総評
- 数学、理科の配点が高く、特に数学は実力差が大きく現れる試験
- 英語はやや易化傾向か?いずれにせよ配点低く、軽量の対策でとどめておくべき
理数重視が配点からも明らかであるため、関西圏の中でも数強の受験生が多く集まっています。理数に自信があっても、他の受験生もハイレベルであるため、大きなアドバンテージが取れるとは限らないことを覚悟しておいてください。
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入試の基本情報と面接
- 二次比率55%
- 面接は約15分間で一般的な内容
面接点は「0点」だが面接落ちの噂は少しはあり - 公民は1科目受験可能。「倫理」、「政治経済」、「現代社会」での受験が可能
国語 | 社会 | 数学 | 理科 | 英語 | 面接 | 合計 | |
共通 | 100 | 50 | 200 | 200 | 100 | 650 | |
二次 | 300 | 300 | 200 | – | 800 |
<大阪市立大学・大阪府立大学が合併>
大阪公立大学医学部はかつて大阪市立大学医学部でしたが、「大阪都構想」の一環として大阪市立大学と大阪府立大学が合併され、大阪公立大学となりました。医学部医学科は元々大阪市立大学にしかありませんでしたので、影響はほぼありません。試験問題も概ね大阪市立大学の傾向を踏襲していますが、一部の科目で問題形式のマイナーチェンジがあります。
<一般入試前期の配点>
二次比率は55%です。面接については、約15分の面接で概ね一般的なことが聞かれるようです。面接落ちの噂は少し前まで聞いたことがなかったのですが、ここ最近、面接一発不合格の例をSNS情報レベルではありますが伺っております。勉強に専念し過ぎるとコミュニケーション能力はどんどん落ちていきますので、受験の数日前くらいからは、家族とでもいいので、コミュニケーションを取りながら生活してみましょう。また、公民は1科目受験が可能で、すなわち、倫理、政経、現社、それぞれ1科目での受験が可能です。
<その他の入試制度>
大阪公立大学のその他の入試制度について説明します。
・一浪まで、評定4.3以上必要、出身地縛りなしの総合型選抜で5名の定員
・現役のみ、大阪出身限定、評定4.3以上、初期研修医の修了後、大阪公立大の医局へ所属することが求められる学校推薦型選抜で10名の定員
があります。
配点はほぼ共通テストの点数に偏っており、出願要件は比較的厳しいですが、出願さえできてしまえば、共通テストの逃げ切りが狙えます。
公民は1科目受験が可能です。すなわち、倫理、政経、現社、それぞれ1科目での受験が可能です。
数学の分析
<目標得点ライン>
満点300/H250/M200/L180
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン)
- 大問4問、試験時間120分
- 大問1(不等式・極限)C***
- 大問2(確率・数列と極限)B**
- 大問3(整数・複素数)C***
- 大問4(数3微積)C****
- 試験時間に対してボリュームは適正~やや多め
- 出題分野に偏り。数Ⅲが頻出で特に数Ⅲ微積と数列の極限が最頻出。次点でベクトル
- 対策:標準問題集で標準問題インプット必須。
アウトプットは『やさしい理系数学』等の鉄板問題集のほか、数Ⅲのみ『標準問題精講』等で追加演習するのも効果的
<問題傾向>
工学部や理学部と共通問題のはずですが、全体的な難易度はやや難レベルで、前回の分析時に比べて明らかに難化しています。各大問が2~3の誘導小問から構成されています。計算力・思考力・論証力をバランスよく問い、よく練られた良問が多い印象です。制限時間120分に対してボリュームは適正~やや多めで、大問3や大問4ではかなり重厚な問題となっており、解答に非常に時間を食う問題も出題されてきています。
<頻出分野>
出題分野には大いに偏りがあり、数3分野がとにかく頻出になっています。数3微積、数列の極限が特に頻出となっており、2022年度でも出題がありました。年度によっては、大問4問全てが数3分野からの出題になっていることもありました。次点でベクトルが頻出になっています。確率の出題があまりなかったのですが、2022年度では出題がありました。
<大阪公立大数学の対策>
大阪公立大数学の対策としては、青チャート、フォーカスゴールド、一対一対応の演習などの標準問題のインプットは必須になるでしょう。アウトプット演習はやさしい理系数学など鉄板のもののほかに、数3は特に丁寧に対策したいことから、標準問題精講の数3だけ追加で演習しても良いでしょう。2022年度の問題は、理学部や工学部の受験生では壊滅的な出来になっていたと考えられ、今後、難易度はまた易しくなるかもしれません。ただ理数重視の配点であるため、大阪公立大医学部の受験生は、数学で妥協はしたくないですね。
英語の分析
<目標得点ライン>
満点200/H170/M150/L135
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン)
- 試験時間100分、大問3問に 大問4の穴埋め削除
- 《大問別分析》
大問1 長文 B+
大問2 長文 C-
大問3 英作文(和文英訳) B- - 穴埋め問題削除により、時間の余裕は出るか
- 対策:和文英訳の対策本を丁寧に演習
ハイレベル単語含めてインプットする程度
<試験問題の概要>
大問4の穴埋め問題が削除され、大問は3問になりました。
大問1と大問2の長文については、語彙はやや難、内容は標準レベルです。長文そのもののレベルは例年に比べ少し控えめになりました。たくさん注釈はついているものの注釈も英語で書かれていることが多いため、読むのにはたいへん苦労します。しかしながら、大問4が削除されたため、時間的な余裕もあり、丁寧に注釈を確認しながら読み進めることが出来るでしょう。設問の難易度は概ね標準的で、空欄補充、抜出問題、内容説明問題、和訳、内容一致問題などがあります。
大問3は英作文で、難易度は標準です。阪大レベルの直訳しにくい日本語の文を、バラバラの小問にしたような感じの設問になっています。
<時間配分に関して>
以前の年度に比べて、時間の余裕が結構あります。ある程度、実力差の出る試験問題になったように思います。
<大阪公立大英語の対策>
大阪公立大の英語の対策としては、精読中心の長文読解演習に加え、和文英訳については竹岡広信の英作文が面白いほど書ける本、などの和文英訳対策本を丁寧に練習すると良いでしょう。しかしながら、他の科目に比べて配点が低めに抑えられているので、あんまり英語をやり過ぎるとトータルの点数は稼げません。語彙は難しいのですが、注釈がたくさんついており、その注釈をゆっくり読む時間も与えられているため、ハイレベルな単語集をやりこむ価値はそこまでないのかもしれません。
化学の分析
<目標得点ライン>
満点150/H145/M135/L130
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン)
- 試験時間150分(理科2科目)
- 大問3問構成。理論1問、無機1問、有機1問
- 大問1(無機) A
大問2(理論) A
大問3(有機) A - R4は急激に易化。大阪府大との合併の影響か?
- 対策:『重要問題集』等のオーソドックスな問題集を丁寧にこなすだけでも勝負できるが、『Doシリーズ福間の無機化学』等で無機対策するとより得点が安定する
<出題分野の傾向>
大問3問構成で、理論が1問、無機が1問、有機が1問の構成になっています。制限時間は150分です。高分子は有機の大問の一部に出題されることもありますが、そもそも全くでない年度もあります。2022年度に関しても、小問1問ぶんの出題に留まりました。全体的な難易度は例年よりかなり易しくなっています。大阪府大の問題もかなり平易ですので、大阪府大の先生の作題が増えているのかもしれません。計算問題も減っています。
<時間配分に関して>
問題が平易なのに、75分も時間があるので、時間もかなり余ります。物理や生物に時間を割くことが出来ます。ただ物理や生物も問題の分量は大したことが無いので、見直しにかなりの時間が割けるかもしれません。
<大阪公立大化学の対策>
大阪公立大化学の対策としては、重要問題集A問題レベルで良いので、基礎をしっかり身に着けてください。また、無機がしっかり出題されているのでDoシリーズ福間の無機化学などの無機対策本で対策するとより得点が安定するでしょう。
物理の対策
<目標得点ライン>
満点150/H140/M130/L120
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン)
- 試験時間150分(理科2科目)
- 大問3問構成。力学1問、電磁気1問、熱か波動で1問
- 大問1(力学) A
大問2(電磁気) B
大問3(波動) A - R4は物理も易化。大阪府大の影響あり?
- 対策:『重要問題集』や『名門の森』等の標準レベルの問題集でよいが、1問1問背景にある物理現象を理解しながら丁寧に学習すること
<出題分野の傾向>
大問3問構成で、1問は力学、1問は電磁気、もう1問は熱か波動、の構成になっています。原子分野はあまり出題されませんが、出題された年度もあるので、一応フォローしておく必要があります。
<試験問題の概要>
2022年度の問題は例年に比べ易しくなりました。大阪府大の先生の作題が混じっている影響があるかもしれません。例年は、標準~やや難レベルの問題でしたが、2022年度に関してはどこかの問題集で見たことのあるような問題ばかりという印象です。
<時間配分に関して>
標準的なレベルにも関わらず、時間もたっぷり75分あり、大問も3問しかないので、見直しに時間をかけられるように思います。
<大阪公立大物理の対策>
大阪公立大物理の対策としては、今年度に限って言えば、重要問題集A問題や良問の風レベルで十分な点数が期待できます。難化に備えるのであれば、重要問題集B問題や名問の森などのテキストを用いて、1問1問、背景にある物理現象を理解しながら、丁寧に学習を進めてください。
生物の対策
<目標得点ライン>
満点150/H130/M120/L115
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン)
- 試験時間150分(理科2科目)
- 大問4問構成、分野偏り若干あり。分子生物と代謝はほぼ必ず出題。進化と生態が次点で頻出。体内環境、神経の出題は控えめな傾向。
- 大問1(分子生物) A
- 大問2(植物生理) B
- 大問3(神経) B
- 大問4(生態) A
- 難易度は標準レベル。知識問題と考察問題がバランスよく出題
- 対策:「大森徹の最強問題集」等の網羅性の高い標準問題集に丁寧に取り組むこと。
- 遺伝はほとんど出題がないため対策不要
<出題分野の傾向>
大問4問構成で、分野の偏りは若干あります。分子生物と代謝がよく出題されており、次点で、進化と生態が頻出になっています。医学部の先生が生物の試験の作題をすることがあまりないためか、体内環境や神経からの出題が控えめになっています。
<試験問題の概要>
全体的な難易度は標準レベルで、知識問題と考察問題がバランスよく出題されています。医学部受験生は、大阪公立大では医学系分野以外から出題されやすいので取り組みにくさを感じるかもしれませんが、そこをぐっと我慢して丁寧に勉強を進めていけば、それなりに安定して高得点が取れるでしょう。
<時間配分に関して>
標準的なレベルにも関わらず、時間もたっぷり75分あり、大問も3問しかないので、見直しに時間をかけられるように思います。
<大阪公立大生物の対策>
大阪公立大の生物の対策としては、大森徹の最強問題集など、網羅性の高い標準問題集に丁寧に取り組めば、それなりに良い点数が取れるでしょう。遺伝については殆ど出題がないので、対策は不要です。
全体の得点戦略
H | M | L | 満点 | |
数学 | 250 | 200 | 180 | 300 |
英語 | 170 | 150 | 135 | 200 |
化学 | 145 | 135 | 130 | 150 |
物理 | 140 | 130 | 120 | 150 |
生物 | 130 | 120 | 115 | 150 |
共テ | 550 | 540 | 530 | 650 |
面接 | 0 | 0 | 0 | 0 |
合計(物理) | 1255 | 1155 | 1095 | 1450 |
大阪公立大の全体の得点戦略について考察してみようと思います。大阪公立大の2022年度における合格者最低点は1094点と発表されています。共通テストのLラインを530点と設定し、物理選択の場合のLライン合計点が1095点になるように調整しました。易しめの理科で失点せずHigh~Middleに近い得点をキープし、難しめの数学でMiddle程度の得点を確保し、英語はLowを大きく割り込まなければよし、というのが理想的な得点の取り方でしょう。
大阪府大との合併の影響を考える
- 学部ごとの定員数
工学部 → 府立大 約450名 市立大 約300名
理学部 → 府立大 約140名 市立大 約140名
文系学部は圧倒的に市立大に偏る - 例年の府立大の問題難易度
数学 市立大とほぼ同程度か少し易しい
物・化 市立大よりやや易しい
生物 同程度 - 2022年度以降の問題作題予想
数・生 市立大理学部&府立大理学部の持ち回り
英語 市立大文系学部が中心
物・化 府立大工学部が中心 - 今後の出題傾向予想
数学 難易度変動あるものの例年と同程度~少し易しめの出題に落ち着く。
英語 大問4の穴埋め復活あれば例年並みの難しい問題に。そうでなければ2022年度と同程度。
物・化 2022年程度の易しめの出題続く
生物 例年通りの出題
<大阪府立大との合併の影響を考える>
さて、大阪公立大の入試問題は、概ね大阪市立大の形式を踏襲していましたが、難易度が変動していたり、形式のマイナーチェンジがありました。大阪府立大の合併の影響はあったのでしょうか。考えてみましょう。
大阪府立大は工学部の中期日程で大量の受験生を集めています。その定員は450名程度で、大阪市立大の定員の約300名よりかなり多くなっています。理学部はほぼ対等で大阪府立大も大阪市立大も140名程度です。一方で、文系学部は大阪市大の方が圧倒的に優勢で、大阪市大には文学部・法学部・経済学部・商学部と揃っていますが、大阪府大では現代システム科学域という学際的な分野しかありません。また例年、大阪府大の数学は大阪市大とほぼ同程度か少し易しい、物理・化学は大阪府大の方がやや易しい、生物に関してはほぼ同程度と考えます。2022年度の大阪公立大の問題難易度から察するに、数学・生物は大阪市大理学部と大阪府大理学部の持ち回りで作題、英語は大阪市大の文系学部(特に文学部)が中心で作題、物理・化学は大阪府大工学部が中心で出題、と勝手に予想します。
以上を踏まえて、今後の出題傾向を予想すると、
数学:難易度変動あるものの例年と同程度~少し易しめの出題に落ち着く
英語:大問4の穴埋め復活があれば例年並みの難しめの出題に そうでなければ2022年と同程度
物理・化学:2022年程度の易しめの出題が続く
生物:例年通り
と考えます。理数重視の配点ですが、理数の中でも、数学のウェイトがすこし高くなるんじゃないかと予想します。勝手な予想なので、外れたらすみません!
大阪府の地域医療の概況
- 人口当たり医師数は全国平均よりやや多い
- 地域偏在の問題もほとんどなく、府全域で高度な医療が可能
- 北部:大阪大、大阪医大、関西医大
南部:大阪市大、近畿大 - 診療科偏在の問題もほとんどないが、精神科が相対的に不足気味か
<大阪の地域医療>
最後に大阪府の地域医療に関して確認してみましょう。大阪府の人口当たりの医師数は全国平均と比べるとやや多めになっています。地域偏在の問題も殆どないといってよく、大学病院も大阪の北部と南部にバランスよく配置されており、大阪府全域で高度な医療が提供されています。具体的には、大阪の北部には阪大、大阪医大、関西医大、南部では大阪市大のほか、近大なども医学部を持つ大学となっています。診療科偏在は殆どありませんが、精神科などは相対的に不足気味かもしれません。
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