<傾向と対策>大阪大学(医学部医学科) 英・数・理、隙のない高学力が必要。英語の採点はゆるめ。

総評

  • 英数の安定的な高学力に加え、理科でもやや難の問題から得点する必要があり、高1・2の時点から入念な準備をして取り組まないと合格まで行きつかない大学
高1・高2の時点から入念な準備をして取り組まないと中々合格までは行きつかない

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入試の基本情報と面接

  • 二次比率75%
  • 面接点は「0点」。10分前後の面接で概ね一般的な内容
  • 公民は1科目受験不可。「倫理・政治経済」のみ使用可能
  国語 社会 数学 理科 英語 面接 合計
共通 100 100 100 100 100 500
二次 500 500 500 1500

二次比率は75%で、二次型です。面接点はゼロ点で、10分前後の面接で概ね一般的なことが聞かれるようです。

公民は1科目受験不可で、「倫理・政経」オンリーです。

数学の分析<150分・5問>

<目標得点ライン>
満点500/H450/M400/L385
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン)

  • 大問5問、試験時間150分
  • 難易度は標準〜やや難。他分野融合問題多く、全体的な数学力を問う良問で構成されたセット
  • ボリュームは適正
  • 数3微積や確率が頻出。その他まんべんなく
  • 対策:『青チャート』等でのインプットは程々にアウトプット中心の学習を心がけること。『ハイレベル理系数学』、『理系数学入試の核心 難関大編』、『上級問題精講』等の最上位レベルの問題集まで取り組みたい

<試験問題の概要>
大問5問構成で、制限時間は150分です。全体的な難易度は標準~やや難レベルです。おおむね2~3問の誘導小問がついていることが多いようです。数学の基本事項を分野を横断して出題する多分野融合問題の出題が多く、全体的な数学力を問う良問で構成されたセットと言えるでしょう。制限時間に対して、ボリュームは適正です。極端に煩雑な計算を要求する問題こそ少ないものの、それぞれの大問で少しずつ時間を食うので、決して油断は出来ません。

<頻出分野>
数3微積や確率が頻出で、確率は複素数との融合問題がここ最近の頻出パターンとなっています。その他の分野は満遍なく出題されており、多分野融合問題が多いので各分野を満遍なく学習する必要があります。

<大阪大数学の対策・インプット編> 
標準問題の出題もあるものの、市販の問題集と同じパターンで出題されていることもあまりないため、『青チャート』などでのインプット学習は程ほどで済ませ、アウトプット演習を中心とした学習を心がけましょう。

<大阪大数学の対策・アウトプット編>
要求される得点率は高めですので、『ハイレベル理系数学』、『理系数学入試の核心(難関大編)』、『上級問題精講』など最上位レベルの問題集までアウトプット演習を進めたいところです。

英語の分析<90分・4問> 

<目標得点ライン>
満点500/H425/M400/L360
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン)

  • 試験時間90分、大問4問
  • 長文は内容も語彙も標準レベル
  • 《大問別分析》
    大問1:英文和訳(精読系。徐々に易化)
    大問2:長文(論述対策でさほど難しくない)
    大問3:自由英作文(70words程度)
    大問4:和文英訳(こなれた日本語の英訳)
  • ボリュームは適正かやや時間余るか
  • 普通の長文問題は1問のみ。精読力や英作文力で差がつく問題セット

<試験問題の概要>
90分の試験で、大問は4問です。

大問1はかなり長めの英文和訳、大問2は通常の長文問題になっています。長文の難易度は内容・語彙共に標準レベルで難しいわけではありません。大問1は今では珍しくなってしまった精読系の問題で、やや複雑な構造を取る英文を和訳させる問題になっています。年々、少しずつ難易度が緩和されており、今ではそれほど難しく感じないかもしれません。大問2は内容説明や内容一致など長文内容の理解を試す設問が主となっています。英文の内容が理解できていれば大きく失点することはないので、若干の論述トレーニングを積んでいればさほど難しくはないでしょう。

大問3は自由英作文で、70ワード程度の英文で指定されたテーマについて意見を述べる形です。

大問4は和文英訳で、こなれた日本語を英訳する形式となっています。京大ほど難易度は高くはありませんが、事前にきちんと対策はしておきましょう。

<時間配分に関して>
制限時間に対して、ボリュームは適正か、やや余る受験生も多いでしょう。ふつうの長文問題は1題しか出題されておらず、精読力や英作文力で差がつく問題セットとなっています。

化学の分析<75分・4問> 

<目標得点ライン>
満点250/H225/M195/L180
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン)

  • 試験時間150分(理科2科目)
  • 大問4問構成。理論2問、有機1問、高分子1問
  • 難易度は標準〜難しい。医学部受験生はやや難の問題も得点の必要
  • 対策:『重要問題集』等の標準問題集だけでは演習量不足。『化学の新演習』等の難問系の問題集にもじっくり取り組む必要あり。難問演習は有機、高分子を最優先に行い、理論は後回しにするのがおススメ

<試験問題の概要>
理科2科目で150分なので、化学には75分割けることになります。大問4問構成で、理論が2問、有機が1問、高分子が1問の構成になっています。無機については理論の大問の1部に出題されることが多いようです。全体的な難易度は標準から難しいレベルで、令和2年度では有機や高分子は取り組みやすかったものの、理論の問題はかなり難しく、序盤の小問から取り組みにくかったため慌てた受験生も多かったかもしれません。年度によっては有機などにも難しい問題が出題されますが、有機の難問は計算ミスなどのリスクも少ないため何とか解答したいところです。医学部以外の受験生なら標準問題を取りこぼさなければお釣りが出るレベルですが、医学部の受験生はやや難の問題でもある程度の点をひねり出さないと合格点に到達しません。

<大阪大化学の対策>
『重要問題集』などの標準問題集の周回だけではやや演習量が不足すると考えられ、『化学の新演習』などの難問系問題集を十分な時間を取ってじっくり取り組む必要があるでしょう。また難問の演習は有機や高分子をまず最優先に行い、理論のトレーニングは後回しにすることをお勧めします。有機や高分子はあまり範囲が広くなく、計算ミスのリスクなども小さいため、手っ取り早く得点源にできます。その一方で理論は範囲が膨大で、せっかく解き方が分かっても計算ミスで失点することも多いため、得点に繋がるまで結構な時間がかかります。

物理の対策<75分・3問> 

<目標得点ライン>
満点250/H225/M205/L190
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン)

  • 試験時間150分(理科2科目)
  • 大問3問構成。力学1問、電磁気1問、波動 or 熱力学 or 原子で1問
  • 難易度は標準〜やや難。後半難しくなる分量多く、解き切るにはかなりの実力が必要
  • まずは標準問題を確実に正答し、余った時間でやや難の問題を拾う。時間配分の訓練を。
  • 対策:標準問題集は早めに仕上げ、『標準問題精講』等の難問系問題集に取り組みたい。時間なければ阪大物理の過去問演習優先。似たような設定の問題等、使い回しがある

<出題分野の傾向>
大問3問構成で、1問は力学、1問は電磁気、もう1問は波動か熱力学か原子、の構成になっています。

<試験問題の概要>
理科2科目で150分なので、物理には75分が割けます。難易度は標準からやや難レベルで、各大問の後半の設問になるほど難しくなります。

<時間配分に関して>
令和2年度の試験では大問3の後半を除き、どの大問もそれ程難しいわけではありませんが、分量が多いため時間内に解ききるにはかなりの実力が必要でした。年度によって物理が難しくなったり、化学が難しくなったりと様々ですが、まずは標準問題をきちんと見極め確実に正答し、余った時間でやや難の問題の一部を拾っていけるように、時間配分のトレーニングをしっかり行いましょう。

<大阪大物理の対策>
『重要問題集』や『名問の森』などといった標準問題集は早めに仕上げてしまい、『標準問題精講』や『難系統の問題とその解き方』などの難問系問題集にも取り組みたいところです。時間がない場合は難問系問題集は早めに切り上げ、過去問演習にきちんと取り組みましょう。阪大物理では似たような設定の問題の使いまわしが見られ、過去問の設定をきちんと理解しておけば非常に取り組みやすくなることがしばしばあります。物理・化学を通しで時間配分のトレーニングをしたいので、2科目で同時に過去問演習へ移行できるように学習のペースを調整してくださいね。

生物の対策<75分・4問> 

<目標得点ライン>
満点250/H210/M185/L170
(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン) 

  • 試験時間150分(理科2科目)
  • 大問4問構成。出題分野に偏り。分子生物と神経が最も頻出、次点で代謝、体内環境、遺伝等がまんべんなく出題
  • 難易度は標準〜難しい。考察問題がほとんど。大問ごとの難易度の傾斜かなり激しいが、医学部受験生は難問にも食らいつく必要あり
  • 対策:典型問題の問題集はそこそこに、『標準問題精講』等の最難関の考察系問題集に取り組む。「難問頻出」のパターンを理解する。遺伝も難問含めてよく出題。対策必須。

<出題分野の傾向>
分野の偏りがかなりあり、分子生物と神経が最頻出で、続いて代謝・体内環境・遺伝などの分野からまんべんなく出題されています。たまに植物生理の問題が出題されていますが、生態学は殆ど出題がありません。

<試験問題の概要>
理科2科目で150分なので、生物には75分程度は割けます。大問4問構成で、全体的な難易度は標準~難しいレベル、考察問題が殆どです。他学部の先生が作ったと思われる設問は概ね標準レベルですが、医学部の先生が作ったと思われる設問は容赦のない難易度です。大問ごとの難易度の傾斜はかなり激しいですが、医学部の受験生は難しい設問にもある程度は食らいついていかないと合格点にまで到達しません。

<大阪大生物の対策>
典型問題が収録された問題集はそこそこで切り上げ、『標準問題精講』や『思考力問題精講』などの最難関の考察系問題集も、頻出分野に絞ってでも良いのできちんと取り組みましょう。いわゆる最難関の考察系問題集には、難易度は高いけれども似たようなテーマが繰り返し旧帝大の間で使いまわされている、いわゆる「難問頻出」のパターンも結構あったりするので、リード文やデータの読み取りが出来ただけで満足せず、背景となるテーマまできちんと理解して、同様の問題が出題されたらすぐに解答できるように丁寧に取り組んでください。また遺伝も難問も含めてよく出題されるため、対策が必須です。

学士編入試験の概要

  • 大学を卒業した方を対象に10名/年の入学枠
  • 異なるバックグラウンドの人材が入学し、基礎医学、先進医療研究の充実を目指す
  • 合格すると1年次を飛ばして2年次編入となる
  • 試験は一次試験と二次試験に分かれる
    一次:大学一般教養レベルの生命科学、物理、化学に加え、生命科学分野の英語
    ※英語はR4から民間英語試験で代用
    二次:面接+小論文
  • 一般入試よりも難易度は簡単。該当する方で希望する方は検討をおススメ

<阪大は古くから学士編入制度を導入している>
大阪の地域医療については大阪市大の動画で説明したので、今回は阪大で古くから実施されている学士編入制度について解説します。阪大の学士編入制度では毎年10人の定員を設定しています。物理学・化学・数学・基礎の生物学などの異なるバックグラウンドを持つ人材を入学させることで、基礎医学や先進医療研究の更なる充実を目指す制度です。

<編入生は2年生からスタート、1年次の一般教養科目が範囲>
合格すると、1年次の一般教養を飛ばして2年次編入となります。試験は一次試験と二次試験に分かれ、一次試験の科目は大学一般教養レベルの生命科学・物理・化学に加え、生命科学分野の英語の試験があります。英語は令和4年度の試験からは民間英語試験の成績で代用されるようです。その後一次合格者には二次試験が課され、面接と小論文を実施して最終的な合格者が決定されます。

<一般で阪医に入るよりカンタンかも…>
ぶっちゃけた話、阪大医学部など超難関の医学部は一般入試で入るより学士編入入試経由で入るほうがカンタンです。一般入試における医学部の受験偏差値は高止まりしており、東大理1でA判定が出ている受験生でも、阪大医学部ではC判定くらいに留まることは平気であるわけです。京大の工学部や農学部などに至ってはA判定が出ていても、阪大医学部ではE判定でもおかしくありません。また、学士編入生はどの大学でも要求されている生命科学や英語では非常に高い成績を残している一方で、一部の大学でしか要求されない物理や化学はあまりきちんと勉強していません。学士編入試験では物理や化学も一般教養レベルでしか問われませんから、そのようなバックグラウンドを持つ大学生や社会人の方は生命科学の学習に専念すればたいへん有利に試験を進めることが出来ます。該当する方は検討してみてください。

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