滋賀医科大学 二次試験の問題の分析

滋賀医科大学(医学科)入試分析!ーあっしー先生国公立医学部を語る③

入試の基本情報と面接

 二次比率は50%です。今まで面接はグループディスカッションのみでしたが、個人面接も課されるようになりました。公民は「倫理・政経」のみで、1科目受験は出来ません。共通テストでは国語・社会にかなりの傾斜があり、二次試験でも、英語や理科でも稼ぎやすい傾向が強く、文系からの理転組もそれなりに存在します。ただ近年は数学も差が付きやすい試験となり、英語の試験の動向も不透明なため、いわゆる文系人間もそれなりに数学の対策をしていく必要があるといえます。

  国語 社会 数学 理科 英語 面接 合計
共通 200 100 100 100 100 600
二次 200 200 200 600

数学の分析<120分・4問> 

満点200/H170/M130/L110

(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン) 

 全体的に標準的な難易度ですが、やや難の問題が所々に混じっています。難易度のばらつきは大きいものの、ここ数年は、東北大、九州大といった下位旧帝大くらいの難易度になっています。良い意味で、差がつく試験となりました。小問の誘導も丁寧なため、上手に乗っていきましょう。数学な得意な人は、8割近い得点も狙っていけます。苦手な人でも、6割前後は標準的な問題を正答すれば得点できるはずです。計算がやや煩雑な問題がありますが、理不尽なまでの計算量にはなっておらず、やや難の問題で引っかからず標準的な問題を見抜いて回答することが出来れば、極端に時間不足になることはないでしょう。ただし、計算のケアレスミスには細心の注意を払ってください。

 勉強の指針としては、まずは標準的な問題の解答力をつけるため、1対1対応の演習など標準的なレベルの問題を繰り返し解いてトレーニングしましょう。滋賀医大の過去問は難易度のばらつきが激しいので、直近の数年分を解いたら、九州大・東北大などの下位旧帝大レベルの問題で実践演習を積みましょう。数学でアドバンテージをとりにかかるなら、更にワンランク上の問題集や、京都府立医大、奈良県立医大の難しい単科医大の問題、あるいは東大・京大・阪大など上位旧帝大などの過去問なども良いトレーニングになるはずです。

英語・理科で稼ぐ前提で、数学はLラインで妥協出来るなら、理系数学入試の核心(標準編)がおすすめです。

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Mラインを目指すなら、やさしい理系数学など鉄板の演習書まで仕上げましょう。時間がたっぷりあるなら、標準問題精講など問題数が多めの問題集を用いても構いません。

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いわゆる「単科医大らしい問題」を正答し、Hライン突破を目指すなら、京都府立医大や奈良県立医大(後期)などの過去問も有用です。

京都府立医科大学(医学部〈医学科〉) (2021年版大学入試シリーズ) 奈良県立医科大学(医学部〈医学科〉) (2021年版大学入試シリーズ)

英語の分析<120分・3問> 

満点200/H150/M120/L100

(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン) 

 2問は長文、1問はかつては自由英作文でしたが、ここ数年はかつての京大風和文英訳となっています。設問数が多く殆ど記述の問題であり、テンポよく解答していかねば時間が足りません。しかしながら来年度、すなわち令和3年度の試験については大きく傾向が変わる可能性があります。作題を担当していた英語の教員の先生が退職されたためです。英作文のトレーニングを自由英作・和文英訳とバランスよく行うほかは、あまり入試の傾向対策では稼げないかもしれません。

単科医大系列で、最も標準的な問題が出題されているのは旭川医大と思われます。次点で札幌医大ですが、近年の札幌医大の問題は作文の問題の傾向が不安定です。福島県立医大・京都府立医大は単科医大の中でもかなり分量が多い類になります。もちろん滋賀医大の過去問も、ある程度の練習にはなるでしょう。

旭川医科大学(医学部〈医学科〉) (2020年版大学入試シリーズ)
札幌医科大学(医学部) (2020年版大学入試シリーズ)
福島県立医科大学(医学部) (2020年版大学入試シリーズ)
京都府立医科大学(医学部〈医学科〉) (2021年版大学入試シリーズ)

化学の分析<75分・3問> 

満点100/H80/M60/L50

(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン) 

 問題のレベルそのものは標準的ですが、とにかく計算量がえぐいことになっています。標準的な問題集がきちんと身についていれば、解答の指針を立てるのにはそう苦労しませんが、計算でとにかく時間を食ってしまいます。解き方は分かるからといって、安直に手を出してはいけません。これは計算が泥沼化するな、と判断したら、潔く飛ばして次の問題にいく勇気も必要です。他の理科、物理や生物も含めて、時間配分の戦略についてはしっかり検討する必要があります。普段の勉強でも、解法が分かっただけで満足せずに、愚直に計算を行い数値があうまで自力で答えを出す習慣をつけましょう。

 有機化学の問題について補足しておきます。単科医大の有機化学の問題は、構造決定の問題の比率が低くなる傾向があります。有機化合物の構造決定は、理学部・薬学部・工学部などの有機化学の研究室では手法は異なるものの日常のルーチンワークですが、医学部における有機化学を学ぶ目的は、大学進学後に学ぶ生化学や薬理学の学習の基礎としての意味合いが強いため、色々な有機化合物の「性質」についての出題が多くなりがちです。したがって、例えば京大化学の有機の問題などでいつも満点だからと高をくくっていると、単科医大の問題では足元をすくわれることになりかねません。また、2015年度以前の問題は、出題している教員の先生が違い、傾向も大きく違うので、過去問対策は不要です。

計算が重いだけで、王道的な問題ですので、重要問題集などを丁寧にこなすことが鉄板のアプローチです。

2020実戦 化学重要問題集 化学基礎・化学

物理の対策<75分・3問> 

満点100/H80/M60/L50

(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン) 

 難易度は標準からやや難レベルの問題で、各問ごとに空欄の穴埋めと記述式問題から構成されています。穴埋めの方はそこまで難しくなく、記述問題がやや難しい傾向です。したがって、穴埋めは高得点を狙いたいところですが、記述は手がつけられそうな問題とそうでない問題を取捨選択して解いていく必要があります。物理に関してはそこまで時間がきつい訳ではないので、早めに切り上げ化学にどれだけ時間が割けるかが勝負になりそうです。

昔はかなりの難問でしたが、現在ではかなり取り組みやすくなっています。重要問題集や名門の森が鉄板の問題集と言えます。

2020実戦 物理重要問題集 物理基礎・物理
名問の森物理 力学・熱・波動1 (河合塾シリーズ)
名問の森物理 波動2・電磁気・原子 (河合塾シリーズ)

生物の対策<75分・3問> 

満点100/H75/M60/L50

(H:極めてその科目が得意な人のライン M:合格者平均予想ライン L:合格者最低点予想ライン) 

 それなりに難しい問題なので、勉強量次第でほかの受験生に差をつけることもできます。物理や化学でもそうですが、理科の完成度でかなりの差がつくことが、面接の寛容度以上に浪人生有利になりがちな理由です。出題される分野にはかなりはっきり傾向が出ており、進化と系統が必ず出題されています。植物生理や生態は小問単位ではちょっと出ることもありますが、大問としてガッツリ出題されたことはありません。したがって、進化と系統にウェイトを置きつつも、いわゆる医学部っぽい分野(細胞生物、分子生物、体内環境、神経、代謝、発生)の問題演習を積んでいきましょう。逆に、生態や植物生理については共通テストの対策くらいで十分ということになります。考察問題も多いが、リード文がそれほど長くなく、すなわちそう多くの情報が与えられていないため、分かるときはすぐに分かるし、分からない時はいくら悩んでも分かりません。そこで、生物は60分くらいで切り上げて、化学の計算問題を1問でも多く正答するのに注力するほうが賢明だろうと思います。このような傾向から、標準的な受験対策問題集に加え、「標準問題精講」「思考力問題精講」などといった考察系問題集をプラスアルファするのが良いでしょう。ただし、植物生理や生態はカットしても構いません。遺伝は小問としては頻出であるが、大問まるまる遺伝というのは殆どないので、遺伝対策は控えめでいいでしょう。

コンパクトにおさめるなら、基礎問題精講になります。演習問題はやや難で解説もあっさりすぎるため、独学の場合は例題のみをやりこむ形になります。(ちょいちょい演習問題にもやっておきたいテーマはあるのですが、、)

《新入試対応》生物(生物基礎・生物)基礎問題精講 四訂版

網羅性を求めるなら、大森徹の最強問題集になります。

大森徹の最強問題集159問 生物[生物基礎・生物] (シグマベスト)

新しめのテーマを中心に演習するなら、重要問題集もお勧めです。滋賀医大の出題は新作問題が多く、有効と思われます。しかしながら、解説が淡白なので辛ければ他の問題集に移ってもらっても構いません。ただし進化と系統の問題だけは色々なバリエーションの問題を解いておきたいところ。

2020実戦 生物重要問題集 生物基礎・生物

鉄板は標準問題精講かと思われます。一部知識問題も含まれますが、考察問題も多く含まれ、バランスの良い問題集です。しかし初めて取り組む際には、皆さん苦戦しているので、覚悟を持って取り組んでください。

2020実戦 生物重要問題集 生物基礎・生物

地域医療の概況

 滋賀県は基本的には大津市のある大津医療圏、草津市のある湖南医療圏に医療資源が集中しています。滋賀医大病院は大津医療圏に属し、他にも基幹病院がいくつか存在するため、大津医療圏の人口当たりの医師数はやや過剰気味といっていいレベルになっています。しかしながらその周辺地域である、湖西医療圏、甲賀(こうか)医療圏(忍者の里で有名)、東近江医療圏(近江八幡)、湖東医療圏(彦根)では医療資源が不足しているため、大津や湖南医療圏がそれを補っているのが現状です。滋賀県北部では湖北医療圏(長浜)が中核的な役割を果たしています。ただしそう多くの人員で回しているわけではなく、とはいえ大津や湖南地域へ搬送するには遠すぎるという、厳しい事情を抱えている地域です。

総評

 滋賀医科大学は、かつては文系人間御用達の医学部でしたが、その傾向は数学の易化と共に薄れています。しかしながら理科でがっつり差がつきやすい傾向は変わらず、理科の完成度の高い浪人生が有利に戦えるのは当面の間続くのではないかと予想しています。

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