<国公立医学部全大学化学難易度ランキング>国公立医学部受験において化学重要問題集A問題の汎用性が高すぎる件について

はじめに

医学部入試対策について、インターネット上で様々な情報が錯綜しています。

  • 「医学部受験生は難しい問題集までやらないとダメ」と言われたり、
  • 「医学部受験は基礎問題と標準問題の完成度だ」などと言われたり、
  • 「医学部受験は特殊な問題が出るから特化した対策をしないといけない」などと言われたり、

矛盾したメッセージが氾濫しています。この矛盾は国公立で50、私立でも30余りある医学部を全て一括りにして話してしまうからこそ発生しているとわたしは考えています。

このチャンネル(ブログ)ではこれまで、実際に50ある国公立大学の医学部入試の過去問を全科目コツコツ解き、分析動画(記事)をアップロードしてきました。このページでは、「化学重要問題集A問題の汎用性が異常すぎる件について」という切り口で、化学の分析をまとめています。

動画でご覧になりたい方はこちら

化学重要問題集とは

  • 『化学重要問題集』は化学の受験対策問題集でユーザーが多い参考書の1つ
  • A問題⇒入試標準レベル B問題⇒頻出難問
  • ※より難しい参考書:『化学の新演習』
  • 思考力型の問題演習が有効な大学は限定的

<化学重要問題集とは>
ところで、化学の受験対策で最もユーザーが多いのは、化学重要問題集ではないでしょうか。基礎固めが終わり次第、重要問題集をやろう、と指導されることも多いかと思われます。

<A問題のレベル感>
この重要問題集は、各分野がA問題とB問題の2つのパートからなり、A問題は入試標準レベルと呼ばれるもので、医学部受験生はほぼ全て解けることが理想ではあります。とはいえ、化学で学ばなければならない範囲は非常に広く、全てのA問題を、長期記憶だけで解ききれる受験生も、正直なところ、少ないです。

<B問題のレベル感>
一方で、B問題はいわゆる頻出難問と呼ばれる問題が中心となっており、初見では難しく苦戦する受験生が多いですが、色々な大学で使いまわされている問題なので、きちんとトレーニングをしていると他の受験生に差をつけることが出来ます。

<さらに難しい問題集『新演習』のレベル感>
重要問題集より更に難しい問題集となると、化学の新演習という問題集もあります。幅広いレベル帯の問題が収録されていますが、難しい問題になると、誰も聞いたことのない題材を、高校化学で学ぶ基礎的な概念で理解しようという趣旨の思考力型の問題も目立ちます。東大・京大の受験生は医学部医学科志望以外でも、化学で差をつけたいのであればこのような思考力型の問題をやりこむ価値はありますが、それ以外の大学では、医学部であっても、有効な大学は限られてきます。

グループA(重問Aで満点近い得点)

  • <易問高得点型> 佐賀、信州、鳥取、香川、長崎、山形、愛媛、鹿児島
  • <標準問題型> 熊本、新潟、高知
  • <特殊型> 群馬、山口、弘前
  • <英数二科目型(共テのみ)> 旭川、秋田、徳島、島根
  • <未分類> 宮崎

<『易問高得点型』の大学群>/長崎大だけやや例外的>
易問高得点型の大学は易しい問題ばかりで、重要問題集A問題をきちんと全問理解してすらすら解けるようにするのが学習の大きな方向性と言えます。一応補足をすると、長崎だけは化学実験を題材としたやや難しい問題が出題されますが、市販の教材では対策が難しいので、あまり差がついていないと考えており、グループAに入れています。

<『標準問題型』の大学群/熊本大の計算量の少なさは異常>
標準問題型に挙げた3大学は、英語または数学ではそこそこ難しく標準に入れていますが、理科ではかなり易しい問題が出題されています。特に熊本大では、計算問題がそもそも少なく、あったとしてもかなり軽いので、計算ミスで大きく失点することがほぼないといって良いヘンな傾向があります。

<『特殊型』の大学群/弘前大は実質化学の出題なしに近い>
特殊型の群馬、山口も理科は易しい問題で、弘前については、総合問題という形の二次試験しかありませんが、これはほぼ英語の問題となっており、化学の問題は小問レベルで数問出るかどうかで、もしかすると来年度は出ない可能性すらあります。

<『英数二科目型』の大学群>
英数二科目型の大学は化学の出題は共通テストのみですので、重要問題集A問題レベルの演習で構いませんが、共通テストの独特な出題形式に対応できない受験生もまあまあ見るので、センター試験も含めた過去問演習は少し早めに、共通テストの2か月くらい前から実施できると理想的です。

<宮崎大の難易度予想/令和4年度入試より化学導入>
最後に、宮崎大に関しては、令和4年度から始めて理科の試験が導入されますが、今までも後期試験では化学のみ出題されていました。その後期試験の難易度は非常に平易なものでしたので、令和4年度の前期試験の化学の試験も恐らく平易なものになると考えられ、グループAとしています。

グループB(重問Aで合格者平均/Bやっても無駄ではないが微妙…)

  • <易問高得点型> 琉球
  • <標準問題型> 三重、岡山、筑波、大阪市立
  • <標準短時間型> 千葉、金沢
  • <単科医大型> 札幌、福島
  • <特殊型> 奈良(前期)、岐阜

<琉球の化学だけはちょっぴり難しい>
易問高得点型の琉球に関しては、他の科目は全国でもトップレベルのやさしさですが、化学だけはちょっと凝った問題も見られるのでBに入れています。

<標準問題型>
標準問題型の4大学はオーソドックスな問題が中心であり、特筆する事項はありません。偏差値的には高いところが多く、重要問題集B問題相当の問題を解ける受験生も正直多いと思いますので、難化した場合はA問題だけのトレーニングでは差をつけられるかもしれません。

<標準短時間型は難問の出来では差がつきにくい>
標準・短時間型の千葉と金沢は、B問題相当の重めの問題もなくはないですが、時間制限があまりに厳しすぎて、重めの問題が解けるかどうかでは殆ど差がついていないと考えており、グループBに分類しています。

<札幌、福島は単科医大の中ではやさしめの問題難易度>
単科医大型の札幌医大は、英数はそこそこ難しいけれども理科は易しいパターンで、福島県立医大は、化学だけが拍子抜けするレベルで易しく、他の科目は難しいという変わった傾向があります。

<奈良前期はスピード勝負>
特殊型の奈良県立医大前期はトリアージ試験と呼ばれる特殊な形式で、理科は1科目で良かったりします。化学は小問が何問もあるという形式で、重めの問題は飛ばしながら進めるのが、トリアージ試験の本来の趣旨ではありますが、化学が得意なら全問完走も可能です。

<岐阜大は英語だけが特殊>
同じく特殊型の岐阜大は、本当に特殊なのは英語で、数学は易しく、理科は標準レベルです。

グループC(重問Aではギリギリ/重問Bで合格者平均)

  • <標準短時間型> 広島、神戸、名古屋市立
  • <単科医大型> 滋賀、奈良(後期)
  • <旧帝大型> 名古屋、九州、北海道
  • <特殊型> 富山、大分、福井

<標準短時間型/難化リスクに備えるならBはやりたい>
標準・短時間型の3大学ですが、特に広島と神戸は難易度変動も結構あり、易しい問題ばかりの年度もありますが、難化した年度に対応するならやはりB問題相当の問題もやっておきたいところです。正直このレベルの大学を受ける受験生はB問題相当の問題も含めきちんと解ける状態まで仕上げてきているので、A問題しかやっていないと、難化した場合には大きく差を広げられるリスクがあります。

<そんなにえげつなくはない単科医大/滋賀と奈良後期>
単科医大型の滋賀医大は、例年重めの問題が出題されていましたが、ここ2年ほどはかなり易しめになっているとの情報もあります。まだ最新年度はちゃんと調査していないので、リメイク版動画で分析できればと思います。奈良県立医大後期に関しては、理科はそこまで難しい問題でもないので、理科重視配点なのも考慮し、高得点を狙っていきたいところです。

<旧帝大の中でもやさしめの問題難易度/名大、九大、北大>
旧帝大型の名古屋大、九州大、北海道大も、偏差値が高い割には問題の難易度はそれほどでもないので、きちんと高得点を取っていきたいところです。

<北陸の医学部は問題難易度は難しめ/大分は理科配点2倍で実力差もつく>
特殊型の富山大は、偏差値こそあまり高くないものの、時間の制約があまり厳しくないため、情報処理能力というより、B問題相当の問題を時間をかけてでも解けるかどうかで差がつくと考えています。大分大についてはマイナー分野からの出題が目立ち、標準的な難易度のはずですが意外と点数が伸びず、苦戦する受験生が多いようです。同じく特殊型の福井大は本当に特殊です。分量もまちまち、出題分野もまちまち、難易度もまちまちといった感じで、掴みどころがありません。どのような形式でもそこそこの成績を出すにはB問題レベルまで解ける必要があります。

グループD(重問Bでギリギリ/新演習もやりたい)

  • <単科医大型> 浜松、和歌山
  • <旧帝大型> 東北
  • <特殊型> 横浜市立

<単科医らしい単科医/浜松と和歌山>
単科医大型の浜松医大と和歌山県立医大に関しては、易化しつつある単科医大の化学の問題の中でも、まだまだ重厚な問題が多く残っている大学になります。浜松医大は時間の制約も厳しく、時間配分の戦略もかなり考えないといけませんが、和歌山県立医大は制限時間の延長措置があり、まだゆとりがあるかもしれません。

<東北大、横浜市大は有機のみ要注意>
旧帝大型の東北大、特殊型の横浜市大に関しては、理論や無機はそれほどでもないのですが、有機の難易度が高く、有機分野だけは新演習など難しめの問題集で追加の演習をしたいところです。

グループE(重問Bでも足りない/新演習以上必須)

  • <旧帝大型> 東京、京都、大阪
  • <単科医大型> 東京医科歯科、京都府立医、山梨(後期のみ)

<医科歯科に関して/時間なかったら重問Bで良い>
旧帝大型の東大、京大、阪大に関してはまあお察しということで、単科医大型に関してコメントをします。東京医科歯科大に関しては、難しい思考力型の問題もありますが、時間制限があまりに厳しくそこまで難問では稼ぎづらいです。偏差値は非常に高く、多くの受験生が難問も解けるようにはしているとは思いますが、他の科目で稼げるなら化学は重要問題集B問題相当で抑えても何とかなるとは思います。グループDにするかは少し悩みました。

<京府医に関して/時間なければ重問Bでも良いが、新演習やれば大きく伸びる>
京都府立医大に関しては、時間の制約はまだゆとりがあるものの、基礎問題や標準問題の比率がかなり少なく、やや難以上の問題が大多数を占めます。特に有機の問題は日本一難しいといって良く、難化した年度では理不尽すぎて大問まるまる捨てても合格するような年度もあります。理論はまだましなので、理論を中心に点を稼げるようになると安定した得点源になります。ただ京都府立医大に関しても、他の科目で稼げる目途がついているなら、化学を重要問題集B問題相当で抑えてしまうやり方も悪くありません。定義上はグループDになりますが、明らかな難問ばかりが出題されており区別するためEに入れています。

<山梨大は今のところマジで難しい>
山梨大は傾向の変化も激しいですが、ここ最近理論ばかり出題されており、難しい題材を非常に少ない小問で解かせるタイプの難問が多く出題されています。物理はまだ標準的な難易度なので、化学より物理で点を稼いでいくほうが合理的です。ちなみに生物も選択できますが、恐らく物理有利です。ただ山梨大の一般入試は前期試験なし、後期オンリーの試験というのもあり、第一志望にする受験生はほぼ皆無でしょうから、基本的には前期の対策を最優先にしてもらって構いません。

最後に

国公立医学部入試においては、化学の問題の難易度が抑え気味な大学がかなりの数あります。故に、基礎的な問題を化学の全分野にわたって解けるようにするだけでも、かなり強力な武器になることが分かりました。大手予備校のいわゆる医学部向けの講座は、概ねB問題相当の問題を扱うことが多いため、もし、授業の内容が身についていないなあという心当たりがあるなら、重要問題集A問題を自習として取り組むなどして基礎固めを見直してください。

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