので、センター試験で稼げるならば易問高得点型の二次でも稼げるはず、という議論が出来ていました。しかしながら、直近の共通テストでは非常に難化(あるいは時間制限が厳しい)しており、相関はやや薄くなったように思います。二次対策として基礎固めをコツコツ積み重ねるだけでは共通テストの得点率は振るわない可能性もあるため、マーク模試は頻回に受験し、早い時期から共通テスト対策を実施しましょう。また、佐賀大で調査書配点が削除されたため、二次比率が32%となり、易問高得点型の中では最も二次比率が低い大学となりました。共通テストできちんと得点出来た場合、逃げ切りに良い大学の1つと言えます。二次は英数二科目で決まる徳島大や秋田大と比べ、成績が安定しやすい理科が混じっている方が、ちょっと安心かもしれませんね。

<英数の偏り>英数の科目の偏りも各大学多少はあるかもしれませんが、本当に微々たるものなので、数強有利、などと申してはおりますが、易問高得点型の大学ではそこまで気にする必要はありません。ただし苦手過ぎて基礎すら危うい科目があるとその科目で大きく失点するリスクはありますので、各科目についてバランスの取れた学習をすることが重要です。いつも極端に偏差値の悪い科目のある受験生は他のカテゴリーの大学を探した方がいいかもしれません。

<理科の偏り>理科の偏りについては意外と生物有利な大学が多いですが、物理選択についても上位層については満点の取りやすさから生物選択を超えやすいので、しっかりと物理の実力があるなら自信をもって出願してください。しかしながら中途半端な学力では生物も易しい試験ですので生物選択に差を付けられるかもしれません。

<面接リスク>学力試験は全体的に高得点帯で団子になりがちですが、面接リスクについては低めのところから高めのところまでバリエーションがあります。信州大、長崎大、山形大などは面接では殆ど点差がついておらず、多浪生や再受験生などといった面接リスクの高い受験生でも安心して出願しやすい大学と言えます。ただし長崎大では調査書配点がそれなりの点数で導入されていることには一応注意をしておいてください。鳥取大、香川大、愛媛大の面接リスクは標準レベルで、県外からの受験生などでも出願しやすい大学でしょう。佐賀大は未知数で、かつて調査書の配点が高く素行の良い受験生が集まっていたためか、面接点で殆ど差がついていませんでしたが、調査書配点削除により様々な受験生が集まるようになると予想され、面接点で差をつけてくるかもしれません。面接リスクが大きめなのは鹿児島大と琉球大で、面接配点も高めで得点率も大きくばらつきがあると言われている大学です。特に琉球大では面接アピールが上手であれば県外からの受験や多浪・再受験でも得点が稼げるとされてはいますが、原則としては地元の現役生・一浪生の出願が最も丸いかとは思います。

標準問題型

  • 筑波、大阪公立、岡山、新潟、熊本、三重、高知、宮崎の8大学(宮崎は二次理科追加)
  • 二次試験で標準レベルの問題が出題され、時間制限も比較的緩やか
大学名二次比率英数の偏り理科の偏り面接リスク備考
筑波大61%イーブン物理有利高め「文章完成法」試験有
大阪公立大55%数強有利物理有利 低め理数重視配点
岡山大57%イーブン イーブン低め
新潟大62%数強有利 物理有利 低め やや易問高得点型に近い
熊本大67%イーブン イーブン低め
三重大54%数強有利 物理有利 低め
高知大53%数強有利 生物有利標準理科は易問
宮崎大40%イーブン未調査一発アウト多数英数二科目型から移動

次に標準問題型です。筑波、大阪市立、岡山、新潟、熊本、三重、高知、宮崎の8大学を分類しました。この標準問題型では、二次試験で全ての科目でおおむね標準的なレベルの問題が出題される傾向があります。易問高得点型の大学よりは偏差値も問題レベルも若干高いため、基礎問題よりはワンランク上の標準的な問題を幅広くマスターする必要があります。とはいえあまりハイレベルな問題集まで取り組む価値はありません。そのような標準問題を出題する大学のうち、比較的試験の制限時間に余裕のある8大学を取り上げました。

<筑波大>二次比率は61%です。二次比率は一見高く見えるものの、面接と、文章完成法と呼ばれる心理検査の2つからなる適性試験の配点が500点もあるため、二次の純粋な学力試験の比率は39%になります。ある意味で、逃げ切り型と言えなくもないのですが、適性検査、特に文章完成法の検査の対策が困難であり、かつ、適性検査トータルとしてかなり低い点数がつくこともあるらしいという話も、あまり確実な情報ではありませんが出てきているので、よほど筑波大に思い入れのある受験生以外は、個人的には出願を薦めません。一年に何社も応募できる就職活動などとは違い、一年に1~2回の大学入試で心理検査に大きな配点がある大学に出願するのは、正直、ロシアン・ルーレットを回すようなものなんじゃないでしょうか。学力試験については非常にオーソドックスな良問ぞろいで、数学も英語もほどほどに点差がつきます。理科の偏りについては、物理はオーソドックスな良問である一方、生物は良い問題ではあるものの考察問題がそこそこ多いため、物理有利としています。

<大阪公立大>二次比率は55%です。共通テスト・二次比率共に、極端に数学と理科重視の配点となっていますので、関西圏の理系科目に自信のある受験生が集まってきます。数学についてはオーソドックスな標準問題がメインですが受験者の数学力も相当高いのでかなりの高得点帯での勝負になっています。英語は実は標準問題とは言えない精読系の特殊な問題で特化した対策が必要ですが、配点がそこまで大きくないので、標準問題型に分類することにしました。京大・阪大から志望校を大阪市大に落とす場合にはそこまで問題にはならないとは思いますが、神戸大から志望校を大阪市大に落とす場合には英語の問題に特徴があることには注意をしてください。理科の偏りについては例年物理有利とは言われているものの、生物の方が解きやすい年度もあることは一応補足しておきます。面接点は0点で、一発アウト事例は一例のみ聞いたことはありますが多くはなく、面接リスクは低めとしています。

<岡山大>二次比率は57%です。旧六と呼ばれる歴史のある大学で、かつ、近くに旧帝大などもないので、関連病院は広いエリアに分布しており、名門の医学部と言え、現在でも高い入学難易度を誇っています。入試については、数学は非常にオーソドックスな問題です。英語に関しては論述メインのオーソドックスな試験ですが、時間にかなりの余裕があるので速読力で差をつけることが出来ませんが、精読力や論述力ではそれなりの差は付くでしょう。総合すると、数学でも英語でもほどほどの差がついているんじゃないかと思います。理科については年度によってばらつきがあるものの、物理も生物も概ね標準的で例年はあまり大きな有利不利は発生していません。ただ理科については数学や英語と違いけっこう時間の制限は厳しい試験になっているので注意をしてください。面接については非常に寛容で、一発アウト事例なども聞いたことはありません。

<新潟大>二次比率は62%です。新潟大も旧六と呼ばれる伝統ある大学の1つで、入学難易度もやや高くなっています。数学がここ最近になって急に難しくなり、以前はかなり易しいレベルでしたが、最近の試験では医学部受験層でもほどほどに点差がつく難易度となっています。英語は易しいものの記述の採点はかなり厳しいようで意外と得点が伸びません。添削指導をつけてもらい、かなり厳しめに答案の細かい粗も含めて指摘してもらえると良いでしょう。数学が素直に実力差が出る試験となっているため、数強有利としています。理科については、物理は単純にやさしい問題であるものの、生物は、平易なものの植物生理などを含む広い範囲から出題されるため、物理有利としています。ただし初めから新潟大に焦点を絞って対策する分に関しては生物選択もそれほど大きな問題にはならないと考えています。面接については原則として寛容で、面接点は0点で一発アウトの事例もゼロではないようですが稀なようです。平易な問題も多いため易問高得点型に分類しても良かったのですが、最近の数学の難易度変動などを考慮して標準問題型に分類することにしました。

<熊本大>二次比率は67%ですが、面接点が200点もあるので、面接点以外の純粋な二次の学力試験の比率は50%になります。ぱっと見の数字だけ見ると逆転狙いの大学に見えてしまいがちですが意外とそうでもないので注意をしてください。英語も数学も標準的な出題で、ほどほどに点差がつく試験です。理科については全体的に易し目で、年度によって若干のブレがあるものの、物理選択も生物選択もほぼイーブンと考えています。ただし理科全体として高得点勝負なので、苦手過ぎるとダメですが得意でもそれほどアドバンテージは取れません。英数で点数を稼ぐタイプのほうが有利と言えます。面接については非常に寛容で、殆どの受験生が満点で通過しています。

<三重大>二次比率は54%です。ちょっぴり理科重視配点になっています。数学については標準問題中心のオーソドックスな出題、英語は平易であるものの採点がかなり厳しいパターンです。数学は素直に数学力で差がついているものの、英語は細かいミスに大きな減点を課している可能性があり純粋な英語力では差がついていない可能性があるため、数強有利としています。理科については、物理も生物も易しめで大差はありませんが、物理は満点が狙える試験であるものの生物は満点はやや難しいこと、また共通テストの理科が他の科目の倍の配点となっており、共通テストは医学部受験層では若干物理有利に働く可能性が高いため、物理有利としています。ただし生物選択の受験生でも共通テストの成績が物理選択に劣らない成績が取れた場合はこの限りではありません。面接については基本的に寛容で、再受験生などは昔から多い大学になりますが、あまりに長い間たくさんの再受験生を受け入れてきた反動からか、厳しい態度をとる先生もいるとのことですので、最低限の対策はしておきましょう。

<高知大>二次比率は53%です。数学は医学部受験層でもほどほどの差がつく難易度ですが、英語については傾向がブレブレで、設問ごとの難易度バランスや配点もかなりいびつな構成になっています。数学は素直に実力差が出る問題である一方、英語は狙って高得点を取るのは難しい内容ですので、数強有利としています。理科についてはあまり大差ありませんが、生物でも満点が狙えるような内容ですので、生物有利としています。面接についてはあまり情報はありませんが、配点もほどほどで評価もほどほどに差がつくと考えられ、面接リスクは標準としています。

<宮崎大>二次比率は40%です。数学はほどほどの難易度で、英語はやや難しめです。英語の傾向がころころ変わりがちなので、傾向対策というより素の英語力が反映されやすい試験とも言えます。近年になり理科が追加されましたが易問で、科目間バランス的には高知大に近いかもしれません。面接一発アウトの報告は日本で一番多いんじゃないかというくらい多いので、面接対策の時間をどこかで捻出してくださいね。

<二次比率>ぱっと見大きな差がないように見えますが、面接点の配点がそれぞれの大学で大きく違うので注意しましょう。例えば筑波大では適性検査の点を差し引いた純粋な二次の学力試験の割合は39%と低く、熊本大でも面接点を差し引いた純粋な二次の学力試験の割合は50%と意外と低くなります。

<英数の偏り>英語だけやたら癖が強すぎたり、易しい問題なのに採点が異様に厳しかったりする事情で、数学力については素直に点数に反映されますが、英語力についてはきちんと点数に反映されていない可能性があります。故に数強有利と判断した大学が多くなっています。

<理科の偏り>物理有利と判定した大学が多くなっています。それほど難しい問題ではないものの、生物に考察問題や論述問題が多くなってくる影響が出ているんじゃないかなとは思います。

<面接リスク>筑波大で心理検査(文章完成法)の配点も高いため要注意で、また宮崎大でも面接一発アウトの報告が多数上がっており、リスクは高いです。一方で、その他の大学では殆どが寛容なスタンスを取っています。求められる学力も各大学高めになりますので、なるべくギリギリまで二次の学力の養成にエネルギーを注ぎたいところです。

標準・短時間型

  • 千葉、神戸、名古屋市立、広島、金沢の5大学
  • 問題難易度は標準だが、制限時間は厳しく、「素早く解ける」までトレーニング必要
大学名二次比率英数の偏り理科の偏り面接リスク備考
千葉大69% 数強有利 生物有利標準面接形式が特殊。
神戸大56%数強有利イーブン 低め
名古屋市立大69%イーブン 物理のみ標準面接形式が特殊。理科重視。
広島大67%数強有利 物理有利低め
金沢大70%イーブン 物理のみ標準 二次比率が大きくなった。

次に標準・短時間型です。千葉、神戸、名古屋市立、広島、金沢の5大学を分類しました。この標準・短時間型では二次試験で標準的なレベルの問題が出題されますが、試験の制限時間がやたら短くなっており、ただ「問題が解ける」だけでなく、「問題が素早く解ける」ようになるまでトレーニングしないと点数が伸びていきません。標準問題型より偏差値も全体的に高めで、問題集の周回数がよりシビアに表れる試験になってきます。

<千葉大>二次比率は69%です。千葉大は旧六と呼ばれる歴史のある大学で、かつ立地も非常に良いことから入学難易度は高くなっています。数学については後半の問題を中心に数学力で差がつく良問で、英語については理系ジャンルの長文には偏っているものの記述力で差がつく試験です。いずれも制限時間はやや短めでテンポよく解答していかなければ最後まで完答できなくなる恐れがあります。英数共にほどほどに点差はつきますが、英語はやや国語力的な要素で点がブレるので、数学の方が素直に実力が点数に現れやすいと考え、数強有利としています。一方で理科については1科目50分とたいへん制限時間の短い試験となっており、書くスピードなども要求されるレベルの厳しい内容になっています。生物では出題分野も限られており難易度も物理に比べるとやや易しめですので、生物有利としています。面接については8分程度の面接が3回行われる形式で、面接担当教員の主観で大きく点数がぶれにくい形式になっています。

<神戸大>二次比率は56%となっています。関西の都会にある人気の大学で、近年入学難易度が上昇傾向にあります。数学は標準問題ばかりですがボリュームが多く、英語も同様の傾向で、のんびり解答していると時間が足りません。いずれの科目でも程ほどの差がつくと考えられ、英数の偏りはイーブンとしています。理科については制限時間は1科目60分と短めで、物理は大問3問のオーソドックスな問題である一方、生物は大問4問な上に全ての大問にそこそこレベルの考察問題が配置されているため、生物の方がボリュームがあると考えられ、物理有利としました。面接についてはオーソドックスなもので面接点も0点で、一発アウト報告も聞いたことが無いので面接リスクは低めとしました。

<名古屋市立大>二次比率は69%です。ここもまた名古屋市内にある都会の大学であるため、入学難易度はやや高めです。理科にややウェイトのある配点になっています。数学はボリュームこそ程ほどですが適度に点差がつく難易度の良問で、一方で英語は超速読型+長めの自由英作文とたいへんボリュームのある構成となっています。両方の科目でほどほどの差がつくと考えられ、英数の偏りはイーブンとしています。理科については令和3年度入試より物理・化学選択のみとなりました。1科目75分と時間がそこそこあるように見せかけて、ボリュームはたいへん多い量になっているので時間は足りません。面接については今までは全員満点という寛容なスタイルでしたが、今では面接の形式が変更され、英語で志望動機を言うように求められたり、イラストの題材を見てそれをまとめさせたりと、ユニークな形式の面接が課されるようになり、点数差もつくようになりました。対策は難しいですが、過去に出た形式の質問については練習をしておいたほうが良いかと思います。

<広島大>二次比率は67%となっています。理科重視のA配点なるものも存在しますが、上位50%の選抜の為だけに使われている配点なので、事実上の合否判定はバランス型のB配点になります。数学は標準問題が中心であるもののボリュームは多く、時間は150分もあるものの最後まで完走するのはなかなか厳しい試験となっています。数学力がシビアに点数に反映される試験と言えます。一方で英語は時間に余裕があり、また、毎年、要約が出題されていたり、自由英作文の形式が一定していたりと、数学が苦手な受験生でも傾向対策を前もって行うことできちんとキャッチアップ出来る内容となっており、英数の偏りについては数強有利としています。理科については、1科目60分とかなり短く、物理も生物も大問4問ですが、物理に関しては1問はおまけ程度の知識問題である一方、生物に関しては大問4問いずれも粒ぞろいの考察問題が含まれているため、物理選択の方が有利と考えています。面接については5分の短い面接で面接点も0点で、面接落ちの報告も聞いたことはないので、面接リスクは低めです。

<金沢大>二次比率は70%となっています。配点の変更があり、二次比率が急激に高くなりました。金沢大は旧六と呼ばれる歴史のある大学ですので、入学難易度は近隣の大学よりはやや高めとなっています。数学がここ最近急に難しくなっており、ボリュームもかなり多く、数学力がシビアに点数に現れる試験となりました。英語に関しては比較的オーソドックスな試験で、時間も程ほどでバランスの良い設問となっています。ボーダー層では英語のほうがやや差がついていそうですが、数学は数学で理不尽な問題が出題されているわけではなく、上位層の一部は数学でぶっ飛んだ点数を取っていることも予想され、イーブンとしています。理科については物理・化学選択のみですが、1科目60分にもかかわらずボリュームが多く、制限時間はかなり厳しい試験となります。面接についてはそこそこの配点で、ほどほどに点差がつくというタイプですので面接リスクは標準としています。

<二次比率>いずれも高めですが、千葉大や神戸大はそもそもの受験生の学力がハイレベルであるため逆転合格というのは中々狙いにくいところです。しかしながらこの2大学よりは偏差値的には低く、面接点が0点で、純粋に学力試験の比率が高い広島大などでは、共通テストで失敗したとしても、二次力次第で番狂わせがあるかもしれません。面接でも差がつくものの理科の配点が高い名古屋市立大、二次比率が旧帝並みの水準になった金沢大なども逆転を狙いやすい大学と言えるでしょう。逆転が狙いやすいということは、逆転されやすいということにもなりますので、共通テストが良かったとしても最後まで油断せずに勉強を続けてください。

<英数の偏り>数強有利かイーブンのみとなっており、数学が得意な受験生は志望校を決めやすいですが、どちらかというと英語で稼ぐタイプの受験生はイーブンのところから選ぶことになるかと思います。入学難易度、理科の選択などを総合して志望校を決めるようにしてください。

<理科の偏り>千葉大を除いて概ね物理有利か、物理のみとなっています。全体的に、数学・物理で稼ぐ超理系人間と相性の良い大学群かもしれません。

<面接リスク>ほどほどに点差がつく大学とそうでない大学があります。面接でも程ほどの点差がつく大学では面接対策も忘れないようにしていただきたいですが、学力試験でも相当な点差がつく大学ですので、基本は学力試験の対策に軸足をおきつつも、バランス感覚を大切にしながら二次対策を進めてください。

単科医大型

  • 東京医科歯科大、京都府立医大、滋賀医大、和歌山県立医大、浜松医大、福島県立医大、札幌医大、山梨大(後期)、奈良県立医大(後期)の9大学
  • 問題難易度は高く、制限時間も短いため、「解ける問題を取捨選択する」技術が必要
大学名二次比率英数の偏り理科の偏り面接リスク備考
東京医科歯科大67%数強有利生物有利低め
京都府立医大57%英強有利生物有利低め化学が難しい
滋賀医大50%イーブンイーブン低め国社重視配点
和歌山県立医大54%イーブン生物有利低め
浜松医大61%英強有利物理有利標準
福島県立医大50%イーブン生物有利やや低め化学が易しい
札幌医大50%英強有利物理有利標準地域枠がメイン
山梨大・後52%英語なし生物有利低め
奈良県立医大・後75%数強有利イーブン低め

次に単科医大型です。東京医科歯科大、京都府立医大、滋賀医大、和歌山県立医大、浜松医大、福島県立医大、札幌医大、おまけで後期枠ですが山梨大後期、奈良県立医大後期が分類できます。山梨大以外は全て医療系学部しか持たず、作題者が原則各科目1名で、かつ一般教養教育の教員になっているケースが多いです。原則としてハイレベルな医学部受験生を選抜するためだけの試験を作題するため、問題レベルは非常に高いうえに時間の余裕もなく、短い制限時間で、解けそうな問題を見抜いて少しずつ点数を積み重ねていく必要があります。特殊な問題形式であるため、受験生によって相性の良し悪しがはっきり出ます。共通テストで成績が芳しくなかった受験生が二次で逆転合格、というケースもしばしばあります。東京医科歯科大以外では難問は飛ばせればよいので、難問対策は必ずしも必須ではありませんが、難問や、時間を浪費する重めの設問を見極める能力を育てるためにも難問対策はやって損ではありません。

<東京医科歯科大>二次比率は67%です。流石に東京の御茶ノ水駅ほぼ直結という立地ですので、たいへん入学難易度の高い大学となっております。とはいえ入試に関しては単科医大型であり一筋縄ではいきませんので注意をしてください。数学に関しては難問ぞろいで、標準問題、基本問題と言えるようなものはまるでありませんが、受験生の学力レベルも大変高いためある程度の得点率を取ってきます。英語に関しては超長文の正誤判定問題、英文要約と日本語要約といった形式で、英語力もある程度は要求されますがどちらかというと試験の解き方の要領の方が大事です。数強英弱は数学でアドバンテージを取り英語は傾向対策でキャッチアップする、という方針で乗り切れるものの、英強数弱では英語は傾向対策で数強に追いつかれ、数学は手も足も出ないということになりかねませんので、数強有利と考えています。一方で、理科については1科目60分と時間がたいへん短く、やや難の問題も多く出題されますが、生物に関しては分野も絞りやすく考察はやや少な目で知識の論述問題がメインになるので、物理選択よりは生物選択の方がやや有利と考えています。理科については実力があっても時間が足りなさ過ぎてやや難の問題に手を付ける時間が捻出しにくく、英数、特に数学できちんと稼げるかどうかが大事なんじゃないかと思います。面接に関しては0点ですが、再受験生などにはやや圧迫気味の面接が実施されるようなので、一応そのつもりで臨んでください。実際に落とされるケースはあまりないようなので、面接リスクは低めとしました。

<京都府立医大>二次比率は57%です。京都の中心地にあり、旧六に準ずる歴史のある医学部のはずなのですが、人気が若干低下傾向にも見えます。しかしながら難問系模試である駿台全国模試の偏差値などは依然高止まりしているので、決して入学難易度が易しい大学ではありません。数学は計算力がやたら要求される理不尽ともいえる出題で、数学が得意でも計算で時間を取られ制限時間内での完走はたいへん難しい試験となります。英語は超速読型で、これもまた分量が激しいのですが、1問1問の難易度はほどほどで、英語力が素直に点数に現れる試験となります。ゆえに英数の偏りは英強有利と判定しています。理科の偏りについては、化学が極端に難しく、物理・生物は共に標準~やや難レベルです。生物については医学系分野に絞って対策が出来ますので、やや生物有利としましたが、物理・生物選択という変わった理科の選択の仕方が意外と合理的なんじゃないかと考えています。面接については寛容なスタイルで、面接点は0点で面接落ちの話も聞いたことはありません。

<滋賀医大>二次比率は50%です。国語・社会重視の配点になっているのが特徴で、文系科目で稼げる受験生には相性が良いと言えます。二次数学に関してはかつては理不尽級の問題が出題されましたが最近は難易度が緩和され、ほどほどに点差がつく試験となりました。二次英語については速読型かつ記述の多い試験でしたが、令和3年度では作題担当の先生が変わる可能性があるため要警戒です。例年とほぼ変わりがなければ、英数の偏りはイーブンと言えます。理科については物理も生物も標準~やや難レベルで、生物は分野を絞った対策が可能なものの、物理は物理で高得点も狙っていけるレベルですので、イーブンとしました。面接リスクは低めとしましたが、長年多くの多浪生や再受験生を受け入れてきた反動からか、個人面接を実施するようになり、再面接なども頻繁に行うようになっているようですので、面接についても最低限の対策は行っておきたいところです。

<和歌山県立医大>二次比率は54%です。二次試験の制限時間が少し伸びましたので、その影響で試験の特徴にも若干の影響が出るかもしれません。数学に関しては標準~やや難レベルの問題ですが制限時間が今まで100分しかなかったので、数学が得意でも時間が無さ過ぎて得点が伸びない、そういうタイプの試験でした。この制限時間が120分に伸びますので、もしかすると令和3年度以降は数学でも稼ぎやすくなるかもしれません。英語に関しては問題は易しいものの採点が厳しめにされているパターンです。英語も時間は延長されますが英語はもともとそれほど時間が厳しいわけでもないのでそれほど影響はありません。現状英数の偏りはイーブンとしていますが、令和3年度以降やや数学で稼ぎやすい試験になるかもしれません。理科については物理も生物も標準~やや難レベルですが、物理の方は時間の制約で点数が伸び悩む一方、生物の方は医学系分野に絞って特化した対策が出来ますので生物がやや有利と考えています。これもまた制限時間が延長されるので令和3年度では若干有利不利の関係に変化があるかもしれません。面接に関しては寛容で、多浪生や再受験生には再面接などが実施されることもありますが、不合格にまで至るケースは少ないようです。

<浜松医大>二次比率は61%となっています。数学については大問4問あるものの1問は極めて難しい問題で制限時間が90分という試験なので、この難しい問題を飛ばして残る3問を90分で解くというスタンスで臨むことになります。英語に関してはオーソドックスな速読型の試験で、素直に英語の実力が点数に反映される形式になります。数学に関しては事実上満点が4分の3になっているようなものなので、英語の方が実力差のつきやすい試験と言えます。理科についてはかなり時間制限が厳しい試験で、難易度そのものは物理も生物も標準レベルですが、生物に分野の偏りがあまりないので、やや物理有利としています。面接については配点は小さいものの点差もほどほどについていると考えられ、面接リスクは標準としています。静岡県は慢性的に医師不足傾向にあり、やや静岡県出身の受験生に甘めかもしれません。

<福島県立医大>二次比率は50%です。配点は、至って標準的な配点となっております。数学に関しては標準レベルから超難問まで様々で、標準問題を落としてしまうレベルで数学が苦手だと大きなロスになりますが、逆に数学が得意であっても時間内で難問まで得点することは難しい内容になっています。英語に関しても超速読型で記述問題ばかりで、苦手過ぎると大きく点数をロスしますが得意でも記述問題が要約的な問題が多く点数が伸び悩みます。両方でバランスの良い学力が必要と考えられ、英数の偏りについてはイーブンとしました。理科については物理や生物では時間の制約が厳しく、最後まで完答するのが難しいセットになっていますが、生物の大問が3問で考察問題のリード文が少な目で比較的短時間で処理できるため、やや生物有利としています。ただし一番稼ぎやすいのは化学で、易しめの問題なので高得点を狙っていきたいところです。面接については配点は小さめで、点差もほどほどにしかつかないため、面接リスクはやや低めとしています。

<札幌医大>二次比率は50%です。定員のほとんどが地域枠ということで敬遠されてきましたが、最近は人気が回復してきたようです。数学に関しては大問4問構成で1問難しい問題が混じってきて制限時間が100分というセットで、1問は捨て問になりやすいので事実上配点が4分の3という試験です。英語に関しては程ほどの難易度でそれなりの点差がつくと考えられ、英強有利と判定しました。理科については、物理は取り組みやすいものの、生物は分野も絞れず難易度もやや高めですので、物理有利と判定しています。面接については配点もほどほど、点差もほどほどですので、面接リスクは標準としています。一般枠の面接点は低めになるんじゃないかと札幌医大の個別の動画で話しましたが、その後視聴者さんからの複数の情報提供があり、一般枠でも地域枠とさほど点差がない、というのが本当のところみたいですね。

<後期の2大学は別記事で>残る2大学は奈良県立医大後期と山梨大ですが、こちらは後期になりますのでこちらの記事ではあまり詳しく説明しませんが、単科医大型の問題で重厚な問題になります。いずれも、後期まとめ動画その1の学力重視型の解説動画に加えて、それぞれ単発の分析の記事を公開していますので詳細についてはそちらのほうをご覧ください。奈良県立医大前期は単科医大ではあるものの学力試験の種類としてはかなり特殊なものになるので特殊型に分類しました。

<二次比率>いずれもやや高めになっています。そして二次試験にも癖があり相性次第で二次の点数も大きな差が出るため、共通テストでビハインドがある受験生でも奇跡の大逆転を起こす受験生が例年ちらほら見られます。逆転が可能ということは逆転されることもあり得るので、追う側も追いかけられる側も、最後まで気を抜かずに二次対策をしてください。

<英数の偏り>英強有利となっている大学が多くなっています。数学で理不尽な計算量、理不尽な制限時間を課されることが多く、これが数学が得意な受験生の得点が伸び悩む要因となります。医学部の立場からすれば、膨大な計算量は臨床医に求められる作業の正確さや集中力の持続性を測るということもできますし、理不尽な制限時間はたくさんのタスクに優先順位をつけてこなしていく力を測るということもできます。とはいえ真っ当な数学を真っ当な数学の先生から真っ当に教わってもそのような力ばかりが伸びる訳ではありませんので、数学が得意な受験生ほど理不尽さを感じることが多いでしょう。一方で英語に関しては比較的オーソドックスな長文問題と自由英作文からなるケースが標準的で、分量こそ全体的に多いものの普通に英語力の差が出る試験になることが多いです。ただし東京医科歯科大は英数に関して色々と例外的であることを補足しておきます。

<理科の偏り>生物有利としている大学もある一方で物理有利としている大学もあります。生物有利としている大学では医学部出身の教員が生物の一般教養の教員をしていることが多く、教員そのものの専門分野が医学系に偏っているためどうしても医学系分野の出題が多く、フェイント的に他の分野を出題しようとしてもあまり凝ったテーマの問題の出題は難しかったりします。故にこのような大学では受験生は分野を絞った対策が可能になり、これが生物有利になりやすいとする理由です。物理有利となっている大学は生物の一般教養の教員が理学系出身であったりする事情で、生物学全般にわたって凝ったテーマの出題が見られるためやや対策が難しいと言えます。物理に関しては教員のバックグラウンドに偏りがあるケースは少なく、概ね似たような出題になります。化学に関しては何故かまちまちで、京都府立医大などでは全国トップレベルの難問が出題される一方で、福島県立医大などではやや拍子抜け感のする平易な問題が出題されています。

<面接リスク>概ね低めとなっており、二次の学力試験で合否のかなりの部分が決まるため、原則として学力試験の対策に軸足を置いて二次対策を進めてください。

旧帝大型

  • 東大、京大、阪大、名大、東北大、九大、北大の7大学
  • 思考力や問題解決能力に主眼を置いた出題。普段からよく考えながら勉強しよう。
  • 大学別模試が存在。出願するなら必ず受験しよう。
大学名二次比率英数の偏り理科の偏り面接リスク備考
東京大80%イーブンイーブン低め国語(現・古・漢)あり
京都大80%イーブンイーブンやや低め国語(現・古)あり
大阪大75%イーブン物理有利低め
名古屋大65%数強有利生物有利低め国語(現代文)あり
東北大79%イーブンイーブンやや低め
九州大61%イーブン物理のみ低め
北海道大64%イーブン物理必須標準

次に旧帝大型です。これは旧帝国大学と呼ばれる東大、京大、阪大、名大、東北大、九大、北大が該当します。医学部以外の学部の偏差値も高く、全体的にハイレベルな問題が出題されます。単科医大型と大きく異なる点は、作題者が一般教養教育をメインで担当する教員ではなく、様々な学問分野における一線級の研究者の教員であることでしょう。ゆえに思考力や問題解決能力に主眼を置いた問題が出題されることが多く、普段の学習においても一つ一つの問題に対してよく考えて取り組むことが要求される大学群と言えるでしょう。またこれらの大学は大学別模試が存在するため、実際の出願についてはこの大学別模試の判定が大いに参考になります。

旧帝大に関しては受験勉強を始めるころから第一志望に見据える受験生が多く、入試問題を旧帝大同士で比較する意味もあまりありませんので、簡単に紹介します。詳細については大学別の動画をアップロードしておりますので、そちらのほうご覧ください。東大だけは少し待ってください!

<二次比率>おおむね高く、やはり共通テストより二次対策の方が重要と言えます。

<英数の偏り>明らかに偏っている試験は京大と名大です。京大に関しては英語の差はあまりつきませんが英語の配点がやや高めになっているためイーブンとしています。名大に関しては数学が難問型、英語は超速読型ですが、数強英弱は数学で稼いで英語で若干のビハインドを食らう形になりますが、英強数弱は英語でアドバンテージがあるものの数学は手も足も出ないという形になります。結局どちらもそこそこ取れないと合格しませんが、基本的には数学に軸足を置いた学習になり、数学の得点力をある程度確実にしてから英語もカバーしていく形になるんじゃないかと思います。その他の大学に関しても、英数共に各大学でユニークな問題が出題されているので、各自でしっかり研究するようにしてください。

<理科の偏り>明らかに偏っている試験は阪大と名大です。阪大は生物に分野の偏りはあるもののそれでも生物はかなり難易度が高く、その一方で物理はまだ素直な問題なので物理の方が得点しやすいと考えています。一方で名大は生物がほどほどの難易度になっているので、生物の方がやや得点しやすいです。東北大も理科は全体的に難しいですが、平均点に応じて得点調整がなされるので、イーブンになります。なお、九大は物理・化学のみ、北大は物理必須で化学か生物が選択という形ですが、物理・生物の理科選択はマイナーであるため基本的には物理・化学選択での受験となります。

<面接リスク>いずれも低めで、名大などに至っては感染症の蔓延を懸念し令和3年度前期試験における面接は実施しないことにしたようです。他にもそのような大学はあるかもしれませんが、この動画では完全にフォローしきれていません。各自で面接の実施については確認するようにしてください。また、面接点である程度差のつく北大に関してもある程度聞かれる内容は一定しておりますので、面接対策はほどほどに、学力試験対策を中心に行うようにしてください。

<国語試験に関して補足>最後に、東大、京大、名大では国語の試験が課されます。東大では現代文、古文、漢文までフルセット、京大では現代文と古文のみ、名大では現代文のみが課されます。詳細は大学別の動画をご覧ください。

特殊型

  • 横浜市立大、群馬大、奈良県立医大前期、岐阜大、山口大、富山大、福井大、大分大、弘前大の9大学
  • 科目間バランスがいびつであったり、特殊な問題形式だったり、色々くせ者。
  • ハマる人にはハマるので、二次逆転狙いなら要検討。
大学名二次比率面接リスク備考
横浜市立大55%低め数学やや難だが妙な傾向有。
英語はやや難だが王道的な出題。作文ほぼなし。
群馬大50%一発アウト有数学易しめ。理科は物・化のみで短時間型。
小論文は事実上の英語だったが傾向変化あり。
奈良県立医大・前50%低め180分で英・数・理を捌く。二次理科は1科目でOK。
令和6年度より廃止され小論文オンリーに。
岐阜大60%低め英語が超速読型でall選択式。数学は易問高得点型。
山口大40%一発アウト有数学はやや難。英語は標準。理科は易問高得点型。
富山大44%標準数学は標準。英語が専門性高い英文の超速読型+超大作自由英作
福井大44%やや低め数学は標準。英語の小論文にやや癖あり。
理科の出題範囲が荒れているのでギャンブル性あり。
大分大55%標準数学は易問高得点型。英語は特徴的な出題。作文なし。
理科は標準だが短時間型。
弘前大33%高め学力試験廃止で総合問題と面接のみ。
総合問題はほぼ英語(+ちょっぴり理数)。

最後に特殊型です。横浜市立大、群馬大、奈良県立医大前期、岐阜大、山口大、富山大、福井大、大分大、弘前大の9大学を分類しました。この大学群は前に挙げたカテゴリーのいずれにも分類できなかった大学群になります。科目間の難易度バランスがいびつであったり、特殊な問題形式になっているなど様々な事情で非常に偏りのある試験です。模試の成績と実際の合否に乖離がある可能性があり、出願には注意が必要です。ただこの科目間バランスの偏りがハマる人には有利に作用するので、単科医大型と同様、共通テストでコケても二次で挽回して合格、というケースも多いと考えられます。

<横浜市立大>二次比率は55%です。数学はやや難ですが明らかな類題が5年連続で出題されているなど妙な傾向があります。英語はやや難ですが王道的な問題で素直に実力差がつく問題です。ただし作文の問題は殆どないことには注意が必要です。理科は概ね標準的ですが化学の有機化学が難しかったりとピンポイントで特徴はあります。理科の有利不利はやや生物有利かもしれませんが理科以上に英数の傾向にきちんと適応できるかどうかが最大のポイントです。

<群馬大>二次比率は50%です。数学は易しめ、理科は物理・化学のみで標準レベルですがかなりの短時間型です。小論文が事実上の英語で非常に難易度が高く差がつかない問題でしたが、令和4年度入試では突如課題文がほぼ日本文となりました。この傾向が固定されるのかどうかは不明ですが、いずれにせよ英語力ではあまり差が付きません。理数重視の学習が求められます。面接一発アウトリスクがあるので、そこにも注意してください。

<奈良県立医大前期>二次比率は50%です。英・数・理を180分で一気に捌くトリアージ方式という形式で、二次の理科については1科目選択で構いません。理科は完走ほぼ必須、英語は最後の自由英作文については要検討ですがなるべく完走したく、数学に関しては易しい問題や標準問題を取捨選択して解いていくスタイルになります。理科のパフォーマンスと自由英作文の熟練度で大きな差がつく試験です。令和6年度入試よりトリアージ方式は廃止され、小論文試験のみとなります。いわゆる王道的な小論文になるのか、ある程度は基礎学力を問うてくる形になるかは詳細がまだ公表されていません。面接は非常に寛容で、面接点は0点で一発アウト報告もほとんど聞いたことがありません。

<岐阜大>二次比率は60%です。数学は易しい問題で高得点必須ですが、英語に大きな特徴があり超速読型かつすべて選択式です。やや癖のある問題もありますが採点基準で悩む必要が無いので得点の見通しがつきやすいのがメリットでしょう。理科については標準的で、生物の考察問題がやや難しいのでどちらかというと物理有利と考えています。面接は非常に寛容で、グループディスカッションのみの実施で一発アウト報告も聞いたことはありません。

<山口大>二次比率は40%です。数学は標準からやや難レベルで、医学部受験層でもきちんと差がつく内容となっています。英語については標準レベルですが英作文にかなり偏った出題であり、リーディング力ではあまり差が付きません。数学はハイレベルであるもののしっかり点差がつく内容である一方、英語は読解力ではあまり差がつかない内容であるため、数強有利としています。英数に特徴がある一方で理科は易し目で、高得点帯で団子になっていると考えています。物理選択も生物選択も大差ありません。面接については0点ですが一発アウト事例はそれなりの数が報告されているようなので、最低限の面接対策はきちんと行うべきでしょう。

<富山大>二次比率は44%です。数学は標準からやや難の思考力重視のそこそこ差のつく問題です。英語に特徴があり、専門性の高い理系ジャンルの長文読解に200ワードの巨大英作文を処理するというハードな内容になっています。多分、採点はやや緩めなので何かしら書くようにしてください。理科については標準~やや難レベルで時間に余裕もあるので、それなりに点差が付きます。以前は理科の配点が高めでしたが圧縮されてしまい、数学と理科の総合点である程度の点差がつくと考えられます。面接についてはグループディスカッションと個人面接で、そこそこの配点でそこそこの点差が付きます。

<福井大>二次比率は44%です。数学は標準~やや難レベルのそこそこ差のつく問題で、英語に若干の癖があり小説文が出題されこれがやや難です。一番荒れているのは理科の傾向で、物理と化学の出題範囲にかなりの不確実性があります。生物は単科医系の傾向で、出題範囲に偏りがあり知識問題あり、考察問題ありとやや難ではありますがバランスは一定しています。面接に関してはほどほどの配点で点差はやや小さめと考えられ、面接リスクはやや低めとしています。

<大分大>二次比率は55%です。数学は易しく高得点必須であり、英語は並び替えや文挿入などユニークな形式の出題が目立ちます。しかしながら作文の出題がありません。理科の配点が高く、概ね標準レベルですが短時間型で、意外と得点率は高くありません。面接に関しては不明点は多いですが、配点が結構あるものの面接点のブレはそこまでないんじゃないかとも思っています。面接リスク標準にしていますが不明点多くどうとも言えないというのが正直なところです。

<弘前大>二次比率33%です。弘前大では令和3年度から二次の学力試験を廃止し総合問題と面接のみになりました。総合問題についてはほぼ英語で、小問数問だけ、理科や数学の内容が問われます。難易度はやや易~標準レベルです。面接点も大きくブレる傾向にあり、ギャンブル性は高いです。共通テストは失敗した、英語は出来る、他の科目では勝負できない・・・という状況で出願、という形が最も多くなりそうです。また、一般枠、青森県地域枠問わず、合格者の大半は県外出身者ですので、県外生であってもそう恐れずに出願してしまって良いかと思われます。

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