総評
- 数学はほどほどの難易度で医学部受験生の中でも点差がつく試験
- 英語は長文内容の専門性が強く、自由英作文も長いため、特化した対策が必要
- 二次試験理科の配点は圧縮されたが制限時間は相変わらず長いためやや難の問題で点差がつく試験
- 二次比率の割には逆転合格も多い試験。
東大・京大の理系の非医学部をこれまで志望していた層は、富山大学の対策は東大・京大対策と被るところも多いのですので、比較的すんなり入っていけるんじゃないかと思います。 多浪生や再受験生は面接点でやや不利になりますが、一浪・二浪あたりで理科の実力が確立してきた層にとっては、理科でアドバンテージを取り、面接での減点は少な目になり、大きくアドバンテージを取れることでしょう。 二次が医学部受験生でも差がつく問題となっており、極端な逆転合格事例もあるようで、センター76%からの逆転事例があることも統計資料から分かります。時間をかけても難しい問題を最後まで解ききる力をつけたと自負するならば、共通テストで失敗しても最後まで諦めずに勉強してください。
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入試の基本情報と面接
- 二次比率44%(理科重視配点から変更)
- 点差がつく面接。40~90点ほどのレンジ。
- グループ面接20分(基本的な内容)+グループディスカッション20分
- 公民は1科目受験不可。「倫理・政治経済」のみ使用可能
国語 | 社会 | 数学 | 理科 | 英語 | 面接 | 合計 | |
共通 | 200 | 100 | 200 | 200 | 200 | – | 900 |
二次 | – | – | 200 | 200 | 200 | 100 | 700 |
二次比率は44%で、わずかに共通テスト寄りといえます。
面接はそれなりに差がつき、40~90点のレンジになるようです。グループ面接20分の後、グループディスカッション20分です。
グループ面接では基本的なことしか聞かれません。グループディスカッションについてはどのような採点がされるかは未知数ですが、一般的には、しゃべり過ぎず黙り過ぎず、周りの様子も見ながら意見を述べていけばそれなりに良い点数が出るように思います。
数学の分析
<目標得点ライン>
満点200/H170/M140/L120
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン)
- 大問4問、試験時間120分
- 難易度は標準~やや難レベル。大問後半になるほど難度上がる計算力より思考力を問う問題多い。
- ボリュームはほどほどかやや少なめで、見直しの時間も十分確保可能。
- 苦手でも序盤の問題は落とさないように
- 偏りはあまり無いが式と証明、数II微積頻出
- 対策:網羅系問題集で標準的な解法マスター
その後地方国公立レベルや下位旧帝大レベルの問題集でアウトプットの練習
<試験問題の概要>
大問4問構成で、制限時間は120分の試験です。
全体的な難易度は標準~やや難しいレベルの問題で構成されています。論証問題はやや多めの印象です。
大問はいくつかの小問に分かれており、難易度は概ね後半になるほど高くなっています。計算力よりは、思考力を問う問題の方が多い印象です。
制限時間120分に対して、ボリュームはほどほどか、やや少なめです。繁雑な計算こそないものの、特に大問の後半に思考力を問う問題が多いので、方針を立てるまでに時間がかかるでしょう。
ただ、時間は比較的余裕があるはずですので、問題文はじっくり読み、ゆっくり腰を据えて問題に臨んでください。見直しの時間も、十分に確保できるはずです。大問の序盤の平易な問題は、絶対に落とさないようにしてください。
<頻出分野>
式と証明が2年連続、数3微積などが頻出です。
<富山大数学の対策>
標準的な問題集を通して、標準的な解法をマスターするのはもちろんのこと、地方国公立大や下位旧帝大などの問題でアウトプットの練習を行うことは重要と言えます。
余裕があればもう少し上のランクの問題を解いてもいいかもしれません。誘導小問が多い問題中心に演習し、誘導の意味を考えながら解く練習が必要です。
英語の分析
<目標得点ライン>
満点200/H170/M125/L105
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン)
- 試験時間90分、大問2~3問
長文2問、英作文1問 - 長文は語彙:標準レベル、内容:生物学や医学の素養無いと難しいか
- 自由英作文も重い問題。(200words程度)早い段階から練習が必要。
- 自由度の高いテーマの問題を150~200wordsに増やして練習。なるべく添削指導を受けられるように。
- 200wordsに慣れたら短時間で書く練習。30分前後で書けるとかなりアドバンテージ
<試験問題の概要>
90分の試験で、大問は2問のこともあれば3問のこともありますが、事実上3問といってよく、2問は長文で1問は英作文です。
長文は標準レベルで、記述問題、選択肢問題、並び替え問題があったりとバランスよく配置されています。
医学部専用問題ですので、医学トピックなど理系的なトピックが目立ちますが、専門用語にはたくさん注釈がついているので、語彙については普通の対策で良いでしょう。医学部専用問題ですので、医学トピックなど理系的なトピックが目立ちますが、専門用語にはたくさん注釈がついているので、語彙については普通の対策で良いでしょう。ただしサイエンスなどの科学雑誌のコラムからの引用も多く、生物学や医学の素養がないとなかなかしっくり来ない文章かもしれません。
自由英作文も非常に重い問題です。自由英作文の要求ワード数がとにかく多く、200ワード程度が最近の傾向です。けっこうガッツリ練習しないと200ワード級のエッセイを書けるようにはなりませんので、早い段階から自由英作文の練習をしましょう。200ワードの問題が出る大学は殆どありませんから、慣れてきたら、自由度の比較的高いテーマの自由英作文の問題を勝手に150ワードや200ワードのボリュームに増やして練習しましょう。
なるべく、添削指導が受けられる環境であることが望ましいです。200ワードのエッセイに慣れてきたら、次は時間を測って英作文を書く練習をしましょう。30分前後で書けるようになれば富山大学の二次試験ではかなりアドバンテージを取れます。
自由英作文がスムーズに書けることは長文の方にも相乗効果が出ます。自由英作文を短時間で仕上げることが出来れば、長文にかなりゆっくり余裕をもって取り組むことが出来、長文の正答率も上がるからです。もし自由英作文に時間がかかったとしても、自分はだいたい平均でどれだけの時間で200ワード自由英作文が完成するかを知っておくことは必要です。どれだけの時間を長文に割けるかを把握するためです。自由英作文のトレーニング次第で、自由英作文のみならず、長文の出来にも影響するという点で、かなりの点差がつく試験のように見えます。
化学の分析
<目標得点ライン>
満点100/90/M75/L65
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン)
- 試験時間180分(理科2科目)
- 大問4問構成。理論2問、有機1問、高分子1問
- 全学部共通問題で大問の一つは簡単だが残りは標準~やや難レベル
- 90分時間があるため、やや難レベルの出来が合格ラインに到達するかどうかを決めるやや難レベル=『重要問題集』のB問題レベル『化学の新演習』★★★レベルの問題少ない。標準問題を複合させた少し重めの問題はなるべく得点していきたいところ
<出題分野の偏り>
大問4問構成で、理論が2問、有機が1問、高分子が1問です。
無機は理論の大問1問にちょっと混じるくらいの年が多く、無機の対策は簡単で構いませんが、高分子は年によってはマニアックな知識も聞かれますので、きちんと対策をしてください。
<試験問題の概要>
全学共通問題となっており、大問の1つは拍子抜けするほど簡単な問題ですが、残りは標準からやや難レベルです。理科の配点が他の科目より1.5倍になっていることもあり、化学がたくさん対策できるかどうかはかなり重要なファクターになります。ここでいうやや難レベルの問題は具体的には重要問題集のB問題レベルです。化学の新演習でいうなら、★★の難しいものくらいのレベルです。時間がかかってもいいので、このレベルの難しい問題が解けるかどうかでそれなりに点差がつきます。目新しい設定の問題を考えさせる問題はないので新演習★★★レベルの問題は少ないですが、標準的なレベルのものを複合させた少し重めの問題が時々見えるといった感じで、こういう問題をなるべく拾っていきたいといった感じになります。
<時間配分に関して>
理科2科目で180分なので、化学には90分割けることになります。多くの大学の試験では、理科の時間が足りないため、やや難レベルの問題はきちんと「飛ばせる」かどうかが合否を分けますが、ここでは事情が違います。90分も時間があるので、やや難レベルの問題が「解ける」かどうかで合格者平均レベルに到達するかどうかが解けるかどうかが決まってきます。
物理の対策
<目標得点ライン>
満点100/H85/M80/L75
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン)
- 試験時間180分(理科2科目)大問3問構成。
- 全学部共通問題で難易度は標準レベル。融合問題の出題も
- 試験時間はゆっくり解いていっても十分か目新しい設定でも実は簡単ということも。慌てずに取り組むこと。
- 対策:『重要問題集』『名門の森』等の標準的な問題集の周回でOK。余裕があれば難しめの問題集も効果的。高得点勝負のため、ケアレスミスが大ダメージ。しっかり見直しを。
<試験問題の概要>
大問3問で構成されますが、いずれも全学部共通問題になっているため、難易度そのものは標準レベルで、決して難しい問題ではありません。
時折、融合問題が出題されることもあります。90分の時間がありますから、ゆっくり解いていっても時間が足りないことはないでしょう。目新しい設定の問題があったとしても、実は簡単で、時間の余裕もあることですからあわてず取り組んでいきましょう。
<時間配分に関して>
理科2科目で180分なので、物理には90分の時間は割けます。時間は余るとは思いますが、しっかり見直しをして、1つでも多くミスを見つけていきましょう。
<富山大物理の対策>
標準的なレベルの問題集の周回で構いませんが、余裕があれば難しめの問題集に手を出しても構いません。高得点勝負ですからケアレスミスによるダメージが大きめに出ます。
生物の対策
<目標得点ライン>
満点100/H85/M70/L65
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン)
- 試験時間180分(理科2科目)。大問5問構成。
- 幅広い分野から出題 。知識問題と考察問題がバランスよく配分
- 知識問題で気持ちよく得点させてくれない細かい知識を聞かれる傾向。
- 対策:『生物用語の完全制覇』等が有用だが旧課程から改訂されていないため、『ランク別生物一問一答』等も有用か。論述問題対策で『生物 記述論述問題の完全対策』も。
- 考察問題はほとんどが典型問題。『大森徹の最強問題集』、『基礎問題精講』が効果的
<出題分野の傾向>
知識問題と考察問題がバランスよく配分されています。
富山大学の生物は、知識問題で気持ちよく点を取らせてくれないのが一つの特徴です。結構細かいところを聞かれる傾向にあり、曖昧な理解では確信をもって回答することが出来ません。
近年、高校生物は細かい知識を問うよりは、生物学の根底に流れる普遍的な考え方をきちんと理解しているかどうか見ようという方針の試験がされることが多くなり、共通テストなどではその傾向が色濃く出ているのですが、ここでは少しベクトルが違います。
「生物用語の完全制覇」などが難しめの知識問題のアウトプット演習としては有用でありますが、この問題集は旧課程から改訂がされていませんので、「ランク順 生物一問一答」なども新課程対応の面である程度有用かもしれません。
近年の生物の試験の傾向とは真逆ですので、知識問題に重点を置いた問題集は最近少ないのが少し考えものですね。その他、知識を問う論述問題もしばしば出題されるため、「記述論述問題の完全対策」も有用でしょう。記述問題を通して知識をブラッシュアップすることで、選択肢の正誤問題などでも相乗効果が期待できます。
<試験問題の概要>
理科2科目で180分なので、生物には90分程度の時間は割けます。時間がたっぷりあるので、難しい問題に引っかかってもさほどダメージはありませんが、何十分も難問に時間をかけるようなことだけはないようにしてくださいね。
<出題分野の偏り>
植物・生態・進化を含む幅広い分野から出題され、考察は殆どが典型問題で、たまに難しいものもありますが、難しい問題は合否には全く影響しません。
<富山大生物の対策>
典型問題が網羅できる、「大森徹の最強問題集」、これがしんどければ「基礎問題精講」でも構いませんが、せっかく理科の配点が1.5倍あるので、最強問題集のほうをちゃんとやっておきたいですね。
富山県の地域医療の概況
- 面積の小ささもあり、比較的安定した地域医療体制が構築されている
- 中心は富山医療圏だが、第二の拠点として高岡医療圏、新川医療圏、砺波医療圏がある。
- 地域偏在の程度も小さく、たとえ偏在が起きても富山市へのアクセスが良い。
- 診療科偏在もほとんどなし。バランスよく配置
富山県はその面積の小ささもあり、比較的安定した地域医療体制が築けていると言えるでしょう。
勿論富山の医療の中心は富山大学のある富山医療圏ですが、第二の拠点として高岡医療圏、その他、魚津市のある新川(にいかわ)医療圏及び砺波(となみ)医療圏があります。
医師の地域偏在の程度も小さく、例え偏在が起きても中心地である富山へのアクセスは比較的良いため、地域医療に関して深刻な問題を抱えているわけではなさそうです。
診療科偏在もほとんど行ってなく、データ上は小児外科が不足とのことですが、県に3人、4人といったレベルの話になるので、大きな問題ではないでしょう。
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