同義置換と非同義置換―頻出問題解説シリーズ(分子生物)

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コドン説

 mRNAの情報はこの後①翻訳という過程を経てタンパク質に変換されるが、mRNAの情報は②3つごと(③コドン)で一つの④アミノ酸の情報に変換されていることが知られている。

 mRNAの塩基はアデニン、グアニン、シトシン、ウラシルの⑤4種類しか存在しないにもかかわらず、生物の合成するアミノ酸は⑥20種類も存在する。1つの塩基が1つのアミノ酸の情報に対応するのでは、4種類のアミノ酸しか表現できず、つじつまがあわない。3つの塩基が1つのアミノ酸の情報に対応すると考えれば、最大⑦64種類のアミノ酸を表現できるので、つじつまがあう。③コドンが過剰であるが、⑧縮重を考えればきちんと説明できる。

★縮重とは何か?遺伝暗号表を見ながら確認しよう

遺伝情報の変異と遺伝病

 DNAの塩基は①紫外線や②化学物質などの作用により別の塩基に置き換わってしまうことがある。また、③DNA複製時のヌクレオチド取り込みの誤りが修正されないこともある。このような理由により、DNAに④突然変異が入ることがある。

 ④突然変異は⑤置換と⑥挿入・欠失の大きく2つにわけることが出来る。⑤置換では、⑦1つの塩基が別の塩基に置き換わっている。この変異は、生物の形質に大きな変化をもたらすこともあるが、そうではないこともある。例えば、⑤置換の結果、あるコドンが⑧終止コドンに置き換わったりすると、mRNAの翻訳がそこで終了してしまい、発現するタンパク質の性質は大きく変わってしまう。一方、⑤置換したものの、⑨あるコドンのコードするアミノ酸が変わらなかったようなケースでは、発現するタンパク質の性質はほとんど変わらない。

 ⑥挿入・欠失は多くの場合⑩フレームシフト変異となり、すなわち、⑪コドンの読み枠がずれ、変異した場所からは全く異なるアミノ酸配列のタンパク質が発現することになるので、タンパク質に大きな影響が出やすい。

 遺伝子変異による代表的な疾患として、⑫鎌状赤血球貧血症と⑬フェニルケトン尿症を挙げる。⑫鎌状赤血球貧血症では、⑭グロビン遺伝子の塩基配列の置換により、⑭グロビンタンパク質のアミノ酸が変化することで、赤血球の形状が⑮鎌状になってしまう。鎌状赤血球は脾臓で破壊されやすく、⑯深刻な貧血症状を引き起こしやすい。しかしながら、⑰マラリア原虫に対する抵抗性があるため、アフリカなどでは必ずしも生存に不利な形質ではない。⑬フェニルケトン尿症では、フェニルアラニンをチロシンに変換する酵素の遺伝子のイントロンに置換が起こり、その結果、⑱スプライシングに異常が出る。一部のエキソンが取り除かれてしまい、不完全な酵素しか発現しない。フェニルアラニンはチロシンにならない代わりにフェニルケトンの状態で排泄されるが、これらの代謝物が体内に蓄積すると、大脳の発達に異常をきたし、精神遅滞症状などを引き起こしてしまう。

 このような遺伝性疾患でなくても、健康なヒト同士でもDNAの塩基配列には微妙に差異があり、それを⑲一塩基多型(SNP、スニップ)と呼ぶ。人それぞれ体質が異なるのはこの一塩基多型の存在によるものが大きい。

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